2012年5月1日火曜日

核融合エネルギー

核融合エネルギーの実現を目指した研究開発が現在進められていますが、将来の核融合発電では、燃料に水素の仲間である重水素と三重水素(トリチウム)を使います。三重水素は半減期が約12年の放射性物質で、弱いベータ線(電子)を発生します。これらの燃料をプラズマ状態にして核融合反応により燃焼させると、
   重水素+三重水素->核融合反応->ヘリウム+中性子
により、ヘリウムと放射線である中性子が発生します。 
 核融合発電では、この発生した中性子の持つエネルギーを熱に変えて発電します。中性子は燃焼している時だけ発生し、燃焼しているプラズマを取り囲むように設置したブランケットと呼ばれる機器の中で、媒体を介して発生した中性子のエネルギーを効率よく熱に変換し、中性子は消滅します。この媒体の熱を装置の外に取り出して、さらに水と熱交換し、タービンを回して発電します。 
 核分裂を利用したいわゆる原子力発電では、燃料に放射性物質であるウラン235(半減期が約7億年)を使います。燃料のウラン235に中性子が当たると、ウラン235は分裂して様々な種類の原子に分かれると共に中性子が発生します。分裂でできた原子を核分裂生成物と呼びますが、核分裂生成物の多くはヨウ素131(半減期が約8日)、セシウム137(半減期が約30年)といった放射性物質です。
 原子力発電の場合は、中性子のほかに、核分裂生成物からアルファ線、ベータ線、ガンマ線といった放射線が発生します。こういった様々な放射線および燃料や核分裂生成物を閉じ込めておくために、原子炉は何重もの遮へい構造を設けています。 
 放射線の性質はその種類によって変わりますが、一般的には、アルファ線(ヘリウムの原子核)は、サイズが大きいので紙1枚程度で遮蔽できます。ベータ線(電子線)は、厚さ数mmのアルミニウム板で防ぐことができます。三重水素はベータ線を出しますが、そのエネルギーは低いため皮膚の表面で止まります。ガンマ線(X線)は電磁波で透過力が強く、遮へいするためには、コンクリートであれば50cm、鉛では10cmの厚みが必要です。電磁波のため、金属で効率よく遮へいされます。中性子線は電荷をもたない粒子のため透過力は強いのですが、水やコンクリート、パラフィンなどに含まれる水素原子によって効率よく遮へいされます。 
 なお、核融合発電の燃料である三重水素の半減期は約12年で、ご質問にあるような500年ではありません。

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