2017年8月3日木曜日

テラーウラム放射圧力法

放射圧力法

放射圧力法は、密閉された容器内で大量のX線光子が発生することで機能し、セカンダリーの核融合燃料を圧縮する。全体の大きさとプライマリーの特色として、2つの熱核爆弾が良く知られている。この一つはアイビー作戦の”マイク実験”であり、もう一つはB61型核爆弾のバリエーションである(巡航ミサイル用の)最新のW80型核弾頭である。マイク実験での放射圧力は7,300万バール(7.3テラパスカル)であったのに対し、W80では14億バール(140テラパスカル)にもなっている。 [9]

発泡剤プラズマ圧力法

発泡剤プラズマ圧力法は、チャック・ハンセンにより開発段階で提案されたもので、これは熱核兵器の容器内に充填する発泡剤に関する調査資料(現在は機密解除されている)を基にしている。
発泡剤を使用した熱核兵器の起爆構造は以下の様になる。
  1. プライマリー内のコアの周囲を囲んでいる高性能爆薬は、爆発すると核分裂燃料を臨界量まで圧縮し、核分裂連鎖反応を開始させる。
  2. プライマリーの核分裂によりX線が放射されるが、これは爆弾の容器部分により内側に反射され、ポリスチレンの発泡剤に放射される(X線の反射の意味については、下図を参照のこと)。
  3. X線を浴びた発泡剤は相転移を起こして高温のプラズマになり、これはセカンダリーに向かって行き”タンパー”を強力に圧縮し、”スパーク・プラグ”内で核分裂反応を始めさせる。
  4. プライマリー起源のプラズマ(外側)とスパーク・プラグ(内側)の両方から圧縮されることで、”重水素化リチウム”燃料は高温・高圧の熱核反応を起こす状態にまで加熱・圧縮される。また中性子の放射も受けることで、リチウム6の原子は2つの三重水素原子に分裂する。そして三重水素と重水素が核融合反応を始め、さらなる中性子と膨大な量のエネルギーを放射する。
  5. 核融合反応を始めた燃料は多量の高速中性子を発生し、これはウラン238で出来たタンパー、及び爆弾の容器に放射され、ウラン238は核分裂反応を始める(デザインによっては、全体の爆発エネルギーの約半分が、この核分裂反応によって発生する)。
これは完全な”核分裂-核融合-核分裂”反応となる。核分裂とは異なり、核融合は比較的”クリーン”な反応で、エネルギーは発生するが有害な放射性物質や多量の放射性降下物は発生させない。しかし(特に最後の)核分裂反応は、莫大な量の放射性降下物を発生させる。もしウラン製タンパーの材料をに変更し、最後の核分裂反応を起こさない様にすれば、核爆発の核出力は約半分になるが、放射性降下物は比較的少ない量に抑えることが出来る。
発泡剤プラズマ機構での起爆手順
A.起爆前の核弾頭:プライマリー(核分裂爆弾)が上側、セカンダリー(核融合燃料)が下側、両方ともポリスチレンの発泡剤により固定されている。
B.プライマリーで高性能爆薬が爆発し、プルトニウムの核が臨界量まで圧縮され核分裂反応が始まる。
C.プライマリーの核分裂はX線を放射し、X線は核弾頭容器の内側へ散乱し、ポリスチレンの発泡剤に放射される。
D.ポリスチレンの発泡剤はプラズマに相転移してセカンダリーを圧縮し、プルトニウム製のスパーク・プラグが核分裂を始める。
E.圧縮と加熱により、重水素化リチウム6の燃料は三重水素を生成し、核融合反応が始まる。中性子の放射はタンパーのウラン238の核分裂反応を起こさせ、火球の生成が始まる。
現在の発泡剤プラズマ圧縮法に対する技術的評価は、同様の高エネルギー物理学分野からの機密解除された分析結果に焦点が移っている。この分析によると、この様なプラズマによる圧縮法では放射性容器内での中性子の発生効率が低く、また発泡剤がプライマリーからのγ線とX線の吸収効果も低いことが知られている。プライマリーで発生したエネルギーの多くは、核弾頭容器の壁やタンパーの放射性物質に吸収されてしまう。この吸収されたエネルギーは、後述する”蒸発(アブレーション)”作用を起こさせると分析されている。
しかしながら、トリウムやウランの様な大きい原子量塩類を染み込ませたエアロゲル型材料は、プライマリーからのX線の高い吸収効果を発揮し、発泡剤のプラズマ圧力がセカンダリーを放射圧縮させることを可能にする。

タンパー・プッシャー蒸発圧力法

第3に提案された方法は、プライマリーによる圧縮機構がセカンダリーの外部層であるタンパー・プッシャー部や、重金属製の核融合燃料の容器に対し、強力なX線を放射しこれらを超高温にしてアブレーションさせる。これらの部分はセカンダリーの外側向けてに爆発的に膨張し、その反動でタンパーは内側へ凄まじい速度で押し込まれ、核融合燃料とスパーク・プラグ部分を強力に圧縮する。
蒸発機構による起爆の手順.
1.起爆前の核弾頭。上側にある階層状の球体がプライマリーの核分裂部である。下側にある円筒状の物体が、セカンダリーの核融合燃料である。
2.プライマリーで高性能爆薬が起爆され、核分裂性のコアが爆縮される。
3.プライマリーの核分裂反応が始まる。核の温度は数百万℃に上昇し、γ線と強力なX線が放射され、ホールラウムの内部、及びセカンダリーの容器とタンパーを加熱する。
4.プライマリーの核分裂反応は終了し、爆発が始まる。セカンダリーのプッシャー表面は高温になり、結果的に蒸発して膨張し、その反動でタンパー、核融合燃料、及び核分裂性のスパーク・プラグを内側に圧縮する。この結果、スパーク・プラグは核分裂反応を開始する。なおイラストには描かれていないが、セカンダリーの放射性容器も同時に蒸発し、外側に向けて膨張する(イラストを分かり易くするために除外している)。
5.セカンダリーの燃料が核融合反応を開始して、火球の生成が始まる。
重金属の蒸発による効果の概算は、比較的容易である。プライマリーが供給するエネルギーは、セカンダリーの容器全面に対して均等であり、各部分が熱平衡になるため、熱エネルギーによる効果を解析することが出来る。プライマリーが発生したエネルギーの殆どは、1つの光学的深度を持つX線によってタンパー・プッシャー外壁面に伝えられるので、その部分の温度を計算することが可能になる。外壁面が蒸発して膨張することによって発生する、タンパーの内側への移動速度は、基本的なニュートン力学により計算することが出来る。
この計算方法をアイビー作戦のマイク実験に適用すると、タンパーが蒸発して膨張力する速度は秒速290km(およそマッハ850)になり、内側への圧縮速度は秒速400km(およそマッハ1,180)になる(タンパー・プッシャーの75%が蒸発すると仮定した場合。これは最も効率が良くなる条件である)。これがW80核弾頭の場合には、ガスの膨張速度はおよそ秒速410km(マッハ1,210)、内側への圧縮速度は秒速570km(マッハ1,680)になる。タンパーの蒸発による圧力を計算すると、マイク実験では53億バール(530テラパスカル)、W80では640億バール(6.4ペタパスカル)になる[9]


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