2011年6月12日日曜日

美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について



2011年6月3日



第16回 原子力保全改革検証委員会

 当社は、美浜発電所3号機事故を踏まえた再発防止策について、社外の有識者を主体とした独立的な立場からその有効性を検証し、継続的な改善に支えられた安全の確保をより確実なものとすることを目的として、平成17年4月に「原子力保全改革検証委員会」を設置しました。
 第15回の委員会では、運転中タービン建屋等への立入制限対策を主とし た美浜発電所3号機事故再発防止対策、また平成22年度安全文化中間評価結果および重点施策の実施状況を中心に検証していただきました。運転中タービン建屋等への立入制限対策については、「本日の委員会で出された立入り制限の必要性の周知についての意見等や中間評価以降の試運用に係る現場の改善意見を活かして社内標準化を行い、本格運用につなげていただきたい。」、また、平成22年度の安全文化中間評価結果および重点施策の実施状況については、「平成22年8月に発生した大飯発電所タンク内墜落災害を踏まえ、他発電所との比較分析を行うなどの対応が取られているが、本日出された意見等をその施策の充実につなげるとともに、確実な水平展開をすることが望まれる」旨の評価をいただきました。
 今回の第16回検証委員会では、本格運用した運転中タービン建屋等への 立入制限対策を主とした美浜発電所3号機事故再発防止対策、また平成22年度の安全文化評価結果および重点施策の実施状況について、検証が行われました。その結果をお知らせいたします。 


1.日 時平成23年5月20日(金) 13時30分~17時15分
2.場 所関西電力株式会社 本店
3.出席者
委員長 【社 外】佐藤信昭(弁護士)
副委員長 【社 外】邦夫(京都大学名誉教授)
委員 【社 外】小松原明哲(早稲田大学教授)
 【社 外】 田中健次(電気通信大学教授)
 【社 外】槇村久子(京都女子大学教授)
 【社 外】 増田仁視(公認会計士)
 取締役副社長齊藤紀彦
 常務取締役  井狩雅文
(敬称略 社外委員名は五十音順)

4.冒頭挨拶等
4-1.佐藤委員長挨拶骨子
美浜発電所3号機事故再発防止対策については、前回、運転中タービン建屋等への立入制限対策を主に検証したが、本日はその後の状況、本対策以外の再発防止対策の定着状況も確認したい。
安全文化の醸成状況については、平成22年度安全文化評価結果と重点施策の実施状況を確認していきたい。
前回の検証委員会以降、美浜発電所1号機の後継機の可能性検討に向けた自主的調査、高浜発電所3号機でのプルサーマルによる本格運転が開始されるなど、安全を前提とした諸活動の進展も見受けられた。
一方、本年3月11日に東日本大震災が発生し、福島第一原子力発電所事故が起こり、2か月余り経った今日でも、事態の収拾がなされていないという大変憂慮すべき状況が続いている。
この事故を契機に、原子力を取り巻く環境、特に社会の信頼等々に大きな変化が見受けられ、安全文化に係る組織や人の意識、行動等にも影響があるのではないかと思う。
関西電力には、現時点での福島第一原子力発電所事故を踏まえた対応状況について、報告をしてもらうこととしている。
各委員においては、それぞれの専門的な立場から忌憚のないご意見をいただき、活発な議論をしたい。
5.議事概要
5-1.第15回検証委員会で頂いた意見に対する対応状況について
 第15回検証委員会で委員の方から頂いた意見に対する対応状況について、原子力保全改革委員会事務局から報告し、審議・了承。
5-2.美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について
 美浜発電所3号機事故再発防止対策の実施状況および監査結果について、原子力保全改革委員会事務局、原子力事業本部および経営監査室から報告し、審議。
<審議結果>
美浜発電所3号機事故再発防止対策の中でルール化を検討してきた「運転中タービン建屋等への立入り制限と運転中保全活動に関する施策」については、検証委員会で出された意見や約1年間の試運用の中で出された現場の改善意見を活かして社内標準化を行い、本年3月から本格運用を開始した。
本施策が本格運用されたことにより、再発防止対策の29項目全ての歯止め方策が完了し、日常業務として取り組まれることになるが、今後とも再発防止対策が風化することなく、自律的に実施されているかを本委員会で継続的に確認していく。
<意見等>
美浜発電所3号機事故再発防止対策を日常業務に確実に定着させるとの観点から、監査では、事象に対する改善要望だけではなく、更にその背景要因に対しても改善要望していくことが大切だと思う。(田中委員)。
運転中タービン建屋等における立入制限対策について、原子力事業本部が共通ルールを定め、各発電所が設備の特徴等を勘案しながら、ルール化をしているが、今後とも現場の声が対策の改善に繋がるような仕組みの中で、進めていってほしい(田中委員)。
5-3.安全文化醸成活動状況および監査結果について
 安全文化評価結果および重点施策の実施結果について、原子力保全改革委員会事務局、原子力事業本部から、また、同監査結果について経営監査室から報告し、審議。
<審議結果>
平成22年度原子力安全文化評価においては、原子力事業本部は、評価対象業務を拡大するなどの充実を行うとともに、各所で活発な議論を実施しており、評価の仕組みが有効に機能し、根付いてきたものと考える。
また、重点的に取り組まれてきた「当社・協力会社間における意思疎通の強化策、技術力の維持」等については、各協力会社とのコミュニケーションが繰り返され、各施策の実施・改善が図られているが、引き続き効果的な活動に努めてもらいたい。
今後、トラブルや労働災害を更に低減させていくために、安全文化評価に基づく息の長い改善活動が期待される。
<意見等>
[安全文化全体]
各所の評価結果と原子力部門全体の評価結果に違いがあることはおかしなことではない。全体視点からの議論が重要であり、単純な各個評価の合計といった評価であってはいけない。ただし、全体視点からの議論のポイントを、予め整理しておくことが大切である。(小松原委員)。
安全文化醸成活動について、3年ほど検証してきたが、徐々に成長してきていると感じている。協力会社も含めたこの活動を無形の財産として関電の中に残し、また関電以外にも大きく役立つようにしてほしい。世界の基準となるぐらいの気持ちで前向きに、また外向きにも取り組んでもらいたい(増田委員)。
INSS(JANTI)アンケート結果の評価については、平均値が上昇しているかどうかだけではなく、評価の分散が小さくなっているかどうかについても注目するとよい。(小松原委員)。
モチベーションのアンケート結果が緩やかに向上している状態は良い。人が入れ替わっているにもかかわらず良くなっているのは、組織風土がより良好化していることを意味しているといえ、心強く感じる(小松原委員)。
視点10のルール遵守には、法令の遵守と社内ルールの遵守がある。社内ルールの遵守の評価結果が記載されていないので、両方の評価結果を入れておくと良い(田中委員)。
高圧ガス保安法関係の手続き漏れに関して、この法令の遵守については、今後類似事象が発生しないように、どのような場合に手続きが必要なのか注意喚起を行う仕組みを考えてほしい(田中委員)。
主要法令は注目していても、周辺的な法令等の細部までフォローすることの難しさはあるだろう。今回はフォロー漏れであり、ルール遵守意識の欠如ではなかったと思われるが、法令違反には違いなく、漏れが生じないよう今後さらに改善していくことは重要であり、また、その改善活動は、学習する組織という観点からしても望ましい(小松原委員)。
[協力会社関係]
労働安全の対策については、実際に作業をしている協力会社の自主的な取組みを促すことにより、より一層の効果を期待したい(東副委員長)。
現場作業員には、職場の常識に流されず、自分の行う作業自体に対するリスク意識を持たせることが重要である(小松原委員)。
労災分析による対策を実施した後で起こっている5件の労災に対して、もう少し背景要因を分析し、実施済みの対策にフィードバックすべきもの、別の観点での対策が必要であるものに切り分けて、改善を考えることも必要であると思う(田中委員)。
協力会社の中には、労働災害が多い会社、少ない会社があると思うので、良好な会社の取組みも含めて、労働災害の原因分析を行い、今後に活かしていってほしい(槇村委員)。
安全文化という意味では、アンケートを取らなくとも、問題点を把握し、迅速に対策をとっていくというサイクルが望ましいので、実際に現場で作業を実施しているときに協力会社とより一層のコミュニケーションをとり、速やかに対策をとっていくことが大事だと思う(田中委員)。
協力会社のアンケート結果において、定期検査工程に関する肯定的な評価が下がったことを受けて、作業エリアの調整等、具体的な問題まで深堀されて、対策を立案し、実施されているのは良いことだと思う(槇村委員)。
協力会社作業員は入替りが多いことなどを考慮し、その技術力維持については、今後も継続的に見ていくことが大事であると思う(増田委員)。
5-4.福島第一原子力発電所事故を踏まえた当社の対応状況の報告について
 原子力事業本部から、「福島第一原子力発電所事故を踏まえた当社の対応状況の報告」について報告。
<意見等>
福島第一原子力発電所事故を踏まえた安全性向上対策ならびに地元などへの情報発信状況に関する説明により、現状の取組みについては理解できた。引き続き、事故の詳細が判明していく状況に応じて、必要な対策を適宜実施し、原子力発電所の安全・安定運転に万全を期してもらいたい。今後も、福島第一原子力発電所事故を踏まえた関西電力の対応については注視していく(佐藤委員長)。
5-5.平成23年度の検証委員会の進め方について
 平成23年度の検証委員会の進め方について経営監査室から提案し、審議。
<審議結果>
平成23年度上期(第17回検証委員会)の検証テーマと検証の視点については、以下のとおりとすることで了承。
検証テーマ視  点
安全文化の醸成状況
安全文化評価中間状況確認
若手社員育成策の充実・強化
中間状況確認が適切になされているか。
若手社員育成策が効果的に取り組まれているか。
福島第一原子力発電所事故を踏まえた関西電力の対応については、継続的に注視していく。

<配付資料>
議事次第 [PDF 10.6KB]
第15回原子力保全改革検証委員会で頂いた意見への対応状況について [PDF 17.6KB]
美浜発電所3号機事故再発防止対策実施状況について [PDF 863KB]
安全文化評価の結果について [PDF 500KB]
重点施策の実施結果について [PDF 313KB]
福島第一原子力発電所事故にかかる当社原子力発電所の対応状況について [PDF 325KB]


増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から)佐藤委員長、東副委員長(左から)
増田委員、槇村委員、田中委員、小松原委員(左から)
事故原因は、ずさんな管理にあった!JCO東海村原子力事故
佐藤委員長、東副委員長(左から)

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