2022年4月29日金曜日

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領

 

【ジャカルタ=川上大介】インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は29日にツイッターで、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナでの戦争を停止し、和平交渉をするよう求めたと明らかにした。

 ジョコ氏は別の声明で、11月に開催予定のG20(主要20か国・地域)首脳会議に、プーチン氏が出席する予定であることも確認したと説明した。首脳会議にはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も招待したという。

 ジョコ氏は「G20を束ね、亀裂が生じないようにしたい。経済発展には平和と安定が重要だ」などと述べた。

ウクライナ「グテレス氏と会談直後にミサイル」 ロシア軍を非難

 

ウクライナ「グテレス氏と会談直後にミサイル」 ロシア軍を非難
毎日新聞 2022/04/29 19:09
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首相「捜索救助とサポートに全力」とツイート 知床観光船事故
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国連のグテレス事務総長の訪問中に攻撃を受けたキーウの建物=2022年4月28日、AP© 毎日新聞 提供 国連のグテレス事務総長の訪問中に攻撃を受けたキーウの建物=2022年4月28日、AP
国連のグテレス事務総長は28日、ロシアの侵攻を受けるウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領、クレバ外相と会談した。避難民や負傷者らへの人道支援を強化するため、協力することで一致した。一方、キーウ市によると、会談後の同日夜、市中心部の集合住宅にロシア軍のミサイル2発が撃ち込まれ、1人が死亡し、少なくとも10人が負傷した。

会談後の記者会見でグテレス氏は、これまでにウクライナ国内で約340万人に対して行った人道支援を、8月末までに倍以上の約870万人に実施する目標を掲げた。また5月までに130万人に支給した資金援助も、ウクライナ政府と協力し、8月までに200万人への支給を目指す。

会談では、ロシア軍が包囲するウクライナ南東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所にとどまる民間人の退避についても話し合われた。グテレス氏は26日のプーチン露大統領との会談で、製鉄所にとどまる民間人の退避のため、国連と赤十字国際委員会(ICRC)が関与することで「原則的に」合意した。国連によると、国連人道問題調整事務所(OCHA)と露国防省が協議を続けている。だが協議の詳細などは明らかにしていない。

記者会見でグテレス氏はマリウポリの状況について「危機中の危機であり、数千人の民間人が人命救助を必要としている。多くは高齢者で、治療を受ける必要がある人や、動くのが困難な人もいる」との認識を示したうえで、「(退避)実現に向けた議論が続いている」とだけ語った。協議の詳細や具体的な退避方法に関しては、「現時点で私たちは(退避の)実現に向け全力を尽くしているとしか言えない。それを妨げる可能性のある、あらゆるコメントを控えている」と説明した。

会見に同席したゼレンスキー氏は「私はアゾフスターリ製鉄所にとどまる人たちの家族と同様、(国際社会を)信頼し、そして信じている。事務総長と私たちはきっと成功に導くことができる」と語った。

このほかグテレス氏は、国連安全保障理事会がロシアの拒否権行使で機能不全に陥っている点について「落胆と不満、怒りのもととなっている」と語った。だが安保理改革について問われると、「すぐに実現できる幻想は持たない。国連全体の機能を改善できるよう全力を尽くす」と述べた。

ウクライナ当局はキーウに着弾したミサイルについて、2発のうち1発が25階建ての住宅の低層階に直撃したと明らかにした。ゼレンスキー氏は28日、国民向けのビデオメッセージで「会談直後にミサイルが飛び込んできた。国際機関に対するロシアの本当の姿勢を物語っている」と非難した。

一方、ロシア国防省は29日、キーウの宇宙ロケット関連施設を高精度のミサイルで破壊したと発表した。タス通信などが伝えた。【宮川裕章(ブリュッセル)、堀和彦】

チェルノブイリの遺体は腐らない

 

チェルノブイリの遺体は腐らない?象の足とは?現在についても

1986年に起きたチェルノブイリ原子力発電所事故では、即死する象の足や赤い森も出現しました。遺体が腐らないという噂もあり、奇形動物も生まれたようです。今回はチェルノブイリについて、現在の様子や福島との比較を含めて遺体が腐らない理由を解説します。

目次

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チェルノブイリの遺体は腐らないの?

darksouls1 / Pixabay

世界最大の原子力事故が起きたチェルノブイリ原子力発電所。事故から30年以上が経過した今でも生活や自然は元通りにはなっていません。

今でも人が踏み入れることのできない地域が存在しており、影響の大きさが垣間見えます。そんなチェルノブイリでは、亡くなっても遺体が腐らないと言われています。

今回は事故の原因や状況を含め、本当に遺体は腐らないのかについて紹介します。

チェルノブイリとはどんな場所?

WikiImages / Pixabay

チェルノブイリという言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。その当時まだ生まれてなくても、歴史の授業などで習うとても重大な事故だからです。

事故の概要を紹介するとともに、チェルノブイリがどのような場所であったのかを紹介します。

チェルノブイリは原子力発電所

12019 / Pixabay

チェルノブイリはウクライナ・ソビエト社会主義共和国の中にあった原子力発電所です。現在のウクライナのキエフ州プリピャチに位置しています。

1971年に着工、1978年から稼働し始めました。当時の正式名称は「V・I・レーニン記念チェルノブイリ原子力発電所」でした。

1991年のソ連崩壊によって「チェルノブイリ原子力発電所」に変更されました。事故後も国の電力を賄うために1〜3号炉は運転を続け、2000年12月に停止となりました。

1986年に原子力事故が起きた

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原子力事故が起きたのは、1986年4月26日1時23分のことです。当時、4つの炉が稼働しており、そのほかの2つの炉は建設中でした。

前日の4月25日に4号路は保守点検に向けて原子炉を止める作業をしており、この機会にいくつかの試験を行う予定でした。

実験中に事故が起きて爆発や火災が起きた

原子力事故が起きたのは、緊急時にタービン発電機の慢性回転で所内の電源を確保できるかとうい実験中でした。突如爆発が起こり、その後火災が発生しました。

事故は様々な要因が重なって起こったものだとされており、安全装置を無効化していたことや根本的設計が欠如していたことなどが挙げられています。

火災自体は26日5時ごろに収まりましたが、5月3日に日本でも雨から放射性物質が検出されるなど北半球の広範囲に影響を及ぼしました。

チェルノブイリでの死者数は?

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チェルノブイリ原子力発電所事故では、急性放射線障害によって作業員28名が亡くなり、2010年末までに22人が亡くなりました。

事故が直接の原因となって亡くなったのは50人ですが、汚染された牛乳を飲んで亡くなったのは9人、軍人や炭鉱労働者からも多数の死者が出ています。

放射線によって長期的に見ると死者数はそれ以上となることが予想されており、把握しきれていないのが現状です。

近づくと即死する象の足

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象の足とは、4号炉で事故から8ヶ月後に発見された炉心溶融物の塊の通称です。ドリルでも壊せないほど硬く、見た目の黒さやシワの多さから象の足に例えられました。

象の足は主に二酸化ケイ素から成り立っており、放射線量がかなり高く、5分間の被曝でヒトの半数致死線量に達するほどです。現在は放射性崩壊で危険性が少し弱まりました。

近づくと即死するほどの威力があり、一時は地下水に到達して飲み水に影響が出ると懸念されていました。

チェルノブイリの遺体は腐らないのは本当?

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チェルノブイリの事故で亡くなっても、放射線の影響で遺体が腐らないと言う噂があります。実際に遺体が腐っていなかったのを目撃した作業員も少なくありません。

では、本当に放射線の関係で遺体は腐らないのでしょうか。

放射線の関係で腐らない?

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遺体が腐らないというのは本当ですが、これが放射線の影響であるとは言い切れません。専門家によっても意見が分かれているようです。

放射線の影響で腐敗を進める菌が生存できない、寒い地域なので腐敗のスピードがゆっくり、亡くなった人はセメントで固められたので腐敗しないなど様々な見方ができます。

未発見の遺体がまだある

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先ほど死者の数を紹介しましたが、実際に全員把握できているわけではありません。未発見の遺体も多いことが予想されており、特に4号炉で作業していた人は跡形もなく溶けてしまった可能性もあります。

亡くなった作業員などが埋められて放射線が漏れ出ないようにセメントで固められたため、その中に身元不明の遺体も混じっています。

チェルノブイリで作業した人の体験談

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チェルノブイリの爆発によって辺りは住民が全員避難させられるほど危険な状態でしたが、その中でも懸命に作業を続ける人が多くいました。

防護服を着ていても被爆の可能性は高く、まさに命をかけて仕事をしていたのです。そんな彼らがチェルノブイリでどのようなものを見たのでしょうか。

犬の死体が腐っていなかった

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放射線の影響からか、犬の死体が腐っていなかったのを見た人もいます。無人の家にいたその犬は外部被曝も内部被曝も起こしていました。

内部被曝は被曝したネズミなどを食べて生き延びていたためであると思われます。数日その家を訪れると犬はなくなっていましたが、体はミイラのように腐敗は進んでいなかったようです。

巨大化したネズミがいた

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果樹園は放射線の影響があるため、人間は1つも食べることはできません。食べると内部被曝を起こし、死ぬ可能性が高いためです。

しかし動物たちは人のいなくなった果樹園を住処にしていました。果樹園を訪れた作業員は、そこで巨大なハツカネズミや猫ほどの大きさになったドブネズミを目撃しています。

作業員も被ばくした

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作業員は防護服に身を纏い、口にはマスクを着用して放射線を浴びないようにしていました。しかし放射線濃度が高すぎるため、被曝してまった作業員は多くいます。

最初の頃は放射線の怖さが浸透しておらず、軽装で作業にあたっていた人が多いことも原因となっています。最新機械を導入するよりも人件費が安いため、大量の作業員が派遣されました。

頭痛や吐き気、発熱、衰弱などの体調不良を起こし、作業が続けられないほどだったようです。自覚症状がなくても作業から数日後に亡くなってしまった人もいます。

胎児がミイラ化していた

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放射線の影響を受けたのはそこで生活していた人間や動物たちだけではありません。母のお腹の中で育っていた胎児たちも放射線の影響を受けていました。

事故後、奇形児が生まれないために妊婦に中絶が勧められました。中には8か月などもう少しで生まれてくるような、完全に赤ちゃんの形になっている胎児もいたようです。

そのため病院には多くの胎児の遺体が保管されていました。事故から1年半以上経って発見された胎児たちはミイラ化しており、腐敗は進んでいませんでした。

チェルノブイリのその後は?

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火災は2日ほどで収まりましたが、最も被害を大きくしたのは放射線です。目に見えないため、即死でなくても気づかないうちに被曝していることが多く、忘れた頃に影響が出始めることも多くあります。

ここでは、被曝による影響について紹介します。

原子爆弾の10倍の威力があり近づけない

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事故によってメルトダウンを起こしたため、貯水槽のパイプを開ける必要がありました。この任務を遂行したボランティア3人は命を落としましたが、彼らのおかげで大規模爆発は起こりませんでした。

この時に爆発が起きていれば、原爆の10倍もの威力であったとされる非常に怖いものです。放射線だけでなく爆発の影響でヨーロッパ全土が失われていた可能性もあるほどの規模です。

爆発は起らなくても、1時間毎に広島に落とされた原子爆弾の2倍の放射線量が放出していました。

放射能レベルが15000

チェルノブイリ原子力発電所事故の放射能レベルは15000とされています。爆発が起きた直後に測った時は3.6と安全圏内でした。

清掃員が派遣されて爆発の処理が行われていましたが、実際には15000と人が近づいてはいけないレベルだったのです。

目の色が変わる人がいた

Free-Photos / Pixabay

放射線の影響で、目の色が変わったケースも報告されています。地元の消防士だったバルディミア・プラヴィックは元々茶色の目をしていました。

しかし高レベルの放射線汚染を受けた結果、青色に変化してしまったようです。報告されていないだけで、他にも目の色が変わった人がいる可能性も大きいです。

ガン患者が増えた

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放射線はすぐに症状が出ず、何年後かに突然出てくる場合もあります。特に事故発生当時子供だった人が小児甲状腺癌になる可能性が高いことが発表されました。

甲状腺癌は6,000件以上報告されており、早期発見・早期治療が望まれています。子供に多いのは、汚染されたミルクを通じて甲状腺に影響を与えたためと言われています。

チェルノブイリ付近の森は赤い森になった

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チェルノブイリ原子力発電所の周辺には針葉樹林が広がっています。特に西側にある森は最も深刻な放射線汚染を受けており、赤く変色してしまいました。

その見た目から「赤い森」と呼ばれるようになりました。今も赤い森のままであり、いつ緑の針葉樹林が観られるかは分かっていません。

奇形動物も現れた

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放射線の影響のひとつとして、奇形動物の出現があります。特にげっ歯類や鳥類で奇形動物が現れる可能性が高く、遺伝子レベルで放射線が影響を与えていることが明らかになっています。

中には4つの角を持つ牛や目の大きさがスイカ並みに大きい豚が目撃されたとの情報もあります。

チェルノブイリの現在は?

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チェルノブイリは今も放射線汚染の影響が強い地域もあり、事故から30年以上が経った今でも人間は戻ってきていない場所があります。

では、現在のチェルノブイリはどのような感じなのでしょうか。

立ち入り禁止区域に動物が住んでいる

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今も人間が立ち入り禁止となっている範囲は広いですが、野生の動物たちは戻ってきているようです。人がいないことで狩りが行われず、自然も破壊されないため、むしろ動物の生息数は増加しています。

事故前は希少動物とされていた種までも増殖しており、放射線以上に人間が動物の生態系を壊していたことがよく分かります。

現在も作業が行われている

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原子力発電所としての役目は完全に終えましたが、今でも作業が引き続き行われています。作業員たちは年間およそ20ミリシーベルトの放射線を浴びていますが、国からの補償はありません。

給与も特別高いわけでなく、近くに仕事ができる場所が少ないため、生活のために作業員を選んでいる人も多くいます。

また、立入禁止区域内でも自己責任で戻ってきて生活を営んでいる人もいます。高齢者は特に住んでいた場所を離れたくないという思いが強く、高齢化も問題となっています。

チェルノブイリの制御室が一般公開された

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2019年、今まで非公開となっていたチェルノブイリ原子力発電所4号炉の制御室が一般公開されました。防護服を着た状態であれば5分間の入室が許されます。

この場所はメルトダウンを起こした炉を操作していたところであり、原子力発電所事故の要であった重要な場所です。

いまだ放射線量は高いためリスクはありますが、これを機にチェルノブイリへの観光客が増え経済が少しでも潤うことが期待されています。

チェルノブイリと福島原発はどちらがすごかった?

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日本人にとって福島の原子力発電所事故は記憶に新しいでしょう。チェルノブイリの事故が規模の大きなものであることは分かりますが、どこか遠い場所の話程度に捉える人もいます。

様々な指標によって変わるため、一概に比べることはできませんが、チェルノブイリと福島を比べてみて、どちらがひどいのでしょうか。

福島原発のほうが規模が小さかった

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チェルノブイリより福島の方がひどかったと言われることも多いですが、規模だけを比べてみると福島の方が小さいです。福島の原子力事故で地面が汚染された面積は、チェルノブイリの1/10ほどです。

また、放射線の量も10〜20%程度であることがわかっています。被害についても迅速な対応や偶然が重なり、小さく抑えられました。

福島の国際原子力事象評価尺度は最悪のレベル7

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国際原子力機関と経済協力開発機構原子力機関が策定した「国際原子力事象評価尺度」では、チェルノブイリも福島も最悪レベルの7とされています。

基準としては放射性物質の重大な外部放出があること、再建不能なほど原子炉や放射性物質障壁が破壊したことなどです。福島はチェルノブイリより規模が小さかったとは言っても、世界最悪レベルの事故でした。

NEXT:福島原発にも動物が増えている

2022年4月19日火曜日

ウクライナ侵攻2か月 戦争いつ終わる?今後の世界は?

 

ウクライナ侵攻2か月 戦争いつ終わる?今後の世界は?

ロシアによるウクライナの軍事侵攻が始まってからおよそ2か月。この戦争はどのように終わりを迎えるのか。そして、世界秩序はどうなるのか。

国際政治学が専門で、安全保障の歴史に詳しい京都大学大学院の中西寛教授に今後考えられるシナリオと、いま世界が抱えるリスクを聞きました。世界史の中で考えると「国際社会の分裂は、取り返しのつかないところを過ぎた」と警鐘を鳴らしています。

「出口見えず “意志と意志の争い”に」

Q. ロシア軍によるミサイル攻撃や凄惨(せいさん)な殺害が続いています。戦争の現在地をどうみていますか?

「戦争の様相はますます混迷しています。長期化していく要素がどんどん強まり、出口が見えない状況になってきていると思います」
「ウクライナの非人道的な惨禍、ゼレンスキー大統領に率いられたウクライナ国民の勇気を見れば、一刻も早くこの戦争が終わってほしいという気持ちを持つのは人間として当然だと思います。西側が結束してロシアに対して厳しい経済制裁を行っていて、戦争が終結するということを期待する向きがあるのも確かだと思います」
「しかし、この戦争はプーチン大統領からするとすでに体制の生存をかけた戦争になってしまっていると思います。経済的に苦しくなっても、あるいはウクライナで一定の反撃を受けてももともとの軍事目標を達成せずに敗退という印象で終えるということは直ちに政権の動揺につながる事態だと思います。5月9日の“対独戦勝記念日”に軍事的勝利の成果を誇るということが今の目標ではないか、と言われていて、確かにその可能性は高いと思います。しかし、そこでロシアの側から停戦を持ちかけるということはまずないでしょうし、仮にあったとしてもウクライナが決して受けることがないということも、ロシアは理解していると思います。もはやこの戦争というのはロシアとウクライナの“意志と意志の争い”になってきていて、そう簡単に終わるということは今のところ考えられないと思います」

これから何が‥ 鍵となる“3つのシナリオ”

Q. 今回の戦争、今後のシナリオはどう考えていますか?

シナリオ(1) 長期化・休戦

「実際に何が起こるかは当然予測できない要因がたくさんありますので、細かいシナリオはいくらでもできると思いますけれども、大きく分けて3つに考えられると思っています。1つはロシアとウクライナの戦闘が長期化していくというパターンです。これは基本的にはどちらかの戦争を続ける能力がつきるまで続き、そのときの戦闘境界線が1つの合意になって戦闘が終了するということです」
「1950年から始まった朝鮮戦争では、北緯38度線が休戦ラインになって、いまだに続いているという状況ですが、そもそも38度線は、第2次世界大戦が終わったあと、アメリカとソ連がそれぞれ朝鮮半島を占領する境界線として設定されていたわけです。しかし今回の場合は、ことしの戦争のほかにクリミア半島が併合されていますし、東部地域でもロシアの影響下にある地域で紛争が続いていたわけです。地理的にも明確な境界線がない地域ですので、はっきり休戦ラインを引いて落ち着きましょうという合意が非常に難しいところだと思います。そういう意味ではある程度停戦に近づいていっても戦闘状態はその後も続く、火がくすぶり続けるように紛争が続くという形で両国の戦闘が徐々に収束していくことが、第1のパターンだと思います」

シナリオ(2) 戦争拡大

「第2のパターンは何らかのきっかけで戦争が拡大、エスカレートしていくというもので、第3次世界大戦に至る危険性をはらんでいると思います。考えられるのは、ロシアがウクライナから反撃にあった時、大量破壊兵器・化学兵器・生物兵器あるいは場合によっては戦術核兵器も使用する。それに対してNATOが直接的な軍事介入をし、それをきっかけにNATO諸国とロシアがウクライナ以外の地域でも交戦状態に入っていくパターンです」
「また、ウクライナの情勢が西側にとって不利な状況になり、NATOがより高いレベルの軍事支援をしていき、ロシアが反撃する形でポーランドなどのウクライナに近い地域でのNATO軍に対し、警告的にでも攻撃を仕掛け、NATOとロシアが本格的な戦闘に入っていく、という可能性もあると思います。歴史的に見ても、1941年にはドイツがヨーロッパとの戦闘でイギリスを屈服させることができない状況の中で、ソ連に対する戦争、いわゆる“独ソ戦”を始めました。特に戦争に政権の生き残りがかかっていると考えている国家は、このまま敗北を受け入れるよりは、思い切って戦闘を拡大することで何らかのチャンスが生まれるのではないかというふうに考えることは歴史的にもあるわけです」

シナリオ(3) プーチン政権崩壊

「3つ目はロシアで政治体制が動揺していって、プーチン政権が崩れていくというシナリオです。今のところ、この可能性は西側が期待しているほど確率は高くないと思います。プーチン体制は非常に強固ですので、反旗を翻すような国内の政治勢力はありませんし、政権内でもシロビキと言われるプーチンの政権基盤になっているグループ、あるいはロシア軍もいずれもプーチンの支配下にあって、そこからクーデターや反乱といったようなものが簡単に起きるような状況ではないと考えられます。ただ、注意しないといけないのは、プーチン体制が仮に崩れてもその後、簡単に平和が来る可能性はそれほど高くないということです」
「1991年、ソ連が崩壊したときには、すでにソ連の中にあった各共和国に共産党政権があって、そこがくら替えをして、民族主義的な政治勢力になって受け皿になりました。ソ連の大統領だったゴルバチョフからロシア共和国の大統領だったエリツィンに政権が移譲されたわけですが、現在のロシアについてはそういう政権の受け皿が存在していません。ですから仮に宮廷クーデターのようなものでプーチンが追い落とされる、あるいは民衆の反乱があってプーチン政権が倒れるということになっても、その後平和的に政権が移行される可能性はほとんどないだろうと思います」
Q. この3つのシナリオで、現時点ではどれがいちばん可能性が高いと思いますか?

「現時点で言えば(1)が高いと思いますけれども、(2)で、いきなり第3次世界大戦にならないにしても、戦線が拡大される可能性もそれなりにあると思います。(3)の可能性はこの戦闘が一定期間たてばあると思いますけれども、今のところ確率は低いと思います」

「今は“危機の30年” 国際社会の分裂」

Q. 歴史的な観点でいうと、現在の状況はどの時代に似ているのでしょうか。
「“歴史は繰り返すことはないが、韻(いん)を踏む”と言われます。過去と同じことが起きることはありえないんですが、似たようなことはいろいろな時代に見ることができると思います。あまりいい類推ではないのですが、近いと思うのは、やはり第1次世界大戦と第2次世界大戦の戦間期です。イギリスの歴史家で政治学者のE.H.カーはこの戦間期を“危機の20年”と呼び、本を書きました。今回の事態が起こり、私が真っ先に思い出したのがこの本です。冷戦が終わってからのこの30年間というのが“危機の30年”で、まさに大きな戦争になりかねない、“とば口”に世界は立っていると考えます」
Q. この戦争によって世界の構図はどのように変化していくんでしょうか。

「冷戦が終わったときにできたある種の国際協調の枠組みが1つの終えんを迎えた。そして2010年代に進行していた国際社会の分裂というのが、今回ある意味で決定的になった、取り返しのつかないところをすぎてしまったと思います」
「アメリカと中国がいちばん大きな塊であることは確かで、それぞれ同盟国や経済的に関係が深い国があると思います。しかし、かつてアメリカとソ連を頂点とした冷戦と比べると、今のアメリカと中国が世界に対して持っている支配力や影響力というのは、どちらもはるかに低いと思います。2010年代は、2014年のロシアによるクリミア併合、中国による南シナ海への進出や香港に対する国家安全維持法の制定、またトランプ政権による西側同盟関係に対する圧力や経済協調体制への打撃、イギリスのEU離脱…。それに追い打ちをかけるような形でコロナによる経済社会的な影響があり、世界はグローバリゼーションによる一体化から、分裂の方向に向かっていたと思います」
「今回ロシアによるウクライナ侵攻で、国連の安全保障理事会が機能しなかったこと、そして経済的にも西側が従来にない厳しい経済制裁を、一定の経済規模を持つロシアに対して行ったことは、世界の分断をむしろ固定化する、あるいは長期化するという意味でも、もう前の時代には戻りそうにないことが明らかです」
Q. この30年でできなかったこと、足りなかったことは何なのでしょうか。
「長期的な視点からの国際秩序の構築ということだと思います。西側は冷戦が終わったあと短期的な思考にとらわれて、眼前の敵をどう倒すかいうことに集中してそれを倒せば世界がバラ色になると、簡単に言ってしまえば“ユートピア的”なビジョンというのを繰り返してきたのではないかと思います」
「例えばアフガニスタンでは、ソ連のそれまでの侵略が終わっていたわけですが、西側はその後ほぼ無視をして、やがてそこがタリバンが支配する地域になり、イスラム過激派のアルカイダの本拠地になって、テロの温床になっていく。そして2001年には9・11同時多発テロが起き、アメリカが主導するテロとの戦いになり、世界中が少なくとも一時期はサポートしたわけです。しかし、結果的にアフガニスタンでの軍事作戦から、アメリカはイラクへの軍事侵攻を選んで国際社会を分裂させてしまったわけです。その時、ロシアはプーチンが登場してすぐだったわけですけれども、西側はプーチンのさまざまな問題に目をつぶって、“テロとの戦いの同盟国”という形に位置づけて協力関係をむしろ深めました」
「2008年に中国で北京オリンピックがあり、その直前にはロシアがジョージアとの領土紛争、戦争をする事態になったわけですけれども、西側としては特にアメリカがテロとの戦争に苦労しているということもありましたし、中国やロシアの問題に大きく踏み込まず、むしろリーマン・ブラザーズの経営破綻以降の世界経済危機に対応する方を優先し、結果として習近平政権や現在のプーチン政権のような巨大な専制的国家の成長を見過ごしてしまったということだと思います」
「今回行っているSWIFTからのロシアの主要銀行の排除というのはそれ以前からすると非常に大きなことだと考えられてきました。基本的には禁じ手とすら言われていたことをやったわけです。ロシアの侵略が深刻で、それに対抗しないといけないという正当性があることは確かにしても、結果的に起きているのは、これまで西側が避けたいと思っていた“世界経済のブロック化”というのが現実に起き始めていて、中国やそのほかの国も、今回のような西側の態度を見れば、やはり西側主導の世界経済体制というのは信用できない、いざとなればそれは西側によって政治的武器として使われるものだと認識したと思います」

「大量の情報の中で“歴史的想像力”を」

Q. この戦争が世界そして私たちに突きつけているもの、そしてこれから私たちが向き合っていかなければならないことはなんでしょうか?
「やはり、過去に起きたことが最も貴重な参考材料になると思います。単に過去を振り返るだけでなく、必要なのは現代という時代を見据えたうえでの想像力だと思うんですね。今まさに情報社会、情報文明の時代になっていますので、すでにこの戦争についてわれわれは毎日大量の情報を得るわけです。脳はその情報を処理するだけで精いっぱいになってしまって、より大きな事態を包括的にとらえてそれがどういう結末をもたらすのかについての想像力、思考力が不足してきているんだろうと思います。長い目で見てどのような選択をすればよりよい未来が得られるのか、深い議論をする機会が世界的に減ってしまっていると思います」
Q. 最後に、日本の今後の立ち位置はどう考えますか?
「日本として重要なのは、やはりインド太平洋地域に、この戦争をきっかけに新しい分裂分断をもたらさないということだと思います。アメリカ、中国以外の国とどれぐらい密接な関係をつくれるか、ということが重要です。今回ウクライナの問題でG7の1国としてNATOの外相会合などにも参加し、ヨーロッパとの関係をステップアップしましたが、同時にインド太平洋ではオーストラリア、インドとの関係も持っている。また東南アジアとも長期的に関係を結んでいる。さらにアフリカや中東の諸国とも従来以上に踏み込んだ関係を模索してきているというのは今の日本の流れだと思いますけれども、やはりその流れをさらに強化し、アメリカ中国と関係を保ちつつ依存し過ぎない外交、安保体制を経済も含めて作っていく必要があります」
「人類の歴史は、“正しければいい結果がもたらされる”という、簡単なものではないわけです。結果に結び付けるには思考力が必要であって、日本はより地に足のついた、より冷静な議論が必要だと思います」

2022年4月12日火曜日

キーウ近郊 激しい戦闘の爪痕

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220411/K10013576871_2204111530_0411153851_01_03.jpgキーウ近郊 激しい戦闘の爪痕 ロシア軍戦車の残骸も

現地時間の10日、ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ近郊にNHKの取材班が入りました。
キーウ近郊のロシア軍が撤退した村では、多くの住宅が砲弾などで破壊されていました。また、キーウに向かう幹線道路の脇には、ロシア軍の戦車の残骸がいくつも見られるなど、激しい戦闘の爪痕が至る所で見られました。
【動画:44秒】(データ放送ではご覧になれません)