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2022年4月19日火曜日

ウクライナ侵攻2か月 戦争いつ終わる?今後の世界は?

 

ウクライナ侵攻2か月 戦争いつ終わる?今後の世界は?

ロシアによるウクライナの軍事侵攻が始まってからおよそ2か月。この戦争はどのように終わりを迎えるのか。そして、世界秩序はどうなるのか。

国際政治学が専門で、安全保障の歴史に詳しい京都大学大学院の中西寛教授に今後考えられるシナリオと、いま世界が抱えるリスクを聞きました。世界史の中で考えると「国際社会の分裂は、取り返しのつかないところを過ぎた」と警鐘を鳴らしています。

「出口見えず “意志と意志の争い”に」

Q. ロシア軍によるミサイル攻撃や凄惨(せいさん)な殺害が続いています。戦争の現在地をどうみていますか?

「戦争の様相はますます混迷しています。長期化していく要素がどんどん強まり、出口が見えない状況になってきていると思います」
「ウクライナの非人道的な惨禍、ゼレンスキー大統領に率いられたウクライナ国民の勇気を見れば、一刻も早くこの戦争が終わってほしいという気持ちを持つのは人間として当然だと思います。西側が結束してロシアに対して厳しい経済制裁を行っていて、戦争が終結するということを期待する向きがあるのも確かだと思います」
「しかし、この戦争はプーチン大統領からするとすでに体制の生存をかけた戦争になってしまっていると思います。経済的に苦しくなっても、あるいはウクライナで一定の反撃を受けてももともとの軍事目標を達成せずに敗退という印象で終えるということは直ちに政権の動揺につながる事態だと思います。5月9日の“対独戦勝記念日”に軍事的勝利の成果を誇るということが今の目標ではないか、と言われていて、確かにその可能性は高いと思います。しかし、そこでロシアの側から停戦を持ちかけるということはまずないでしょうし、仮にあったとしてもウクライナが決して受けることがないということも、ロシアは理解していると思います。もはやこの戦争というのはロシアとウクライナの“意志と意志の争い”になってきていて、そう簡単に終わるということは今のところ考えられないと思います」

これから何が‥ 鍵となる“3つのシナリオ”

Q. 今回の戦争、今後のシナリオはどう考えていますか?

シナリオ(1) 長期化・休戦

「実際に何が起こるかは当然予測できない要因がたくさんありますので、細かいシナリオはいくらでもできると思いますけれども、大きく分けて3つに考えられると思っています。1つはロシアとウクライナの戦闘が長期化していくというパターンです。これは基本的にはどちらかの戦争を続ける能力がつきるまで続き、そのときの戦闘境界線が1つの合意になって戦闘が終了するということです」
「1950年から始まった朝鮮戦争では、北緯38度線が休戦ラインになって、いまだに続いているという状況ですが、そもそも38度線は、第2次世界大戦が終わったあと、アメリカとソ連がそれぞれ朝鮮半島を占領する境界線として設定されていたわけです。しかし今回の場合は、ことしの戦争のほかにクリミア半島が併合されていますし、東部地域でもロシアの影響下にある地域で紛争が続いていたわけです。地理的にも明確な境界線がない地域ですので、はっきり休戦ラインを引いて落ち着きましょうという合意が非常に難しいところだと思います。そういう意味ではある程度停戦に近づいていっても戦闘状態はその後も続く、火がくすぶり続けるように紛争が続くという形で両国の戦闘が徐々に収束していくことが、第1のパターンだと思います」

シナリオ(2) 戦争拡大

「第2のパターンは何らかのきっかけで戦争が拡大、エスカレートしていくというもので、第3次世界大戦に至る危険性をはらんでいると思います。考えられるのは、ロシアがウクライナから反撃にあった時、大量破壊兵器・化学兵器・生物兵器あるいは場合によっては戦術核兵器も使用する。それに対してNATOが直接的な軍事介入をし、それをきっかけにNATO諸国とロシアがウクライナ以外の地域でも交戦状態に入っていくパターンです」
「また、ウクライナの情勢が西側にとって不利な状況になり、NATOがより高いレベルの軍事支援をしていき、ロシアが反撃する形でポーランドなどのウクライナに近い地域でのNATO軍に対し、警告的にでも攻撃を仕掛け、NATOとロシアが本格的な戦闘に入っていく、という可能性もあると思います。歴史的に見ても、1941年にはドイツがヨーロッパとの戦闘でイギリスを屈服させることができない状況の中で、ソ連に対する戦争、いわゆる“独ソ戦”を始めました。特に戦争に政権の生き残りがかかっていると考えている国家は、このまま敗北を受け入れるよりは、思い切って戦闘を拡大することで何らかのチャンスが生まれるのではないかというふうに考えることは歴史的にもあるわけです」

シナリオ(3) プーチン政権崩壊

「3つ目はロシアで政治体制が動揺していって、プーチン政権が崩れていくというシナリオです。今のところ、この可能性は西側が期待しているほど確率は高くないと思います。プーチン体制は非常に強固ですので、反旗を翻すような国内の政治勢力はありませんし、政権内でもシロビキと言われるプーチンの政権基盤になっているグループ、あるいはロシア軍もいずれもプーチンの支配下にあって、そこからクーデターや反乱といったようなものが簡単に起きるような状況ではないと考えられます。ただ、注意しないといけないのは、プーチン体制が仮に崩れてもその後、簡単に平和が来る可能性はそれほど高くないということです」
「1991年、ソ連が崩壊したときには、すでにソ連の中にあった各共和国に共産党政権があって、そこがくら替えをして、民族主義的な政治勢力になって受け皿になりました。ソ連の大統領だったゴルバチョフからロシア共和国の大統領だったエリツィンに政権が移譲されたわけですが、現在のロシアについてはそういう政権の受け皿が存在していません。ですから仮に宮廷クーデターのようなものでプーチンが追い落とされる、あるいは民衆の反乱があってプーチン政権が倒れるということになっても、その後平和的に政権が移行される可能性はほとんどないだろうと思います」
Q. この3つのシナリオで、現時点ではどれがいちばん可能性が高いと思いますか?

「現時点で言えば(1)が高いと思いますけれども、(2)で、いきなり第3次世界大戦にならないにしても、戦線が拡大される可能性もそれなりにあると思います。(3)の可能性はこの戦闘が一定期間たてばあると思いますけれども、今のところ確率は低いと思います」

「今は“危機の30年” 国際社会の分裂」

Q. 歴史的な観点でいうと、現在の状況はどの時代に似ているのでしょうか。
「“歴史は繰り返すことはないが、韻(いん)を踏む”と言われます。過去と同じことが起きることはありえないんですが、似たようなことはいろいろな時代に見ることができると思います。あまりいい類推ではないのですが、近いと思うのは、やはり第1次世界大戦と第2次世界大戦の戦間期です。イギリスの歴史家で政治学者のE.H.カーはこの戦間期を“危機の20年”と呼び、本を書きました。今回の事態が起こり、私が真っ先に思い出したのがこの本です。冷戦が終わってからのこの30年間というのが“危機の30年”で、まさに大きな戦争になりかねない、“とば口”に世界は立っていると考えます」
Q. この戦争によって世界の構図はどのように変化していくんでしょうか。

「冷戦が終わったときにできたある種の国際協調の枠組みが1つの終えんを迎えた。そして2010年代に進行していた国際社会の分裂というのが、今回ある意味で決定的になった、取り返しのつかないところをすぎてしまったと思います」
「アメリカと中国がいちばん大きな塊であることは確かで、それぞれ同盟国や経済的に関係が深い国があると思います。しかし、かつてアメリカとソ連を頂点とした冷戦と比べると、今のアメリカと中国が世界に対して持っている支配力や影響力というのは、どちらもはるかに低いと思います。2010年代は、2014年のロシアによるクリミア併合、中国による南シナ海への進出や香港に対する国家安全維持法の制定、またトランプ政権による西側同盟関係に対する圧力や経済協調体制への打撃、イギリスのEU離脱…。それに追い打ちをかけるような形でコロナによる経済社会的な影響があり、世界はグローバリゼーションによる一体化から、分裂の方向に向かっていたと思います」
「今回ロシアによるウクライナ侵攻で、国連の安全保障理事会が機能しなかったこと、そして経済的にも西側が従来にない厳しい経済制裁を、一定の経済規模を持つロシアに対して行ったことは、世界の分断をむしろ固定化する、あるいは長期化するという意味でも、もう前の時代には戻りそうにないことが明らかです」
Q. この30年でできなかったこと、足りなかったことは何なのでしょうか。
「長期的な視点からの国際秩序の構築ということだと思います。西側は冷戦が終わったあと短期的な思考にとらわれて、眼前の敵をどう倒すかいうことに集中してそれを倒せば世界がバラ色になると、簡単に言ってしまえば“ユートピア的”なビジョンというのを繰り返してきたのではないかと思います」
「例えばアフガニスタンでは、ソ連のそれまでの侵略が終わっていたわけですが、西側はその後ほぼ無視をして、やがてそこがタリバンが支配する地域になり、イスラム過激派のアルカイダの本拠地になって、テロの温床になっていく。そして2001年には9・11同時多発テロが起き、アメリカが主導するテロとの戦いになり、世界中が少なくとも一時期はサポートしたわけです。しかし、結果的にアフガニスタンでの軍事作戦から、アメリカはイラクへの軍事侵攻を選んで国際社会を分裂させてしまったわけです。その時、ロシアはプーチンが登場してすぐだったわけですけれども、西側はプーチンのさまざまな問題に目をつぶって、“テロとの戦いの同盟国”という形に位置づけて協力関係をむしろ深めました」
「2008年に中国で北京オリンピックがあり、その直前にはロシアがジョージアとの領土紛争、戦争をする事態になったわけですけれども、西側としては特にアメリカがテロとの戦争に苦労しているということもありましたし、中国やロシアの問題に大きく踏み込まず、むしろリーマン・ブラザーズの経営破綻以降の世界経済危機に対応する方を優先し、結果として習近平政権や現在のプーチン政権のような巨大な専制的国家の成長を見過ごしてしまったということだと思います」
「今回行っているSWIFTからのロシアの主要銀行の排除というのはそれ以前からすると非常に大きなことだと考えられてきました。基本的には禁じ手とすら言われていたことをやったわけです。ロシアの侵略が深刻で、それに対抗しないといけないという正当性があることは確かにしても、結果的に起きているのは、これまで西側が避けたいと思っていた“世界経済のブロック化”というのが現実に起き始めていて、中国やそのほかの国も、今回のような西側の態度を見れば、やはり西側主導の世界経済体制というのは信用できない、いざとなればそれは西側によって政治的武器として使われるものだと認識したと思います」

「大量の情報の中で“歴史的想像力”を」

Q. この戦争が世界そして私たちに突きつけているもの、そしてこれから私たちが向き合っていかなければならないことはなんでしょうか?
「やはり、過去に起きたことが最も貴重な参考材料になると思います。単に過去を振り返るだけでなく、必要なのは現代という時代を見据えたうえでの想像力だと思うんですね。今まさに情報社会、情報文明の時代になっていますので、すでにこの戦争についてわれわれは毎日大量の情報を得るわけです。脳はその情報を処理するだけで精いっぱいになってしまって、より大きな事態を包括的にとらえてそれがどういう結末をもたらすのかについての想像力、思考力が不足してきているんだろうと思います。長い目で見てどのような選択をすればよりよい未来が得られるのか、深い議論をする機会が世界的に減ってしまっていると思います」
Q. 最後に、日本の今後の立ち位置はどう考えますか?
「日本として重要なのは、やはりインド太平洋地域に、この戦争をきっかけに新しい分裂分断をもたらさないということだと思います。アメリカ、中国以外の国とどれぐらい密接な関係をつくれるか、ということが重要です。今回ウクライナの問題でG7の1国としてNATOの外相会合などにも参加し、ヨーロッパとの関係をステップアップしましたが、同時にインド太平洋ではオーストラリア、インドとの関係も持っている。また東南アジアとも長期的に関係を結んでいる。さらにアフリカや中東の諸国とも従来以上に踏み込んだ関係を模索してきているというのは今の日本の流れだと思いますけれども、やはりその流れをさらに強化し、アメリカ中国と関係を保ちつつ依存し過ぎない外交、安保体制を経済も含めて作っていく必要があります」
「人類の歴史は、“正しければいい結果がもたらされる”という、簡単なものではないわけです。結果に結び付けるには思考力が必要であって、日本はより地に足のついた、より冷静な議論が必要だと思います」

2022年4月12日火曜日

キーウ近郊 激しい戦闘の爪痕

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220411/K10013576871_2204111530_0411153851_01_03.jpgキーウ近郊 激しい戦闘の爪痕 ロシア軍戦車の残骸も

現地時間の10日、ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ近郊にNHKの取材班が入りました。
キーウ近郊のロシア軍が撤退した村では、多くの住宅が砲弾などで破壊されていました。また、キーウに向かう幹線道路の脇には、ロシア軍の戦車の残骸がいくつも見られるなど、激しい戦闘の爪痕が至る所で見られました。
【動画:44秒】(データ放送ではご覧になれません)

2022年2月25日金曜日

バイラクタル TB2

 

バイラクタル TB2(英語:Bayraktar TB2)は、トルコのバイカルが主にトルコ空軍(TAF)用に製造したトルコの中高度長時間滞空型(MALE英語版)無人戦闘航空機(UCAV)であり、遠隔操作または自律的な飛行操作が可能である[3]

概要[編集]

トルコのBaykar Defence社により、主にトルコ軍向けに製造されている[4] テュルクサット衛星英語版を介し、機体は地上管制所にいる操縦員などにより、武器使用も含めた監視・制御が行われている[5]。 バイラクタルとは、トルコ語で「軍旗」や「旗手」を意味する[6]。 UAVの開発は、トルコの大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンの娘婿[7]で元マサチューセッツ工科大学(MIT)学生であるセルチュク・バイラクタル英語版が大きく貢献したとされる[8][9]

トルコ軍では、TAI Anka英語版 UAVの対抗馬とならないよう、バイラクタル TB2を「戦術UAVクラス」と表現しているが、国際標準では中高度長時間滞空型UAVに分類される[10][11]

以前は、エンジン(オーストリアロータックス製)、ミサイルラック(イギリス)、光電子装置(カナダL3ハリス・ウェスカムドイツのヘンゾルドから輸入されたFLIRセンサー)など、輸入品や規制された部品や技術に大きく依存していた。エンジンは、ロータックス社の親会社であるボンバルディア社が、レクリエーション用航空機エンジンであるロータックス912英語版の軍事転用を確認したことにより、輸出停止となった[12]。 光電子装置は2020年10月、トルコの海外での交戦を受けてカナダ外務省によって制裁の対象となり、輸出制限された[13]。 そこで2020年11月6日から、トルコのアセルサン社のCATS FLIRに換装してテストが始まった[14]

バイラクタル TB2は、トルコ内外からその功績を称賛されている。イギリスの国防大臣ベン・ウォーレスやアメリカの政治学者フランシス・フクヤマは、プラットフォームとそのシステムを賞賛している[15][16]。製造コストは、1~2億円。

2021年11月26日の時点で、バイラクタル TB2は世界で40万時間の飛行を達成している[17][2]。 政治アナリストのサーレム・アル=ケトビーは、ドローンモデルの高い需要がトルコの「戦略的影響力」の拡大に貢献したと主張した[18]

開発[編集]

バイラクタル TB2の開発は、トルコ内外のクルディスタン労働者党(PKK)グループに対して使用されるという懸念から武装無人航空機のトルコへの供与をアメリカ合衆国が禁止したことによって拍車がかかった[8]

2014年8月、バイラクタル TB2は初飛行した[19]。2015年12月18日には、バイラクタル TB2のミサイルテストの動画が公開された[20][21][22][23]

2018年3月、バイカルはカタール軍向けに6機のドローンを製造する契約をカタールと締結した。2018年1月、バイカルはウクライナ軍のために6,900万ドル相当のバイラクタル TB2 12機と地上管制局3基を購入する契約をUkrspetsprojectと締結した[24][25][26]。ウクライナは2019年3月にUAVの最初のバッチを受け取った[27]

2020年10月、アルメニア当局は、アゼルバイジャンとの紛争(2020年ナゴルノ・カラバフ紛争)中に撃墜されたTB2ドローンからCMX-15Dシステムの残骸が回収されたと主張し、ドローンにカナダのL3ハリス・ウェスカムのCMX-15Dシステムが使用されていることが明らかになった。これが引き金となり、CMX-15Dのトルコへの輸出は一旦停止され、グローバル・アフェアーズ・カナダの調査では、ナゴルノ・カラバフ戦争におけるカナダ企業の技術が評価されている[28]。トルコはカナダのCMX-15Dの代替としてアセルサンのCATS(共通開口照準システム)を選択した[29][30][31]

特徴[編集]

デザイン[編集]

バイラクタル地上管制ステーション
バイラクタル地上管制ステーションの内観

バイラクタル TB2は、逆V字尾翼構造を持つブレンデッドウィングボディを採用、推力はテールブーム間の内燃機関から得ている。モノコック構造のプラットフォームは、主翼、テールブーム、Vテールなどの主要なアイテムが取り外し可能なモジュール式になっている。胴体はすべてカーボンファイバー複合材でできているが、接合部には精密なCNC加工によるアルミニウム部品が使用されている。燃料はブラダータンクに貯蔵され、燃料消費量はソレノイドバルブで自動的に調整される。可変ピッチの2ブレードプロペラにより、中高度での効率的な飛行が可能。[要出典]

地上管制ステーション(GCS)は、NATO仕様のシェルターユニットをベースに、二重化されたコマンド&コントロールシステムと、冗長性のあるエアコン、NBCフィルタを装備している。シェルター内のすべてのハードウェアは、ラック型キャビネット内に設置されている。この移動式ユニットは、パイロット、ペイロードオペレーター、ミッションコマンダーの3名で制御する。各オペレータは、リアルタイムのコマンド、コントロール、およびモニタリングに使用されるオペレータ・インターフェース・ソフトウェアとともに、前面にデュアル・スクリーンを備えている。[要出典]

構成[編集]

バイカルUAVチーム

バイラクタル TB2は、6台の空中機プラットフォーム[要出典]、2台の地上管制ステーション(GCS)、3台の地上データ端末(GDT)、2台の遠隔ビデオ端末(RVT)と地上支援装置で構成される。[要出典]各プラットフォームは、3重の冗長化されたアビオニクスシステムを搭載している。地上管制システムは、パイロット、ペイロードオペレーター、ミッションコマンダーがそれぞれ指揮、制御、監視を行うクロスリダンダントアーキテクチャを採用している[32]

飛行制御システム[編集]

バイラクタル TB2は、外部センサーの補助なしに自律的にタキシング、離陸、巡航、着陸、駐機が可能な、リアルタイムのセンサーデータを三重冗長英語版化されたセンサーフュージョン英語版アルゴリズムで飛行制御するシステムが搭載されている。ミッション固有の制御は、ミッションコントロールコンピュータシステムを通じて行われる。電子パワーユニットは、トリプルオルタネーターリチウムイオン二次電池ユニットで構成されている。カメラユニットがプラットフォームの尾部に設置されており、全てのセンサーデータはエアボーンデータレコーダーに記録されている。アビオニクスは、必要に応じて異なる飛行場への自律的な緊急着陸をサポートできるようになっている。センサーフュージョンは、GPS信号が失われた場合でも、ナビゲーションと自動着陸を可能にするよう設計されている[33]

武装[編集]

バイラクタル TB2は、主翼下の4ヶ所のハードポイントに合計150kgのミサイルや誘導爆弾、ロケット弾で武装することができ、TAI/アグスタウェストランド T129 ATAKにも武装できるUMTAS英語版は射程8kmの対戦車ミサイルでバイラクタル TB2に搭載した場合、高度16000フィートからの攻撃もできる。レーザー誘導爆弾であるMAM滑空爆弾であり、C型は射程8km、L型は射程が8km~14kmとなっている。T型は重さが94kgとなり1発しか装備できないが射程は30km~80kmとなり、中距離対空兵器からのアウトレンジ攻撃も可能になっている。その他にもレーザー誘導ロケット弾であるRoketsan Cirit英語版等を装備することができる。

運用履歴[編集]

イラク[編集]

トルコ国防省によると、2019年11月上旬、イラクとの国境を越えてPKKのテロリストを殺害するためにバイラクタル TB2が使用されたという[8]

リビア[編集]

MAM Lを搭載したバイラクタル TB2

2019年6月、国際ニュースメディアは、リビア国民合意政府英語版(GNA)が、ハリファ・ハフタル将軍が率いるリビア国民軍(LNA)の空軍基地を攻撃するためにバイラクタルを使用したと報じた。現在進行中のリビアの内戦に対する国際連合の禁輸措置にも関わらず、少なくとも3機のバイラクタル TB2 UCAVが、国連が認めた政府によってトリポリ上空で使用されていると疑われている。一方、LNAハフタル将軍の軍隊は、ミティガ国際空港で1機のUAVを破壊したと主張している。トリポリ上空を飛行するバイラクタル TB2が、少なくとも1機、GNA連合軍の管理下にあるミティガの軍事区域に着陸しようとしている様子が動画に映し出されている[34]。トルコのTB2は、リビア西部でLNAの戦闘機を標的として大規模に使用され続いている。LNAはトルコのドローンの撃墜を日常的に報告しており、1週間で6機を撃墜したと主張している[35]。LNAもアラブ首長国連邦(UAE)から調達したと思われるドローンを投入しており[36]、同年5月から7月にかけてGNAが持つ12機のバイラクタルTB2の半分近い6機が、LNAの中華人民共和国製「翼竜Ⅱ」無人機に破壊され、GNAも1機の翼竜Ⅱ無人機を破壊している[37][38]

2019年12月、LNAはトリポリ近郊のアイン・ザラーでトルコのTB2無人機2機を撃墜したと主張している[39]

2020年3月31日、LNAはリビアのトリポリ市付近で、トルコの別のバイラクタル TB2戦闘用ドローンを撃墜した[40]

2020年4月5日、リビアのタルフーナアラビア語版近郊の滑走路でアントノフ An-26輸送機が破壊された。GNAの部隊は、LNA民兵用の弾薬を積んだアントノフ貨物機を撃墜したと報じた。LNAは攻撃を確認したが、航空機は医療物資を運んでいたと述べた。未確認ながら、同機はバイラクタル TB2 ドローンからの攻撃を受けたと報じられている[41]

2020年4月17日には、トルコのバイラクタル TB2ドローンはバニワリード近くで撃墜された[42]

2020年5月第3週、LNAのパーンツィリ・ミサイルシステムは、国民合意政府のトルコ製戦闘ドローン バイラクタル TB2を2機、撃墜したと報じられている。1機はタルフーナ市付近で、もう1機はジェベルシェリーフ付近で撃墜された[43]

写真証拠に基づいて航空機や装甲車両の損失を追跡するサイト「ロストアーマー」によると、2020年6月8日時点で少なくとも19機のTB2の破壊が確認されている[44]

シリア[編集]

バイラクタル TB2は、アンカ (航空機)英語版-S UAVや多くの電子妨害装置と共に配備され、2020年2月末、シリア北西部でトルコ軍が、シリアに派遣されたロシア軍により大きな損失を被ったことに対抗して、トルコが開始した「スプリング・シールド作戦」において地上目標を攻撃するための協調した動きで広範囲に使用された[45][46][47]。この展開は成功であり、戦術的なゲームチェンジャーであると専門家は評価している[48][49][50]。ロシアの情報筋は、ロシアの支援を受けたシリアの防空部隊が、2020年3月5日までに7機のバイラクタル TB2 UAVを撃墜したと主張した[51]。ドローンはMAM-CとMAM-Lの「マイクロ弾薬」で武装しており、射程は最大8.6マイルとされている[52][53]

2020年3月18日、ANNA News通信のチームは、サラキブで撃墜されたトルコ製バイラクタル TB2の残骸の発見を報じた[54][55]

トルコ[編集]

2018年7月2日、トルコ空軍のバイラクタル TB-2Sがハタイ県でエンジン故障が原因と見られる胴体着陸事故を起こした[56]

アゼルバイジャン[編集]

バクー軍事パレードでのバイラクタル TB2

2020年6月、アゼルバイジャンのザキール・ハサノフ国防相は、アゼルバイジャンがトルコからバイラクタル ドローンの購入を決定したと発表した[57]

2020年ナゴルノ・カラバフ紛争

2020年ナゴルノ・カラバフ紛争では、バイラクタル TB2がアルメニア共和国軍及びアルメニアの軍事基地に対して使用されている[58][59]

ウクライナ[編集]

軍事近代化プログラムの一環としてウクライナ軍は2019年に12機を輸入し、親ロシア勢力の支配下にある東部地区偵察に投入した[60][61][62]。 同機の使用に成功した後、ウクライナ海軍は6機のバイラクタルTB2を別途追加発注し、海軍当局によると2020年に納入された[63]。トルコとウクライナは、ウクライナに48機のバイラクタルTB2を追加製造する合弁会社を設立すると発表している[64]。東部の紛争地域で活躍したことにより2021年9月に追加の24機を数ヶ月以内に購入することを発表した。2022年時で18機以上を保有しており、2022年3月にウクライナのレズニコフ国防相は新たに発注したバイラクタル TB2がすでにウクライナに納入され、戦闘準備が整ったと発表した[65]。24機全てが納入されていた場合、ウクライナには数機がロシア軍に破壊されたが30機以上を保有していると考えられる。

クリミアやウクライナ国境付近でのロシアの軍拡の中、2021年4月9日にバイラクタルTB2でドンバス地方の偵察飛行を行った。これは、活発な紛争地域内でのウクライナ軍による同機の初運用となった[66][67]。ウクライナ軍参謀本部は2021年10月26日、東部の親ロシア派武装勢力に対する攻撃任務にTB2を初投入してD-30 榴弾砲を破壊したと発表した[68]。更にウクライナは、より高性能なトルコ製無人攻撃機「アキンチ」へエンジンやプロペラを供与している[60]。ロシア連邦副首相ユーリ・ボリソフは、「トルコとの関係を見直す」とウクライナへの無人軍用機輸出に対して警告を発した[60]

2022年2月24日から始まったロシアのウクライナ侵攻では、開戦初日のロシア軍による空爆で全機破壊されたと報じられていたが、実際には分散配置されていたため被害を免れた。初日以降多くの戦果を上げ続けており、ロシアのクラスハ電波妨害装置にも妨害されずロシア軍の戦車[69]や装甲車、各種車両[70]9K37等の対空ミサイル部隊[71]、鉄道の燃料車等やロシア軍司令部等を攻撃し数百両を破壊する戦果を挙げたとウクライナ側は主張している。[72]。また、地対艦ミサイル『ネプチューン』との協同により、黒海艦隊旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」に攻撃を行ったとされ、結果として同艦は沈没した[73][74]