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2020年1月20日月曜日

令和の「げっ歯目」

令和のげっ歯目

新年、あけての騒動は伝染する....
そんな幕開けとなった令和の新年は干支が「ネズミ」頭の黒い、ネズミの年!
「チュうチュゆ」と世界的な騒動で始まったのである。
米蔵、俵、とお米関連は、食卓にも影響、不満が募るのも無理はないと言えるでしょう。
政治、経済、文化とあまりにも多岐にわたると実感するんは、貧困ゆえに発想の転換ができない病理的な現象、「現代日本の病気」としか言いようがない。
不平不満が募る、限界に達するのは時間の問題なのかもしれません。

起源は、ねずみから...高天が原のねずみ、原子から始まる。

皇紀 二千六百八十年
庚子(かのえね、こうし)は、干支の一つ。 干支の組み合わせの37番目で、前は己亥、次は辛丑である。 陰陽五行では、十干のは陽の金、十二支のは陽の水で、相生(金生水)である。

2019年12月28日土曜日

泊原発地、周辺海域の安全確保を徹底せよ!

泊地、周辺海域の安全確保を徹底せよ!

核分裂、細胞分裂

●三つ子や四つ子の出生確率について
多胎児の出生確率は、話題として良く聞かれるものの一つです。双子の場合は出生数が比較的に多いため、統計から出生頻度を参照することが可能です。最近の日本の双生児分娩率はだいたいで1%。一卵性双生児の出生確率は世界的に0.4%程度の確率ですから、日本の二卵性双生児の出生確率は0.6%ぐらいになります(ただし、統計では卵性別の出生数を記録していません)。ところが、三つ子や四つ子の出生確率となるとかなりアバウトです。統計的に信頼できる数字を出せないということもありますが、多くの数字は何故かひどく曖昧です。これには幾つかの理由があります。とりあえず2,3の仮定をおき、三つ子と四つ子の出生確率を計算しながら考えてみましょう。まず以下の仮定をおいておきます。
1) 卵性に関わる受精卵は一定の確率0.6%(近年の二卵性双子出生率)で増える。
2) 受精卵が分裂する確率は、初回であっても複数回目の分裂であっても0.4%で一定とする。
3) バニシング等で受精卵が減少する可能性は考えない。
さて、確率計算は場合分け(パターン)を考えることが基本です。三つ子の場合、以下の図のように受精卵の分裂がパターン化されます。黒丸(●)が分裂した受精卵で、白丸(〇)が生まれてくる受精卵です。

では、一卵性の三つ子の出生確率を計算します。一卵性の場合、一つの受精卵が二つに分かれた後、どちらか一方がもう一度分裂するため、確率の「場合分け」のパターンが二つあります。確率0.4%で生じる受精卵の分裂(多胚化)が二回でそのパターンは二つと考えるため、一卵性の確率は以下のように計算されます。
一卵性 : 0.004×0.004×2= 0.000032(10万分の3.2)
二卵性の場合は、多排卵により生じた二つの受精卵の一方が多胚化するため、やはりパターンは二つ。三卵性はパターンが一つです。多排卵の確率を0.6%(二卵性双子の出生確率)とすると、それぞれの確率は以下のようになります。
二卵性 : 0.006×0.004×2パターン= 0.000048(10万分の4.8)
三卵性 : 0.006×0.006= 0.000036(10万分の3.6)
卵性を問わない三つ子の出生確率 : 三つの数字の合計 = 1万分の1.16
ここ15年ぐらいの実際の三つ子出生は1万分の1.5ぐらいですから、大きく外れてはいません(でも近くもありません)。どうして数字がズレるのかについては後述するとして、次に四つ子の出生確率を計算してみましょう。四つ子の場合は多胚化のパターンが増えますが、確率計算は基本的に三つ子の場合と同じです。



一卵性 : 0.004×0.004×0.004×5パターン = 0.00000032 (1千万分の3.2)
二卵性 : 0.006×0.004×0.004×5パターン = 0.00000046 (1千万分の4.6)
三卵性 : 0.006×0.006×0.004×3パターン = 0.000000432 (1千万分の4.32)
四卵性 : 0.006×0.006×0.006×1パターン = 0.000000216 (1千万分の2.16)
四つ子 : 0.000001448 = おおよそ100万分の1.5

実際の四つ子出生率(4出生)は、ここ15年ぐらの平均でおおよそ100万分の2.2。三つ子の出生確率でもそうでしたが、計算された数字は外れてもいませんが当たっているとも言いかねる数字です。現実の100万分の2.2の確率になるように多排卵の確率を逆算すると、(3次方程式の虚数解を除く解として)約0.8%になります。日本では自然妊娠による二卵性双生児の確率は0.2%ぐらいですが、生殖補助医療などの影響を考慮すると、これぐらいの数字で良いのかも知れません。
多排卵確率を0.8%に修正した場合、卵性別の四つ子出生率は以下のようになります。
一卵性 : 0.004×0.004×0.004×5パターン = 0.00000032 (1千万分の3.2)
二卵性 : 0.008×0.004×0.004×5パターン = 0.00000064 (1千万分の6.4)
三卵性 : 0.008×0.008×0.004×3パターン = 0.000000768 (1千万分の7.68)
四卵性 : 0.008×0.008×0.008×1パターン = 0.000000512 (1千万分の5.12)
四つ子 : 0.00000224 = おおよそ100万分の2.2

実はこの数字の修正に、多胎児の出生確率が曖昧になる原因があります。確率計算の結果は、なぜ微妙にズレた数字になるのか。実のところ、前提としている仮定で置いた数字(0.6%と0.4%)がおかしいのです。大きく二つの問題があります。




第一に、複数の排卵が生じる確率が分からないのです。遺伝的に多排卵となる体質の方がいることはわかっています。しかし、3個や4個といった数の受精卵が生じることを、独立した確率事象とみなすことができるのか?というと、答えは否です(例えば、2個の排卵が生じる可能性を1%とした場合、3個の排卵が生じる可能性を単純に0.01%と言えるのかというと、ちょっと無理です)。そもそも受精卵自体が多い場合、生殖補助医療等による人為的な原因も介在しています。また短い一定の間隔で排卵が生じている可能性もあれば、一度に複数の排卵が生じている可能性、あるいは全くのランダムという可能性もあります。この確率を一定の数値として計算すること自体がおかしいのです。
第二に、多胚化が生じた受精卵が二度目の多胚化をする場合、一度目と同じ確率で発生すると見なしてよいのか?という問題があります。受精卵が分裂する現象を、独立した確率事象と考えることが妥当なのかどうか。今のところわかっていません。もし多胚化の確率が一定なら、一卵性の六つ子が報告例としてあって良いはずですが、今のところ一卵性の多胎児は五つ子までしか報告がありません。
つまり高次の多胎児の出生確率は、計算に必要となる前提が不確かなため本来は計算すること自体が出来ないのです。

【追記(五つ子の場合)】
五つ子の場合の確率計算例です。四つ子と同じ多排卵率(0.8%)で計算します。
一卵性 : 0.004×0.004×0.004×0.004×14パターン = 3.58E-09 (10億分の3.58)
二卵性 : 0.008×0.004×0.004×0.004×14パターン = 7.17E-09 (10億分の7.17)
※一卵性の「双子+三つ子」(4パターン)&「1卵性+四つ子」(10パターン)で14パターン
三卵性 : 0.008×0.008×0.004×0.004×9パターン = 9.22E-09 (10億分の9.22)
※一卵性三つ子+2(6パターン)、一卵性双子2組+1(3パターン)の9パターン
四卵性 : 0.008×0.008×0.008×0.004×4パターン = 8.19E-09 (10億分の8.19)
五卵性 : 0.008×0.008×0.008×0.008×1パターン =4.10E-09 (10億分の4.1)
五つ子 : 3.23E-08 (1億分の3.23)
2004年-2017年の五つ子分娩件数は12です。出生率としては8.1E-07(1000万分の8.1)ですから、1億分の3.23と比べると随分とかけ離れた数字です。多排卵率を実際の数字に合わせるように逆算すると、2.63%という数字(虚数と負の解を除く)が出てきます。四つ子の0.8%と比べてもかなり高いレートでなければ、現実の数字と合いません。かといって多胎の次数毎に多排卵率を変更するなら、確率計算そのものが意味をなしません。要するに、確率計算自体ができないのです。
ちなみに、日本の年間分娩件数を100万件と考えた場合(2017年は95.6万件)、一卵性の四つ子は3~4年に一組、一卵性の五つ子は300~400年に一組ぐらいが誕生することになります。世界全体(2017年は約1.4億人)なら一卵性の五つ子が、数年に一組ぐらいのペースで生まれてもおかしくありません。しかし実際に生まれてくるケースは、せいぜい数十年に一組です。高次の多胎では「多胚化の確率」も不明であるという証左です。

2019年12月24日火曜日

福島第一原子力発電所,五輪で宇浮かれる日本!

1.福島第一原子力発電所の事故とは

東日本大震災は想定外だったという評価が聞かれます。その後の地震、豪雨などの異常気象や火山の噴火でも想定外という言葉が使われています。東京電力福島第一原子力発電所(以下福島第一原子力発電所と記載)の事故調報告書※1でも、「スリーマイル島原発事故(1979年)やチェルノブイリ原発事故(1986年)以降、東電が、国と連携して、設備と運用の両面からシビアアクシデント対策を整備してきた」とし、「今回の事故はその想定を大幅に上回るものであり、これまでの取り組みだけでは事故の拡大を防止できなかった」としています。しかし、「人と環境を放射線リスクから防護すること」を目的とする原子力安全※2に関しては想定外では済まされません。もちろん、東京電力だけでなく、今後いずれの原子力発電所においても想定外を理由とした原子力事故※3は許されません。

想定外、言い換えると想定を超える「不確かさ」に備えるために、「深層防護」という概念があり、さまざまな分野で活用されています。例えば、軍事戦略や、情報システムのセキュリティ対策など、社会への影響が甚大な分野です。原子力安全に対してはこの「深層防護」という概念を活用して、多層の防護策を組み合わせることで、全体としての防護の信頼性を最大限に向上させています。国際原子力機関(IAEA)の原子力安全の専門家による報告書INSAG-10※4では表1に示すように、防護レベルをレベル1からレベル5までの5層に設定しています。

国内においては、1992年5月28日付け原子力安全委員会決定文(ⅰ)において東電福島第一原子力発電所事故の前まではINSAG-10の分類に従えば、深層防護の第1層「異常状態の防止」、第2層「異常状態の緩和とDBA※5の防止」、および第3層「DBAの緩和とBDBA※6の防止」までを安全規制要求とする一方で、第4層「BDBAの緩和」を目的としたシビアアクシデント(SA※7)に対するハード面およびソフト面の対策を事業者の自主的取り組みとして推奨していたと理解できます。しかし、福島第一原子力発電所事故ではこの深層防護の第1層から第3層の防護策が事故後は比較的短時間しか働かず、さらに第4層のシビアアクシデント対策も有効に機能せず、防護レベルの第5層に当たるサイト外の緊急時対応に至りました。
表1 深層防護レベル
防護
レベル
目的 目的達成に不可欠な手段
プラントの
当初設計
レベル1 異常運転や故障の防止 保守的設計および建設・運転における高い品質
レベル2 異常運転の制御および故障の検知 制御, 制限および防護系、ならびにその他サーベランス特性
レベル3 設計基準内への事故の制御 工学的安全施設および事故時手順
設計基準外 レベル4 事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響緩和を含む、過酷なプラント状態の制御 補完的手段および格納容器の防護を含めたアクシデントマネジメント
緊急時計画 レベル5 放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和 サイト外の緊急時対応
出所:深層防護レベル(INSAG-10 6頁のTable 1)「原子力安全の基本的考え方について」第Ⅰ編 別冊 深層防護の考え方, AESJ-SC-TR005(ANX):2013, p.51
また、深層防護あるいは多重防護と類似した言葉として、「多重障壁」という言葉があります。原子炉の場合、5重の壁とも言われ、「ペレット※8」「燃料被覆管」「原子炉冷却材圧力バウンダリ※9」「原子炉格納容器」「原子炉建屋」の五つを指します。これらの障壁は閉じ込め機能を達成するための重要な手段であり、「人と環境を放射線リスクから防護する」目的に照らして非常に重要です。
図1 放射能を閉じ込める5重の壁
図1 放射能を閉じ込める5重の壁
出所:電気事業連合会「放射能を閉じ込める5重の壁」
http://www.fepc.or.jp/nuclear/safety/shikumi/jikoseigyosei/index.html(2019年5月20日閲覧)
深層防護と多重障壁の関係を説明した例として、IAEAの報告書INSAG-12※10があります。ここでは図2(その1)の左図のように、物理障壁と防護レベルの関係を示し、両者が共に深層防護を構成する(together constitute defence in depth)と説明しています。以降の説明では、深層防護(多重防護)の防護レベルと多重障壁とを区別するために、前者を深層防護、後者を物理障壁と記載します。
図2 深層防護の防護レベルと物理障壁の関係(その1)
図2 深層防護の防護レベルと物理障壁の関係(その1)
出所:INSAG-12を参考として三菱総合研究所作成
図2 深層防護の防護レベルと物理障壁の関係(その2)
図2 深層防護の防護レベルと物理障壁の関係(その2)
出所:INSAG-12を参考として三菱総合研究所作成 *「拡大図」は図2(その1)を示す

2.なぜ深層防護策が有効に機能しなかったのか

では、福島第一原子力発電所の事故では、なぜ深層防護策が有効に機能しなかったのでしょうか。2012年7月5日の国会事故調報告書※11では以下が要因として指摘されました。
  1. シビアアクシデント対策の対象が内部事象※12に限定され、外部事象※13(地震、津波など)、人為的事象(テロなど)を対象外とし、米国では規制対象としている長時間の全交流電源喪失※14を想定していなかった。
  2. シビアアクシデント対策が規制対象とされず、事業者の自主対策とされたため対策の実効性が乏しくなった。
  3. 規制当局が、深層防護について5 層のうち3 層までしか対応できないとの認識を持ちながら必要な措置を怠った。
  4. 9.11 テロ後、全電源喪失に対する機材の備えと訓練を義務付ける規制(通称「B.5.b」)が米国で導入された事実を知りながら、日本の規制には反映させなかった。
  5. 日本のシビアアクシデント対策について、事業者と規制当局のなれ合いの結果、対策範囲は狭く、その対応は遅れ、実効性に乏しく、国際水準を無視したものであった。

元々、2007年のIRRS※15において、S8(Sは提言(Suggestion)を意味する)として以下の指摘を受けていました。

S8: 原子力安全・保安院は、リスク低減のための評価プロセスにおいて設計基準事象を超える事故の考慮、補完的な確率論的安全評価の利用およびシビアアクシデントマネジメントに関する体系的なアプローチを継続すべきである。(ⅱ)
福島第一原子力発電所事故で深層防護策が有効に機能しなかった直接的な原因として、外部事象(地震、津波など)および長時間の全交流電源喪失に対する想定と対策が不十分であったとされていますが、特に深層防護の第4層のシビアアクシデント対策が有効に機能せず、最終物理障壁である原子炉格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能※16を維持できなかったことが事故を一層深刻なものとし、さらに、第5層のサイト外の緊急時対応の不十分さも露呈した結果となりました。

3.福島第一原子力発電所事故の教訓による新たな枠組み

福島第一原子力発電所事故の教訓から、国内外で、再稼働を目的とした原子力発電所の安全性を審査する新規制基準が策定され、その新規制基準に基づく適合性審査が行われています。図3に新たな規制の枠組みのイメージを示します。第4層および第5層の防護策が徹底的に強化されていることがわかるかと思います。
図3 新たなシビアアクシデント対策規制の枠組みのイメージ
図3 新たなシビアアクシデント対策規制の枠組みのイメージ
出所:原子力安全・保安院「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策規制の基本的考え方について(現時点での検討状況)」2012年8月27日
「原子力安全の基本的考え方について」第Ⅰ編 別冊 深層防護の考え方

4.福島第一原子力発電所の今後の廃炉に向けて考えること

福島第一原子力発電所はシビアアクシデント事故によって、ペレット、燃料被覆管、原子炉冷却材圧力バウンダリ、原子炉格納容器、原子炉建屋の閉じ込め機能という全ての物理的障壁が完全にあるいは一部損傷しています。福島第一原子力発電所の現在の状況は、事故時に揮発性の放射性物質のほとんどが放出され、残留する放射性物質は原子炉格納容器などのバウンダリ機能や建屋および周辺部の地面への飛散防止剤の散布等により一定程度の放出抑制が図られています。崩壊熱レベルも事故直後に比べ大幅に低下し、その他、未臨界維持や火災・爆発防止についても、一定の対策と監視により放射性物質の異常放出の脅威の可能性は低い状況にあります。しかし、今後予想される燃料デブリ取り出しに向けた各種の作業や工事における誤操作・誤動作等の内部事象および地震・津波などの外部事象に対して、十分に対処する必要があります。前述の通り、福島第一原子力発電所の現在の状況は通常の運転プラントとは全く異なるため、防護策も運転時とは異なりますが、深層防護の考え方に基づき、多層の防護レベルおよび防護策を講じておく必要があります。

事故炉である福島第一原子力発電所の深層防護レベルおよび防護策の一例(当社試案)を表2に示します。
なお、表2ではIAEAの報告書INSAG-10に準拠して、防護レベルをレベル1からレベル5までの5層で整理しています。
具体的には、福島第一原子力発電所の現在の状況の維持をレベル1の「異常状態の防止」とし、現状からの有意な変化を異常状態として、「異常状態の抑制」をレベル2としています。さらに、放射性物質の異常放出、異常な温度上昇、再臨界、火災・爆発などを事故として、これらに伴う放射性物質の異常放出防止をレベル3の「想定事故の緩和」とし、これらの事故を上回る事故に対する異常放出緩和をレベル4の「想定を越える事故の緩和」としています。
さらに、これらの防護策が効果的に機能せず発電所の外での緊急時対応が必要な状態をレベル5の「周辺の放射線影響緩和」として整理しました。
ここで、「異常状態」や「事故等」は運転プラントでは、運転パラメータの変化量、放射性物質の放出量や公衆被ばく量などによって定量的に定義されますが、福島第一原子力発電所に関しては現状では定量的な定義について合意されたものはありません。また、福島第一原子力発電所のような事故炉について深層防護レベルを何層とするかについても合意されたものはありません。
表2 事故炉である福島第一原子力発電所の深層防護レベルおよび防護策の例(当社試案)
防護
レベル
目的 目的達成のための
防護策の例
懸念されるリスク
レベル1 異常状態の防止
  • 放射性物質放出防止
  • 崩壊熱除去
  • 未臨界維持
  • 火災・爆発防止
  • 現状の放射性物質の保持状態の維持・監視
  • 崩壊熱除去:循環冷却設備の運転と監視
  • 未臨界維持・監視
  • 窒素供給と水素濃度監視
  • 原子炉格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能の脆弱性
  • 強風・竜巻による放射性物質の飛散
  • 屋外仮設設備の脆弱性
レベル2 異常状態の緩和
  • 放射性物質放出防止
  • 崩壊熱除去
  • 未臨界維持
  • 火災・爆発防止
  • 放射性物質の飛散・漏えいの監視と防止策の実施
  • 崩壊熱除去:温度・水位の監視と代替冷却の実施
  • 臨界近接検知と臨界防止策の実施
  • 水素濃度監視と希釈策の実施
  • 同上
レベル3 想定される事故の緩和
  • 放射性物質異常放出
  • 火災・爆発
  • 使用済燃料取扱事故
  • 異常放出の防止策の実施
    (フィルタードベントなど)
  • 崩壊熱除去:外部注水の実施
  • 臨界の終息策の実施
  • 原子炉格納容器および/または原子炉建屋のバウンダリ機能回復とその破損防止対策が必要
レベル4 想定を超える事故の緩和
  • 構造物、重機器等の損壊・落下
  • 使用済燃料の落下破損
  • テロ・サボタージュ
  • 異常放出の緩和策の実施
  • 放射性物質の拡散緩和対策(フィルタードベント、大容量泡放水砲など)
  • 同上
レベル5 周辺の放射線影響緩和
  • オフサイト緊急時対応
出所:三菱総合研究所
表2の福島第一原子力発電所の深層防護レベルおよび防護策の一例から考察されることは、防護レベルや防護策を多層化することは無論重要でありながら、最終物理障壁の原子炉格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能の脆弱性があらためて浮き彫りになることです。従って、防護レベルや防護策の多層化と最終物理障壁のバウンダリ機能強化を組み合わせ、全体として防護の信頼性を向上させることが、「人と環境を放射線リスクから防護する」目的に照らして必要であるということです。
また、原子炉建屋が損傷していることで、強風・竜巻による建屋瓦礫など放射性物質の飛散も懸念されます。さらに、原子炉建屋の屋外に設置された仮設設備の環境条件や経年変化に対する頑健性も気になるところで、これらの懸念の払拭と仮設設備の信頼性を高める観点から、原子炉建屋および仮設設備全体を覆う外周建屋の設置とそれに伴うバウンダリ機能の回復が望まれます。

従って、深層防護の考えに基づく福島第一原子力発電所の信頼性を向上させるための第一の課題は、失われた最終物理障壁である格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能をどのように回復・維持するかであり、そのための方策をできるだけ早期に具体化する必要があります。原子炉格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能回復のための検討は実施されているものの、シビアアクシデント事故により高温高圧にさらされた原子炉格納容器や水素爆発などにより損傷した原子炉建屋のバウンダリ機能の回復には非常に大きな困難が伴うと考えられます。この代替策として、各号機の原子炉建屋の外周建屋の設置、1号機から4号機全体を覆う大型原子炉建屋、さらには、発電所敷地全体を覆う発電所全体カバーなどの構想について、長期的な得失、費用対効果などを含めた総合的な検討が必要と考えます。なお、3号機で進められた使用済燃料取り出し用の原子炉建屋の一部を覆うカバー設置はその第一歩ですが、今後長期間に及ぶ廃炉作業に向けてはさらに広いカバー範囲と頑健性が必要と考えます。

さらに、地震・津波を始めとする外部事象などに対する長期健全性評価を継続的に実施し、各種の深層防護策(防護レベル・防護策および物理障壁機能)が確保されていることを確認する監視・検査方策を確立する必要があります。その上で、その後の燃料デブリ取り出しに際しては、回復した原子炉格納容器および原子炉建屋のバウンダリ機能の一部を開口することが必要となるため、開口するバウンダリ貫通部の処置(グリーンハウス化、セル化、二重化、負圧管理など)の対策を講じるとともに、各種作業に関連する防護策の有効性を評価・確認するべきです。福島第一原子力発電所の廃炉作業を着実に推進するためには、深層防護の考え方で安全対策を講じる必要があると考えます。

5.最後に

「深層防護」についてはさまざまな議論がありますが、本コラムではあえて福島第一原子力発電所廃炉作業と深層防護というテーマを取り上げました。そこには、事故後8年間が経過し、事故から得られたさまざまな教訓を風化させることのないようにとの思いがあったためです。そこで、現時点で得られている情報や知見に基づき、当社の見解として現状の課題と今後の対策の試案を示した次第です。さらに優れた今後の対応策が検討・提示されて、より安全に福島第一原子力発電所の廃炉が進められることを期待しています。
※1「福島第一原発事故と4つの事故調査委員会」 国立国会図書館 ISSUE BRIEF No.756 (2012.8.23) p.8、および東京電力(東電事故調)「福島原子力事故調査報告書」2012.6.20. pp.39-45 http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1205628_1834.html(2019年5月20日閲覧)
※2原子力安全とは、人と環境を原子力の施設と活動に起因する放射線の有害な影響から防護すること。
※3原子力事故とは、原子力関連施設での放射性物質や放射線に関係する事故のこと。
※4International Nuclear Safety Group (INSAG) Defence in Depth in Nuclear Safety, INSAG-10 June 1996 なお、深層防護に関するIAEAの最新の記載図書は、SSR-2/1 (Rev.1), Safety of Nuclear Power Plants : Design February 2016
※5DBA:設計基準事故(Design Basis Accident)。原子力施設を設計する際に、ここで想定される事故に対しては対応可能とすることが求められます。
※6BDBA:設計基準事故を超える事故(Beyond Design Basis Accident)。設計基準を超える事故のため、設計で確実に対処できるとはいえません。
※7SA:原子炉の燃料が重大な損傷を受けるなど設計時の想定を超える過酷事故(Severe Accident)。
※8ペレット:原子炉で使用する核燃料を、粉末状にした上で成型し、磁器のように焼結してセラミック化して融点を高めることで、原子炉の壁の一つ目を構成している。ウラン金属は融点が1,132℃であるが、焼結により融点を2,700~2,800℃程度まで高めている。
※9原子炉冷却材圧力バウンダリ:原子炉冷却材を内包して原子炉と同じ条件で圧力障壁を形成するもので、この圧力障壁が万一破損すると原子炉冷却材喪失事故(LOCA)となる範囲の機器、配管、隔離弁等の施設をいう。
※10International Nuclear Safety Group (INSAG) Basic Safety Principles for Nuclear Power Plants 75-INSAG-3 Rev. 1, INSAG-12 October 1999 (ここでは物理障壁としての「原子炉建屋」(第5の壁)は省略されています。)
※11「福島第一原発事故と4つの事故調査委員会」 国立国会図書館 ISSUE BRIEF No.756 (2012.8.23) p.8、および1Fの国会事故調報告書(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会「報告書」2012.7.5. pp.95-125)
※12内部事象:プラントにとって望ましくない事象が、無作為な機器故障や原子力発電所運転員の誤操作等によって生じる場合を「内的事象」と呼ぶ。
※13外部事象:プラントにとって望ましくない事象が、地震・津波や火災、航空機の墜落等の外部からの影響によって生じる場合を「外的事象」と呼ぶ。
※14発電所の外部からの交流受電、発電所内の非常用発電装置による交流電源が全て失われた状態を「全交流電源喪失」と呼ぶ。
※15「IRRS」とは、Integrated Regulatory Review Service(総合規制評価サービス)の略称で、各国の原子力規制機関等の専門家によって構成されるミッションが、IAEA 加盟国の原子力安全や放射線防護に関する各種の規制や取り組みについてIAEA安全基準との整合性をレビューする。わが国においては、2007年6月に旧原子力安全・保安院および旧原子力安全委員会が受入れを実施し、2008年3月に報告書が公表された。その後、2016年1月に原子力規制委員会が2回目のIRRSを受け入れている。ここで、原子力規制委員会は、S8の現況として「東京電力福島第一原子力発電所事故後の炉規法改正により、シビアアクシデントの発生を防止するための基準を強化するとともに、万一シビアアクシデント等が発生した場合に対処するための規制要求を新設するとともに、既設炉にも最新の基準への適合を義務づけるバックフィット制度を導入した。現在実施されている新規制基準適合性審査において、設計基準事象を超える事故の考慮、確率論的リスク評価の利用およびシビアアクシデントマネジメントを含めた体系的な審査を行っている」と説明している。
※16バウンダリ機能:軽水炉等の発電炉において、原子炉冷却材や放射性物質を含む気体などを保持するための建屋、容器および配管等の壁を総称していう言葉。発電炉設備の安全性のための一般設計基準に用いられる用語である。
i1992年5月28日付け原子力安全委員会決定文(1997年10月20日一部改正)「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」において、以下のとおりとしている。
(1)
我が国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、設計、建設、運転の各段階において、①異常の発生防止、②異常の拡大防止と事故への発展の防止、および③放射性物質の異常な放出の防止、といういわゆる多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策を行うことによって十分確保されている。(筆者注:ここでは多重防護という言葉が使用されているが深層防護と同義と理解)
(2)
あるアクシデントマネージメントが原子炉施設の設備を大幅に変更することなく実施可能であり、その実施を想定することによりリスクが効果的に減少する限りにおいて、その実施が奨励又は期待されるべきと考えられる。
iiS8に対して、国会事故調査報告書で以下が指摘されている。(1Fの国会事故調報告書(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会「報告書」2012.7.5. pp.560-563))
日本は過去IAEAによるピア・レビューを受けたが、その結果に対しても、適切な対応を怠ってきた。 ~(中略)~ IRRSを2007年に受け入れたが、現時点まで具体的な改善策が取られていない。
~(中略)~ 世界標準が遵守されていることを再チェックされる仕組みとなっているが、日本は2010年2月に受ける予定であったフォローアップ・ミッションを経産省の対応の遅れによりいまだに受けていない。
~(中略)~ このように、日本はIAEAによるピア・レビューを、自らの規制・法的枠組みの改善に用いるというよりは、保安院の独立性が確保されていることのアピールに利用したと言える。

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2019年12月20日金曜日

放射性廃棄物

放射性物質

概要

放射性廃棄物はその定義から放射性物質を含む、すなわち人間にとって有害な放射線を放出しておりその取り扱いには一般に注意を要する[4]。一口に放射性物質といっても発生源及びその性質などに応じて分類され処分方法も変わってくる[5]
日本の国内法においては、核燃料物質であるかそれ以外の発生の放射性同位元素(radioisotope:RI)であるかの違いによってその取り扱いを規定する法律は異なる。なお、日本においては、放射性廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で定義される「廃棄物」には原則として該当しない[6]。ただし、その放射性物質を含む廃棄するものの放射能のレベルがクリアランスレベル以下または規制除外対象であるなどといった場合は、法定上は放射性廃棄物とはみなされず産業または一般廃棄物として処理される。
原子力発電所から出る放射性廃棄物の場合、原子炉から取り出した使用済み核燃料[7]や、作業員が使用した衣服やこれの除染に用いた水など多岐に渡る。使用済み核燃料は一時保管した後、再処理工場に運ばれる。再処理工場からは、燃料棒の部品、また燃料棒のペレットに含まれる核分裂反応による生成物(核分裂生成物)や、湿式によるウランプルトニウムの分離抽出の過程で発生した廃液などの放射性廃棄物が発生する。発生別により、ヨウ素を閉じ込めるための廃銀吸着剤、二次廃棄物(MOX燃料施設から発生するものも含む)等の内、ウラン燃料を加工する施設から発生するウランで汚染された廃棄物は特にウラン廃棄物と呼ばれる[8]

日本における放射性廃棄物の分類

法令に基づいた分類

日本においては、法律に基づいて、放射性廃棄物は(a)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に言う放射性廃棄物[9](以下、核燃料廃棄物という)と、(b)それ以外の法律によって規制される放射性廃棄物(以下、RI廃棄物という)に大別することができる。さらにRI廃棄物は
(b-1)放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律における研究分野からのRI廃棄物(以下、研究RI廃棄物という)と、
(b-2)医療法薬事法獣医療法及び臨床検査技師等に関する法律における医療分野からのRI廃棄物(以下、医療RI廃棄物という)
に分けることができる[10]
特別措置法によるもの
平成22年度までは法的には概ね上記のように分類されていたが、平成23年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(放射性物質汚染対処特措法)が公布および施行されることとなり、その中で言う(c)特定廃棄物(指定廃棄物及び対策地域内廃棄物からなる)と呼ばれる放射性廃棄物の分類が新たに導入されることとなった[11]

IAEAの分類を参考にした慣習的な分類

日本において放射性廃棄物は、慣習的に、使用済み核燃料の再処理における溶解に使った硝酸を主とする廃液及びその固化体のみを指す高レベル放射性廃棄物(High Level Waste、HLW[12]と、それ以外のものを指す低レベル放射性廃棄物[13]の二つに分類される[14]。なお、低レベル放射性廃棄物は、その中でアルファ放射体[15]を多量に含むものはアルファ廃棄物もしくはTRU廃棄物[16]と呼ばれさらに区分される[17]

「放射性物質として扱う必要の無い物」に関する制度・概念

放射性廃棄物とは、使用済みの放射性物質及び放射性物質で汚染されたもので以後の使用の予定が無く廃棄されるものを言うが、放射線の検出は物理現象の中でも最も鋭敏に検出できるものであることから、極端なことを言えばすべての廃棄するものを放射性廃棄物とすることができる。しかし、この場合、規制の対象となるものは膨大となり、規制制度自体が機能しなくなることにつながる。
このように、放射線防護に関する規制の枠組みの中にある放射性物質であっても、その規制自体をうまく機能させるためには、その量が微量であり人の健康に対する影響が無視できる、または規制をしても効果がほとんどないなどといった場合は、それを放射性物質として扱う必要の無い物としてその規制の枠組みから外しても良いという制度や概念が必要となる。
放射性物質を含んでいて廃棄するものであっても、それら制度や概念を適用することにより条件によって放射性廃棄物として規制外となれば、例えば廃棄物処理法でいう「廃棄物」として埋設処分するなど[18]といったことができるようになる。

クリアランス(clearance)または規制免除(exemption)

人工放射性物質に起因する被曝線量が「自然界の放射線レベルと比較して十分小さく」また「人の健康に対するリスクが無視できるものである」ならば、規制の枠組みから外しても良いという考え方をクリアランス(clearance)と呼ぶ[19]。また、放射性物質として扱う必要のないものを区分するレベルをクリアランスレベル(clearance level)と呼ぶ[20]
クリアランス制度が適用される放射性物質を含むものは、その定義より人の健康に対するリスクは無視できる程度であると言うことができる[21]
日本においては1997年から原子力安全委員会は、IAEAの技術文書[22]に示されたクリアランスレベル算出の考え方に基づき、発電用原子炉(軽水炉、ガス炉、試験研究炉)などを対象として委員会報告書をとりまとめた[23][24]

規制除外(exclusion)

自然放射性物質[25]による被曝のように「規制が不可能で規制のしようがない」または「規制をしても効果がほとんどない」ならば、規制の対象にしないことを規制除外(exclusion)と呼ぶ[26]
規制除外廃棄物は、その定義から規制の対象とはならないが、かといってクリアランス制度の対象とは限らないので人の健康に対するリスクが無視できる程度の廃棄物とは言い難い。

核燃料廃棄物の処理・処分

核燃料廃棄物は、便宜上その発生源に応じてさらに次のように分類される[27]
発電所廃棄物:原子力発電所の運転、保守、解体に伴って発生する廃棄物をいう[28]
高レベル放射性廃棄物:使用済み核燃料の再処理における溶解に使った硝酸を主とする廃液及びその固化体をいう。
TRU廃棄物MOX燃料加工や使用済み核燃料再処理の運転・保守の結果発生する超ウラン元素(TRU)で汚染された廃棄物をいう[29]
研究所等廃棄物:発電所ではなく、大学や研究機関の研究開発活動において核燃料物質で汚染された廃棄物をいう。
このうち、人の健康に重大な影響を及ぼすおそれがある高レベル放射性廃棄物と極めて長寿命核種からなるTRU廃棄物は、深い地層への地層処分(第一種廃棄物埋設)が計画されている。ほか、発電所廃棄物については、それらの物性により三段階の地表近くの処分がされることとなっている[30]

第二種廃棄物埋設:低レベル放射性廃棄物の処分方法

低レベル放射性廃棄物の処分(第二種廃棄物埋設)には余裕深度処分浅地中ピット処分浅地中トレンチ処分の三つの処分方法がある[31]。トレンチ処分を除く処分はいずれも遮断型処分ではあるが、人工構造物(人工バリア)による完全な放射能の遮断を管理期間中継続させることは困難である。放射能の漏洩による影響を最小限にするために場所(地質・地層、水脈など)および地中深度などが考慮され処分基準となっている。

余裕深度処分

一般的であるとされる土地利用(住居などの建設)や地下利用(地上の構造物を支持する基盤の設置、地下鉄、上下水道、共同溝や地下室としての利用など)に対して十分に余裕を持った深度(地下50〜100メートル程度)に、コンクリートでトンネル型やサイロ型の人工構築物を作り、廃棄物を埋設する方法を余裕深度処分と呼ぶ。シュラウド[32]、チャンネルボックス[33]、使用済み制御棒など主に原子炉の廃止措置に伴って発生する放射能レベルが比較的高いものが対象となる[34]。管理期間は数百年。処分・管理方法等については調査中である。
日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターにて次の三号施設として調査中。

浅地中ピット処分

浅い地中(地下約10メートル)にコンクリートピットなどの人工構築物を設置し廃棄物を搬入後、その構築物ごと埋設する方法を浅地中ピット処分と呼ぶ。濃縮廃液や使用済みイオン交換樹脂、可燃物を焼却した焼却灰などをセメントなどでドラム缶に固形化したものなど、主に原子力発電所から排出される放射能レベルの比較的低いものが対象となる[35]。埋設後の管理期間は300〜400年が一つの目安とされている。
日本原燃六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで一号・二号施設が1992年より稼働している。

浅地中トレンチ処分

浅い地中に素掘りの溝、つまりトレンチ(trench)を掘り、そこにそのまま(人工構築物は設けない)廃棄物を定置することにより埋設処分を行う方法(いわゆる単純な埋め立て)を浅地中トレンチ処分と呼ぶ。コンクリートや金属など、化学的、物理的に安定な性質の廃棄物のうち[36]放射能レベルの極めて低い極低レベル放射性廃棄物が対象である[37]。50年程度の管理期間を経たのち、一般的な土地利用が可能になる[38]
動力試験炉(JPDR)の解体に伴って発生した廃棄物を処分するために、日本原子力研究開発機構東海研究開発センター原子力科学研究所・廃棄物埋設施設にて1995年より試験的に実施されている。

第一種廃棄物埋設:高レベル放射性廃棄物等の処分方法

核燃料廃棄物の内、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物は地層処分(第一種廃棄物埋設)されることとなっている。特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律に基づき原子力発電環境整備機構(NUMO)が実施主体となって処分する。
なお、高レベル放射性廃棄物の処分については様々な方法が検討された。海洋投棄(かつて各国で実施されたが1993年に全面禁止)、地上施設による長期保管(未実施、ただし一時的な中間貯蔵施設は除く)、氷床処分(禁止)、宇宙処分(大気圏外にロケットで打ち上げ太陽系の引力圏外に放出する、もしくは太陽の重力に引き寄せさせる方法。かつて米が検討したがコストと不確実性から不採用)、地中直接注入(米、ソが実施)[39]などが検討され、このうち海洋投棄と地中直接注入処分は実施された[40]。21世紀初頭においては地中埋設処分が各国で採用されている。

RI廃棄物の処理・処分(研究施設等廃棄物の処理・処分)

原子力施設や核兵器関連施設以外にも、原子力の研究施設や大学、医療分野や民間産業分野、農業分野などでも放射性物質を使用する場合があるので、放射性廃棄物は発生する。
RI廃棄物に含まれる代表的な放射性核種は、研究RI廃棄物としては 3H、14C、32P、35S などであり、医療RI廃棄物としては、99mTc、125I、201Tl などである。RI廃棄物(研究RI廃棄物および医療RI廃棄物)の大部分はRI協会が集荷し貯蔵している[41]。RI廃棄物等の処分については、2008年に処分実施主体が日本原子力研究開発機構に決まり、法律も改正されることとなった[42]

放射性物質汚染対処特措法に規定される特定廃棄物等の処理・処分

東京電力福島第一原子力発電所の事故により大気中に放出された放射性物質による環境の汚染が生じることとなった。これによる人の健康または生活環境に及ぼす影響を速やかに低減するため、平成23年8月30日にいわゆる放射性物質汚染対処特措法が公布された(平成24年1月1日に全面施行)[43]
この特措法に基づき、環境大臣が指定を行う、事故由来放射性物質による汚染状態が8,000 Bq/kg を超える廃棄物は指定廃棄物と呼ばれる。その処理にあたっての環境への影響については、1都15県のごみ焼却施設についてデータを収集・分析したりなどした上で、国立環境研究所[44]によって確認されている[45]

脚注

  1. ^ 長崎・中山(2011) p.4
  2. ^ 原子力発電所および核燃料製造施設、核兵器関連施設などから排出される
  3. ^ 病院の検査部門から出るガンマ線源の廃棄などで排出される。
  4. ^ 放射性廃棄物を含め、放射性物質はある程度の時間(半減期)が経過すると放射能が弱くなり、やがては大部分が安定した物質に変化する性質を持つ。半減期と単位時間当たりの放射線量は反比例し、半減期の長い物質は単位時間当たりの放射線量は少ない。半減期は放射性核種により異なる。
    放射性物質の中には、半減期が極めて長いものも存在する。放射性物質の量は半減期を経過すると元の半分になるが、残った放射性物質がさらに半分(つまり元の1/4)になるのにも、同じだけの期間が掛かる。たとえば、半減期が約12年であるトリチウムの場合、24年後に崩壊が終わり消失するわけではない。12年後に元の量の50%、24年後に25%、36年後に12.5%…と量が減り限りなくゼロに近づくのみで、同時にトリチウムが崩壊してできる安定同位体、ヘリウム3が生成されていく。ウラン等の原子番号の大きい物質は、崩壊後の物質も放射性物質(娘核種)になるため、含まれる全ての放射性元素が崩壊を終え、鉛などの安定同位体に落ち着くまでは、非常に長い期間を要するものもある。
  5. ^
    放射性廃棄物の区分と処分方法
    廃棄物の種類 廃棄物の例 発生源 処分方法
    高レベル放射性廃棄物 ガラス固化体 再処理施設 地層処分
    低レベル
    放射性
    廃棄物
    高レベルの物 制御棒、炉内構造物、
    放射化金属
    原子力発電所 余裕深度処分
    低レベルの物 廃液、フィルター、廃器材、
    消耗品等を固形化
    浅地中ピット処分
    レベルの極めて低い物 コンクリート、金属等 浅地中トレンチ処分
    超ウラン核種を含む廃棄物
    (TRU廃棄物)
    燃料棒の部品、
    廃液などプロセス廃棄物、
    フィルター
    再処理施設
    MOX燃料加工施設
    特性に応じトレンチ処分以外の3段階
    ウラン廃棄物 消耗品、スラッジ、廃器材 ウラン濃縮
    燃料加工施設
    特性に応じ全4段階の処理
    研究所廃棄物
    大学・企業等
    研究機関
    放射性同位体(RI)
    廃棄物

    医療機関等
    放射性廃棄物の処分方法
    処分方法 廃棄物の例 封入容器 人工構造物 深度 管理期間
    地層処分 高レベル放射性廃棄物
    およびTRU廃棄物
    ガラス固化体キャニスター 多重人工バリア
    鉄筋コンクリート構造物
    300m以深 数万年以上
    余裕深度処分 制御棒、炉内構造物
    放射化金属および加工・再処理における
    プロセス廃棄物等
    200リットルドラム缶等 鉄筋コンクリート構造物 50~100m 数百年、
    管理内容未定
    浅地中ピット処分 廃液、フィルター
    廃器材、消耗品等
    セメント等で固化した廃棄物を入れた
    200リットルドラム缶等
    鉄筋コンクリート構造物 十数m 約300年
    浅地中トレンチ処分 ンクリート、金属等 廃棄物のまま 人工構造物無し
    約50年
  6. ^ 廃棄物処理法第二条一項
    (定義)
    第二条  この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。
  7. ^ 日本においては使用済み核燃料は再処理の方針により廃棄物には分類されないが、再処理の方針をとらない国では高レベル放射性廃棄物に区分される。
  8. ^ 軍事分野では、同様の廃棄物として、核兵器製造過程で生じた廃棄物や、耐用年数を過ぎ廃棄処分となった核兵器、耐用年数を過ぎ廃艦処分となった原子力潜水艦原子力空母などがある。
  9. ^ 法律本体では「放射性廃棄物」ということばは使われておらず、「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物」で「廃棄しようとするもの」という言い回しで示されている。
  10. ^ 取扱い(1994) p.3、1.RI・研究所等廃棄物を巡る状況(文部科学省)長崎・中山(2011) p.29
  11. ^ 放射性物質汚染廃棄物とは
    なお、それぞれの定義条文は以下のとおり
  12. ^ IAEAの分類とは異なり、再処理廃液及びその固化体と同等の強い放射能を有する放射性廃棄物は含まれない。すなわち、高レベル放射性廃棄物はすべて核燃料廃棄物である。
  13. ^ 高レベル放射性廃棄物以外の放射性廃棄物が低レベル放射性廃棄物ということである。すなわち、ほとんどすべての放射性廃棄物は、その放射能の強度に関わらず、低レベル放射性廃棄物にあたる。
  14. ^ 土井(1993) p.42
  15. ^ アルファ線を放出する核種
  16. ^ 超ウラン元素(TRans-Uranium)を多量に含む放射性廃棄物をTRU廃棄物と呼ぶ。
  17. ^ 土井(1993) p.42
  18. ^ 当然、資源としてリサイクルできるのであれば再利用する。
  19. ^ 長崎・中山(2011) p.66
  20. ^ クリアランスによりリサイクルされるものは一般社会に流通されることになるため、クリアランスレベルは国によって大きく異なることのないよう、国際的な整合性が必要であることから、国際原子力機関(IAEA)及び欧州委員会(EC)を中心にクリアランスレベルの検討が進められている。 長崎・中山(2011) p.66
  21. ^ 例えば、放射性セシウム(セシウム放射性同位体)であれば、そのクリアランスレベルは1kgあたり100 Bq(0.1Bq/g)である。
  22. ^ TECDOC855(1996)
  23. ^ 原子炉クリアランス(1999)
  24. ^ ウラン取扱施設のおけるクリアランスレベル以下の廃棄物は、平成62年度末(2051年3月末)には約10万トン、その内7.9万トンは金属と想定されている。(福島原発事故による廃棄物は含まれていない)これらの金属の発生源はウラン濃縮工程の遠心分離機や燃料加工施設の焙焼・還元装置、成形加工装置、焼結装置、研削機械などである。金属の再利用の際の溶融では、放射性核種の内超ウラン元素は99.4~99.8%がスラグへ濃縮されると報告されている。例外はMn54、Fe55、Co60、Ni63、Zn65(ガスとインゴットで半々)、Nb94等でこれらの同位元素は大半がインゴットに残留する。
    原子力安全委員会:「クリアランスレベル以下の金属廃棄物」 閲覧2011-11-21
  25. ^ NORM : Naturally Occurring Radioactive Materials と呼ばれる。なお、NORMのうち人為的に濃度が高められた自然放射性物質はTENORM(Technologically Enhanced NORM)と呼ばれる。 長崎・中山(2011) p.67
  26. ^ 長崎・中山(2011) p.67
  27. ^ 長崎・中山(2011) pp.6-7, pp.28-29
  28. ^ 例:放射線管理区域などで中性子を吸収して放射化されたものや、炉心付近の資材、廃止措置が取られた発電所の解体に伴う廃棄物など
  29. ^ 例:再処理工場から発生する核燃料被覆管(ハル)、使用済燃料構造部材の端末部分(エンドピース)など
  30. ^ 日本原燃「低レベル放射性廃棄物の処分方法」
  31. ^ 核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則の第一条の二にてそれぞれ定義されている。
  32. ^ シュラウド(shroud)とは、沸騰水型原子炉の炉内構造物の一つで、炉心部を構成する燃料集合体や制御棒を内部に収容する円筒状の構造物を言う。
  33. ^ 燃料集合体を覆っている金属製の角筒をチャンネルボックス(channnel box)と呼ぶ。
  34. ^ 長崎・中山(2011) pp.128-130
  35. ^ 長崎・中山(2011) p.127
  36. ^ すなわち、放射能レベルが極めて低い廃棄物の中でも有害な化学物質を含むものは対象外である。
  37. ^ 長崎・中山(2011) p.126
  38. ^ ATOMICA「トレンチ処分」
  39. ^ 地中直接注入 (Direct injection) とは、液体もしくは粉体を混ぜた流体の放射性廃棄物を、処分に適した地中に高圧で注入する処分方法である。1957年にソ連が調査を開始し、深度400メートルと1400メートル砂岩層、石灰岩層へ40年に渡り数千万立方メートルの低レベルから高レベル放射性廃棄物を注入処分した。アメリカでも、1970年代に10年間に渡りテネシー州のオークリッジ国立研究所の地下300メートルに7500立方メートルの低レベル放射性廃棄物が注入処分したが、環境汚染への懸念から中止した。高レベル放射性廃棄物の処分も検討されたが、これも汚染への懸念から計画は断念された。
    世界原子力協会 “Storage and Disposal Options”
  40. ^ 世界原子力協会 “Storage and Disposal Options”
  41. ^ 長崎・中山(2011) p.28
  42. ^ 独立行政法人日本原子力研究開発機構法の一部を改正する法律
  43. ^ 放射性物質汚染廃棄物とは(環境省)
  44. ^ 国立環境研究所は従来より東日本大震災の被災地支援のための研究・支援を重点的に行っている。災害環境研究への取り組み
  45. ^ 概要版 p.3

参考文献

全般
  • 長崎 晋也、中山 真一(共編)『放射性廃棄物の工学』オーム社〈原子力教科書〉、2011年。
  • 広瀬 研吉『わかりやすい原子力規制関係の法令の手引き』大成出版社、2011年。
核燃料廃棄物
RI廃棄物(研究施設等廃棄物)
特定廃棄物(指定廃棄物、対策地域内廃棄物)
「放射性物質として扱う必要の無い物」に関する制度・概念

関連項目

関係組織・団体

外部リンク

全般
RI廃棄物(研究施設等廃棄物)
放射性物質汚染対処特措法に規定される特定廃棄物
その他