2009年9月17日木曜日


核燃サイクルとは

 原子燃料サイクルとの違いは
言い方を変えているだけで同じ事です。原子力推進側は、核=核兵器のイメージを嫌って 原子燃料サイクルという言い方を好みますが、基本的に原子力は軍事利用の陰が付きまとい、放射能の害を考えれば核兵器の恐怖と大差が有りません。私たちは、核燃(料)サイクルと言っています。
 核燃(料)サイクル
原子力発電をするために核物質(ウランやプルトニウム)が旅する道筋をこのように呼んでいます。青森県六ヶ所村で建設中・一部操業されているのは、このうちの4つの部分、ウラン濃縮工場
低レベル放射性廃棄物埋設施設
再処理工場
海外返還高レベル放射性廃棄物管理施設です。下の図の赤丸で囲んだ部分です。
核燃サイクル図

● 核燃料サイクルの全体図

核燃料サイクルの全体図は、ウラン鉱山から採掘して原子力発電で燃やす(核分裂させる)までの上流=アッパーストリームと、燃やした後の使用済み核燃料から先の放射性廃棄物の処分までの下流=ダウンストリームに分けられます。上流も下流も至る所で放射能廃棄物の処理と放射線防護対策が必要です、各々の工程で労働者は放射線障害の危険にさらされながら働き、工場の廃液・廃気の中には放射能が混じって放出されてゆきます。全ての労働者の被曝をゼロにすることも、周辺住民への被曝をゼロにするために放出をゼロにすることもできません。この各工程でいかに安全対策の経費を削減して利益を得るかが、原子力関連企業の大問題なのです。


 アッパーストリーム

概略を100万kwの原子力発電所が1年間稼動するために必要なウラン量を示しながら追ってみます。まず、ウラン鉱山で100~200万トンほども掘り出してウラン鉱石を10万トン採掘します。含有率の低いウラン残土は周囲に山積みとなり、残土にはウランやウランが崩壊して発生する放射性核種(ラドンなど)があるため放射能汚染がおきます。  採掘した鉱石を製錬して天然ウラン(イエローケーキと呼ばれる酸化物)が160トンできます。ほとんどの鉱石は鉱滓として捨てられるので、10万トンの放射性物質のボタ山ができます。  次に天然ウランを濃縮する前段処理として、転換工場でフッ素化合物の六フッ化ウラン260トンに転換します。  六フッ化ウランに転換されたものの一部が六ヶ所村の濃縮工場用として日本に輸送されてきます。この六フッ化ウランは、重金属の毒性とフッ素の化学毒性と放射能の毒、全てをもつものです。 濃縮工場では、核分裂しやすいウラン235の比率を天然ウランの0.7%から2~4%に高めます。濃縮した六フッ化ウランは41トンになります、裏を返すと残りは劣化ウランという名の放射性廃棄物として六ヶ所村に置き去りにされています。  この濃縮した六フッ化ウランを再び転換して二酸化ウランの粉末31トンにするのが再転換工場です。1999年9月に臨界事故を起こしたJCOの主業務は、この再転換です。 二酸化ウランは成型加工工場に運ばれペレットと呼ばれるセラミックス状に焼き固められます。  このペレットを燃料被覆管に収め燃料集合体として原発に運びます。これらの各工程で放射性廃棄物は必ず発生します。

下の図は放射性廃棄物を付け加えた図になっています、最初の図と少し印象が異なりますね。
核燃サイクル図2
             出典:下北半島六ヶ所村核燃料サイクル施設批判(七つ森書館)より
原子力発電所の原子炉の中でウランは核分裂をして核分裂生成物(死の灰)となり、その放射能は指数関数的に増大し、1年間冷却した後でも、桁数で5桁以上も増えています。

 ダウンストリーム

原発の定期点検では燃料交換も行われます。使用済みの核燃料は、ものすごい放射能があるため崩壊熱も多く、中性子遮蔽と冷却を兼ねて水中で行われます。そのまま原発サイト内の使用済み燃料貯蔵プールで2~数年冷却された後に再処理工場へと搬出されます。 → 再処理工場では、さらに冷却を続けたり、冷却が十分なものは切り刻んで強力な酸で溶かします。燃料棒やペレットから解き放たれた放射能ガスは排気塔から施設外へ、不活性ガスはフィルタには捕まりません。再処理とは、使用済み燃料から燃え残ったウランやウラン238が中性子を吸収してできたプルトニウム239を選り分ける事が目的です。再処理工場は基本的には化学工場ですが、プルトニウムが長崎型の原爆に使われた事でも分かるように、分離する再処理技術は軍事技術です。溶媒を用いての抽出処理などでは化学工場に付き物の爆発事故の危険もあります。そして核分裂性物質を扱うのですから核爆発(臨界事故)の危険性もあります。当然、各工程で放射性廃棄物は必ず発生します。 → 分離されたウランやプルトニウムは再び燃料に加工します。 → 原発の型式が異れば燃料も異なりますし、再処理工場も燃料の種類によって異なります。 → 使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出した後のものを高レベル放射性廃棄物といいます。 → 高レベル放射性廃棄物以外のものは全て低レベル放射性廃棄物と呼んでいます。
日本国内の原発で使用して、イギリス・フランス両国に再処理委託契約をしたもので処理した後の高レベル廃棄物が海外返還高レベル放射性廃棄物(ガラスと混ぜて固めているのでガラス固化体とも呼ばれています)です。核燃サイクルの全ての工程で放射性廃棄物は必ず発生しますから、日本がフランスなどに委託した再処理のために日本製の放射能が相手国の環境汚染の一因ともなっているのです。返還された高レベル放射性廃棄物が100%日本製とは限りません(核種の組成率が違っているので別な炉型の原子炉の物も混じっていると思われます)。 → 最後に、これらの放射性廃棄物をどこで、どのように、誰が、安全に、ほとんど永久といえる期間、子々孫々まで誰をも傷つけることなく管理できるかがあります。管理をせずに処理と名づけた埋め捨てが横行しそうです。


● 原子燃料はリサイクルできるか

再処理は放射性廃棄物の量を減らすために実施する、との考えもあります。が、原子力産業は全ての段階で廃棄物の対策が必要です、逆にいうと工程や処理を重ねるたびに放射性廃棄物は増えるのです。廃棄物対策に経費をかけると再処理費用が跳ね上がります、経済性が合わなくなるのです。事業者の宣伝にはツカッテモツカエルという新種のカエルが登場しますが、ツカッタラツカワナイ(使ったら使わない)(ワンススルー)を選択した国もあります。すなわち再処理は行わずに、経済的にペイしないから、将来どうしても再処理しなければならない時まで乾式で貯蔵管理する方式です。核兵器の解体で有り余っているプルトニウムの処理にも頭を悩ましている国ですから当然かもしれません。
全体を通じていえることは、核燃サイクルはエネルギー収支的には合わないということ。経済的にも合わない。経済原則を無視して行おうとすれば軍事利用が見え隠れします。放射性廃棄物問題を棚上げにし、非民主的な方法で強引に推し進めるのでは、周辺国から軍事利用(核兵器開発能力の温存)の目的があると見られても当然です。


六ヶ所村の施設位置関係図

施設位置関係図
                        出典:原子力市民年鑑98 (七つ森書館)より


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