日給2万円…原発労働の対価と代償
「おまえ、裏切ったな!」
福島第1原発事故の収束作業中に死亡した静岡県御前崎市の配管工、大角信勝=当時(60)=の妻、カニカ(53)は、夫が勤めていた建設業者の社長の言葉が忘れられない。
社長は50万円と引き換えに、ある書類に判を押すよう迫っていた。タイ国籍で日本語が不自由なカニカには読めなかったが、示談書のたぐいだったことは間違いないだろう。一度断ると、社長は金額を倍の100万円に引き上げ、それでも頑としてうなずかないカニカに、そう怒鳴りつけたという。
最初から社長はこんな態度をとっていたわけではない。福島市内の斎場で大角が荼毘(だび)に付されるまで、カニカにかかった宿泊費や交通費を負担した。大角が働いた分の給料も払い、生活に困るカニカに米を10キロ差し入れもした。
だが、カニカは市役所の無料相談を通じて代理人弁護士の大橋昭夫(63)と連絡をとり、労災申請の準備を進めていた。
「裏切ったな」という社長の言葉は、弁護士に助けを求めたことに対する逆恨みだけではなかったはずだ。背景には、労災が認められれば経営が傾きかねないという抜き差しならない事情があるのだ。大橋は端的に言う。
「元請けから仕事が来なくなるのを心配したのだろう」
福島第1原発事故の収束作業中に死亡した静岡県御前崎市の配管工、大角信勝=当時(60)=の妻、カニカ(53)は、夫が勤めていた建設業者の社長の言葉が忘れられない。
社長は50万円と引き換えに、ある書類に判を押すよう迫っていた。タイ国籍で日本語が不自由なカニカには読めなかったが、示談書のたぐいだったことは間違いないだろう。一度断ると、社長は金額を倍の100万円に引き上げ、それでも頑としてうなずかないカニカに、そう怒鳴りつけたという。
最初から社長はこんな態度をとっていたわけではない。福島市内の斎場で大角が荼毘(だび)に付されるまで、カニカにかかった宿泊費や交通費を負担した。大角が働いた分の給料も払い、生活に困るカニカに米を10キロ差し入れもした。
だが、カニカは市役所の無料相談を通じて代理人弁護士の大橋昭夫(63)と連絡をとり、労災申請の準備を進めていた。
「裏切ったな」という社長の言葉は、弁護士に助けを求めたことに対する逆恨みだけではなかったはずだ。背景には、労災が認められれば経営が傾きかねないという抜き差しならない事情があるのだ。大橋は端的に言う。
「元請けから仕事が来なくなるのを心配したのだろう」
「協力会社」の欺瞞
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