2011年12月17日土曜日

天孫降臨

熱中性子炉

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原子力工学における熱中性子炉(ねつちゅうせいしろ、: thermal-neutron reactor)とは、主に熱中性子によって核分裂連鎖反応を維持する原子炉を言う[1][2]。水(軽水重水)または黒鉛などの減速材を必要とする。

概要


減速材
燃料棒
制御棒
或る燃料棒中で発生した高速中性子は減速材中で減速し熱中性子と呼ばれる状態へ変化した後、他の燃料棒へ達する。
原子炉内の核分裂連鎖反応に伴って放出される核分裂中性子は平均約2MeVもの運動エネルギーを持つ速い中性子である[3]が、235U はこのようにエネルギーが高い中性子に対しては核分裂はし難い。ところが、中性子のエネルギーが「熱中性子」と俗称される0.03〜0.3[eV]にまで落ちてくると235U は、100〜1,000倍核分裂しやすくなるという特徴がある[4]
そのため、効率的な原子炉を作るには核分裂中性子をそのまま使うのではなく、他の原子核に繰り返し衝突させることでエネルギーを失わせた熱中性子を用いて核分裂連鎖反応に使った方が良い。とくに熱中性子による核分裂連鎖反応を維持する原子炉は熱中性子炉(thermal-neutron reactor)と呼ばれる。
なおここで、中性子からエネルギー失わせることを減速(moderation, slow down)と呼び、減速をさせる物質を減速材(moderator)と呼ぶ。

減速材の種類による炉型の分類

熱中性子炉に分類される炉型としては以下の三つがある[5]
軽水減速炉(light water moderated reactor)
一般に軽水炉と呼ばれる。普通の水を減速材として使用する炉を言う。この場合、軽水は冷却材としての役割も果たす。
重水減速炉(heavy water moderated reactor)
一般に重水炉と呼ばれる。重水を減速材として使用する炉を言う。冷却材としては重水を用いる場合と、軽水などの材料を使用する場合がある。
黒鉛減速炉(graphite moderated reactor)
一般に黒鉛炉と呼ばれる。黒鉛を減速材として使用する炉を言う。冷却材としては、炭酸ガスヘリウムなどの気体を使用する場合が多い。

比較

熱中性子炉に分類される軽水炉と、高速中性子炉に分類される高速増殖炉との比較表を以下に掲載する[6]

分裂に寄与
する中性子
燃料 減速材 冷却材 転換比
高速増殖炉 高速中性子 プルトニウム約16~21%
劣化ウラン約79~84%
なし ナトリウム 1.2
軽水炉 熱中性子 ウラン235約3~5%
ウラン238約95~97%
軽水 軽水 0.6
尚、上の表の転換比とは消費される核分裂性物質と、生成される核分裂性物質との比であり、1を超えると増殖率と呼ばれる[7]。高速増殖炉では燃えた量よりも多くのプルトニウムを得ることが出来るため核分裂炉の完成型等と呼ばれる事がある[8]。熱中性子炉の場合は転換比は1を超えることのできない設計となっているため増殖炉とすることは出来ない。また、冷却材にナトリウムを用いる高速増殖炉は、冷却材の温度を現在世界の発電炉の80%以上を占める軽水炉よりも200℃程度上げる事が出来るため、熱効率が高くなるという利点もある[9]。ただ、高速増殖炉において冷却材にナトリウムを用いる場合、ナトリウムの化学的活性が強いため多くの技術的な問題がある事[9]等から熱中性子炉が多く用いられている。

脚注

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  1. ^ 用語辞典(1974) p. 247 『熱中性子炉』
  2. ^ 臨界状態(遅発臨界)は遅発中性子によって維持される。 用語辞典(1974) p.205『遅発中性子』
  3. ^ ATOMICA 熱中性子炉
  4. ^ 石川(1996) pp.12-13
  5. ^ 以下の炉型の説明については安(1980) p.43に基づいた。
  6. ^ ATOMICA 原子炉の比較 - 2011年1月20日閲覧
  7. ^ 出典は参考文献P62より
  8. ^ ATOMICA 高速増殖炉 - 2011年1月20日閲覧
  9. ^ a b 出典は参考文献P64より

参考文献

  • 鈴木穎二著『核エネルギーの世界』東京電機大学出版局、昭和61年11月30日第1版第1刷発行
  • 安 成弘『原子炉の理論と設計』東京大学出版会〈原子力工学シリーズ〉、1980年。
  • 石川 迪夫『原子炉の暴走』日刊工業新聞社、1996年、第2版。
  • S.グラストン, M. C. エドランド『原子炉の理論』伏見康治, 大塚 益比古訳、1955年。
  • 村主 進(編著)『原子炉安全工学』日刊工業新聞社、1975年。
  • 石川 迪夫『考証 福島原子力事故 炉心溶融・水素爆発はどう起こったか』日本電気協会新聞部、2014年。
  • 『図解 原子力用語辞典』原子力用語研究会(編)、日刊工業新聞社、1974年、新版。

関連項目

外部リンク

首相「原発事故収束」を宣言


首相「原発事故収束」を宣言 ステップ2達成、廃炉作業へ

2011.12.16 22:24 防犯・防災
記者会見で福島第1原発事故に関して「原子炉は冷温停止状態に達し、ステップ2が完了すると宣言」と表明する野田佳彦首相=16日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)
記者会見で福島第1原発事故に関して「原子炉は冷温停止状態に達し、ステップ2が完了すると宣言」と表明する野田佳彦首相=16日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)
 東京電力福島第1原発事故で野田佳彦首相は16日、「原子炉は冷温停止状態に達し、事故そのものが収束に至ったと判断できる」と記者会見で述べ、事故収束の工程表「ステップ2」の完了を宣言した。今後は避難住民の帰宅や、廃炉に向けた作業が本格的に始まる。
 原子炉が一定の安定状態になることを意味する冷温停止の達成はステップ2の最大目標で、政府は年内達成を掲げていた。
 政府の原子力災害対策本部によると、1~3号機の原子炉圧力容器下部の温度は約37~67度(16日現在)と100度を下回った。原発から放出されている放射性物質(放射能)の量は毎時約0.6億ベクレルで、事故直後の約1300万分の1まで減少。原発敷地境界の被曝(ひばく)線量は年間0.1ミリシーベルトで、目標の1ミリシーベルト以下を達成した。原子炉の注水が約12時間停止しても敷地境界の被曝線量は1ミリシーベルトを下回ると評価した。
 同本部は「不測の事態が起きても、原発敷地境界の被曝線量が十分低い状態を維持できる」として、「発電所の事故そのものは収束に至った」と結論づけた。
 ステップ2達成は避難した住民の帰宅の条件でもあり、今後、計画的避難区域や警戒区域の本格的な見直しが始まる。野田首相は会見で、「避難指示区域の見直しについて政府の考え方を近く示す」と述べた。
 政府は「年間線量が50ミリシーベルト以上で帰宅が困難な区域」「20ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満の居住制限区域」「20ミリシーベルト未満の解除準備区域」-の3区域に、警戒区域を再編する見通し。土地の買い上げも検討されている。
 また、野田首相は除染作業などへの対応について「当面の費用として1兆円を超える額を用意している。作業要員などに来年4月をめどに3万人以上を確保する」と述べた。

2011年12月10日土曜日

東日本大震災 動画特集


ホーム 東日本大震災 動画特集
 福島県警は東日本大震災が発生した3月11日夕から14日午後にかけ、県警ヘリコプターで撮影した浜通りの映像を発表した。
 津波で浸水し、土台だけになった住宅地をはじめ、太平洋側に引き潮が流れる様子、いわき市久之浜町で住宅が炎上している様子などが映っている。
いわき市平沼の内~夏井川河口~四倉~四倉新港~蟹洗温泉~久ノ浜(火災)~広野火発~楢葉町~木戸川~第二原発

南相馬市鹿島区~松川浦~磯部地区~鹿島球場~南相馬火発~南相馬市鹿島
南相馬市鹿島区~南相馬警察署~原町火発~小高~浪江
第一原発~広野火発
鹿島区北海老~原町火発~第一原発~原町火発火災

2011年12月5日月曜日


★阿修羅♪ > 原発・フッ素18 > 865.html  



日本中がくまなく汚染される“福島の海産物が産地偽装して流通”と・・(広河隆一氏)
http://www.asyura2.com/11/genpatu18/msg/865.html
投稿者 尚林寺 日時 2011 年 12 月 04 日 11:47:33: JaTjL5JPya4go
http://blogos.com/blogger/blogos/article/
12月1日、フォトジャーナリスト・広河隆一氏が都内で記者会見を行なった。主催したのは自由報道協会。1986年に原発事故を起こしたチェルノブイリを何度も訪問して、取材を続けてきた経験を元に、今回の福島第一原発の事故による被曝問題について語った。
  チェルノブイリで被曝した犠牲者の墓や、後遺症に悩む子供たちの姿が次々とスライドで映し出され、会場の記者達は息を飲む場面もあった。広河氏はチェルノ ブイリ周辺と同様に、日本でも「放射性物質に汚染された食品が産地偽装をする形で流通している」と驚くべき警告をした。詳しい記者団とのやり取りは以下の 通り。
―311の震災が起きるまでは、安全神話の元で放射性物質は集中管理されてきましたが、(原発事故で)一旦ばらまかれた放射性物質 をどう管理するのかという政府の方針が定まっていません。ガレキの処理と称して放射性物質を引き取らせるようなこともあるやと伺っています。チェルノブイ リでは放射性廃棄物をどのように処理していたのか、お聞かせください。
広河氏:大体、汚染された立ち入り禁止区域の中に、埋めるという処理 をするわけです。建物にしてもそのまま残しておくと、火災になった場合に濃縮された放射能が拡散する事態になるのを恐れる。それと、中の物を盗み出して、 汚染地であることを隠して売るなんて人間も多くいるそれを避けるためです。そのために、立ち入り禁止区域を設けて、柵の中には「許可証がないと入れない」 という風になっております。
ただ、ベラルーシとウクライナはああいう風に当初から「危険地域だ」と指定されることに反対する勢力もありまし て、それは危険地域と設定してしまうと、逃げる先の住居から仕事場から用意しないといけなくて経済的にも大変ということで、「何とかして安全地域に変えた い」という気持ちがあったようです。それは除染によっては変わらない。
だから、「安全安心」とするための閾値をどんどん上げてしまっている。汚染がひどくて立ち入りが禁止されていたところを、どんどん開放していく傾向があります。それは、ベラルーシとウクライナの両国で原発を建設しようという動きが絡んでいるということですね。
廃 棄物の処理に関しては、食べ物はミルクなんかのある程度のセシウムがあると、廃棄されます。しかし、大体の汚染された物は、別の大きな町に持ち出されて、 汚染されてない物と混ぜ合わせて、(放射線の)平均のベクレル値を下げて販売されるというやり方が、長い間、行われてきました。そうでもしないと、食べる 物がなくなってしまうという状態がありました。
日本でも今は、産地を偽装して売るということになってます。福島の海産物が夜に名古屋まで運 ばれていって、名古屋の市場で安い値段で卸されて業者が買い付けして、関西圏に出回っているということが実際に行われているようです。それは噂としてでは なく、実際にやってる人の親戚から聞いた話です。これからは食べ物によって、福島だけでなく日本中がくまなく汚染される事態になりつつあります。数年後に は福島県の女性の母乳の放射能の値と、九州の女性の値も変わらなくなってくるんじゃないかと思います。
―福島の海産物が名古屋まで運ばれているとのことですが、これを広河さんが信頼できる情報と判断された理由は何でしょうか?
広 河氏:僕もその後、調べている途中ですので、それ以上のことは分らないんです。ただ、一回限りのことではなくて、仕事としてやってると。アルバイトで働い てる人の親戚から聞いた話です。そういう話は、海産物に限らず、他の作物でもおそらくまかり通っているはずです。どこでいつ起きたかという事実関係を発表 するまでには、本人に会って調べたいと思っています。ただし、これは単なる噂ではなく、働いている人の親族の方の話から聞いた話ですから、信頼性が確かだ ということです。
―価格があまりにも安いということもあるんでしょうか?
広河氏:「非常に安い」ということを聞きつけて、(被災地の産品だと)分っている人達が買い付けにくるようですね。

 

2011年11月11日金曜日

核燃料サイクル


核燃料サイクル

核燃料サイクルの概要
核燃料サイクル(かくねんりょうサイクル)とは、核燃料にかかわる核種および資源の循環を指す。 狭義には核燃料物質特有の核種変換系統を、広義には商用炉を中心とする原子炉用核燃料の製造から再処理と廃棄(核燃料リサイクル原子燃料サイクルとも言う)を意味する。
多くの場合、ウラン235を巡る後者の意味で用いられ、鉱山からの鉱石天然ウラン)の採鉱精錬同位体分離濃縮燃料集合体への加工、原子力発電所での発電、原子炉から出た使用済み核燃料を、再処理して、核燃料として再使用できるようにすること、および放射性廃棄物の処理処分を含む、一連の流れのことである。 鉱山からの鉱石の採鉱から核燃料への加工までをフロントエンド再処理以降をバックエンドと分けることもある。

目次

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概要 [編集]

F1 ウラン鉱石
F2 ウラン精鉱(イエローケーキ)
F3 UF6六フッ化ウラン
F4 燃料ペレット
F5 検査中の燃料棒
B1 冷却中の使用済み燃料
B2地層処分の概念
B3核廃棄物隔離試験施設WIPP施設概要 New Mexico, USA
B4 地層処分 核廃棄物隔離試験施設(Waste Isolation Pilot Plant)

フロントエンド・サイクル [編集]

ウランは地球上の地殻や海水中に広く分布しており土壌には平均2~4ppm(おもな分布範囲は0.7~11ppmで農地ではリン酸系の化学肥料の使用により最大15ppm)、海水中には0.003ppm含まれると推定されており、その総量は銀の40倍、スズと同量におよぶ。その内、確認可採埋蔵量は547万トンで可採年数は60~80年と推定されている。(エネルギー庁の試算2007年時点でキロあたり130USドルの採掘コストで。2007年度のウランの世界需要は約7万トン、2010年度のウランの平均スポット価格は44ドルであった。) 鉱床のある主な資源国はオーストラリア、カザフスタン、ロシア、南アフリカ、カナダ、アメリカ、ナミビア、ブラジルなど石油のような極端な資源の偏在性はない[1]
  • 採鉱(Mining)
ウラン鉱床は露天および地中にあり他の鉱物と同様に採掘される。溶媒抽出法(ISL In-situ leaching)と呼ばれる採掘方法も実用化されている。
  • 精錬(Milling)
採掘されたウラン鉱石は粗製錬工場で粉砕・選鉱されウラン含有率を60~75%ぐらいまで高められる。この粉体をウラン精鉱(イエローケーキ)と呼び八酸化三ウラン(U3O8)の含有量で値決めされる。イエローケーキはドラム缶に詰められて転換工場へ出荷される。
  • ウランの転換(Uranium conversion)
イエローケーキは転換工場で処理され六フッ化ウラン(UF6)となる。これは48Yシリンダー(直径約1.4m、長さ約3.8mの鋼製円筒容器)と呼ばれる輸送容器に封入されて濃縮工場に出荷される。
  • 濃縮(Enrichment)
六フッ化ウラン(UF6)は濃縮工場でウラン235の比率(濃縮度)を0.7%から3~4%(核燃料グレード)へ高められる。(核兵器グレードでは90%まで濃縮される。)濃縮工程では大半(96%)は副産物の劣化ウランとなる。アメリカには47万トンの劣化ウランがある[2]
  • 燃料集合体への加工(Fabrication)
核燃料グレードの六フッ化ウラン(UF6)は燃料加工工場にて二酸化ウラン(UO2)の燃料ペレットへ加工され被覆を施され燃料棒となる。

バックエンド・サイクル [編集]

原子力発電所から発生する使用済み核燃料には、「燃えないウラン」である非核分裂性のウラン238、ウランから生成されたプルトニウム、僅かながら「燃えるウラン」である核分裂性核種のウラン235、各種の核分裂生成物が含まれる。このプルトニウムやウラン235を抽出し核燃料として再利用すれば、単に廃棄処分することに比べ多くのエネルギーを産出できる。また、使用済み核燃料のウランやプルトニウムを取り出すことになるため、 放射能が減少し、廃棄物の量が減ることにもなる。更にウランは比較的政情が安定した国に多いため、ウランを全面的に輸入に頼る国でもエネルギーセキュリティ上のリスクは少ないが、核燃料サイクルで核燃料の有効活用と長期使用が出来ればよりリスクを低減できることになる。
一方、核関連施設や運搬が増える為、特にプルトニウムを扱うために高いセキュリティが要求されるとの指摘もある。
バックエンドサイクルは再処理事業、濃縮事業、廃棄物管理事業、埋設事業に分けられる。

使用済み核燃料中間貯蔵 [編集]

日本国内で発生した使用済み核燃料は、各原子力発電所内等で保管されている。原子力発電所外の中間貯蔵施設として、リサイクル燃料貯蔵株式会社の中間貯蔵施設(青森県むつ市)が建設中。

再処理 [編集]

日本国内で発生した使用済燃料は、これまでに東海再処理施設及びフランス・英国の再処理工場への委託で処理した実績がある。日本原燃六ヶ所再処理工場が、2012年10月の竣工に向け試験中。

MOX燃料加工 [編集]

再処理施設で回収されるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX燃料)は、プルサーマル発電等に使用されるMOX 燃料に加工される。加工工場が青森県六ヶ所村に施設建設中。

放射性廃棄物の処理処分 [編集]

高レベル放射性廃棄物、TRU廃棄物、低レベル放射性廃棄物はそれぞれの物性に応じて段階的処分が適用される[3]
  • 高レベル放射性廃棄物及び一部のTRU廃棄物は地下300メートル以深の廃棄施設へ埋設される。
  • 低レベル放射性廃棄物の内放射能レベルの高いものは地下50~100メートルに作られるトンネル型またはサイロ型施設に搬入され埋設される。
  • 放射能レベルが比較的低い廃棄物は地下約10メートルのコンクリート製の収納施設に搬入後施設ごと覆土され埋設される。六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで1992年より実施中。
  • 放射能レベルが極めて低い廃棄物は地下数メートルにそのまま(人工建設物は無し)埋め立て処分される。日本原子力研究開発機構・廃棄物埋設施設 (茨城県東海村)にて実施。
  • 放射能レベルが極めて低い廃棄物の内で有害な化学物質を含むものは、有害物質の管理処分基準に沿った処分施設で処理される。
再処理の過程で発生する高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)は、平成 21年末現在で、1,664 本が国内で貯蔵されている。ガラス固化体は、30~50年間冷却のために貯蔵された後、地下300mより深い地層中へ複数の障壁を施して埋設処分される予定である。
再処理施設やMOX燃料加工施設から出る低レベル放射性廃棄物(TRU廃棄物))は、2009 年3 月末現在、日本原子力研究開発機構と日本原燃再処理施設内において、200ℓドラム缶に換算して約14.5 万本の廃棄物が保管されている。
ウラン濃縮施設やウラン燃料成型加工施設から出るウラン廃棄物は、2009年3月末時点で200ℓドラム缶に換算して約10万本が保管中である。
各原子力発電所の運転により発生する低レベル放射性廃棄物は、減容等の処理をした後、最終的に埋設処分される。2009年3月時点で、各原子力発電所の貯蔵施設内に、200ℓドラム缶に換算して約62万本分が貯蔵されている[4]日本原燃は青森県の六ヶ所低レベル放射性廃棄物埋設センターで、2009年3月までに、約22万本のドラム缶を埋設処理した[4]

廃炉 [編集]

また核燃料サイクルからは外れるが、原子炉の廃炉解体に伴う廃棄物にも放射性廃棄物が含まれる。110 万kW 級の軽水炉の場合の廃棄物は総量約50~54万トン、その内放射性廃棄物は1万トンと見積もられており、これらも放射能レベルに応じて処理されなければならない。解体費用は数百億円と見積もられている。

日本の核燃料サイクル [編集]

核燃料サイクル政策の検討 [編集]

2005年に「原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画」の見直しが行われ、以下の四つのシナリオが検討された。
  • シナリオ1 全量再処理(現行路線)
使用済み核燃料は六ヶ所再処理施設で再処理を行う。処理能力を超えた分は中間貯蔵を経た上で同じように再処理を行う。
  • シナリオ2 部分再処理
使用済み核燃料は六ヶ所再処理施設で再処理を行う。処理能力を超えた分は中間貯蔵を経た上でそのまま埋設して直接処分する。
  • シナリオ3 全量直接処分(ワンススルー)
使用済み核燃料はすべて中間貯蔵を経た上でそのまま埋設して直接処分する。アメリカ、ドイツ等で採用。
  • シナリオ4 当面貯蔵
使用済み核燃料はすべて当面の間中間貯蔵する。
なお、内閣府から2005年10月14日に発表された「原子力の研究、開発及び利用の推進(原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画)」の事後評価には、どのシナリオが最適であるかの結論が述べられておらず、わずかに原子力の推進にはプルトニウム、ウラン等の有効利用が適切であると触れられているのみである。
なお、シナリオ3は再処理を行わないという選択であり、これは核燃料リサイクル政策の中止を意味する。

現在の核燃料サイクル政策 [編集]

上記シナリオ1から4までについて、10項目の視点から評価を行った結果、原子力委員会では、原子力政策大綱(2005年(平成17年)10月11日原子力委員会決定)において、「使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用することを基本方針とする。」ことを決定しており、原子力政策大綱[5]は、2005年(平成17年)10月14日、原子力政策に関する基本方針として閣議決定されている。現行路線(上記シナリオ1)に基づき、2011年までの45年間に核燃料サイクルに投じられた金額は少なくとも10兆円に上っており、その原資は税金と電気料金からなる[6]。しかし六ヶ所村の再処理工場の稼動は延期が重ねられており、高速増殖炉もんじゅも複数回の事故により1994年の稼動開始以来わずか数か月しか運転できていない状況である。
但し下記の六ヶ所村の核燃料サイクル基地が稼働しても年間再処理能力は800トンであり国内の原子力発電所から発生する使用済み燃料は年間1000トンを超えており、「全量再処理」路線を掲げる長計に沿えば、第二再処理工場を建設する必要がある。また電気事業連合会は2003年12月の時点でバックエンド費用が総額18兆8千億円かかると試算している[7]

日本における核燃料サイクル施設 [編集]

日本ではウラン鉱の採鉱・精錬等は行われていない。フロントエンドではウラン濃縮事業と燃料加工事業、バックエンドでは使用済み燃料再処理および放射性廃棄物の保管と低レベル放射性廃棄物の埋設処理が行われている。濃縮、燃料加工、使用済み燃料再処理に関しては国内の能力で需要を満たせておらず、大半を海外に依存している。高レベル放射性廃棄物の地層処分については設置場所を公募中である。以下は2010年3月末時点で[8]
注、以下の数値に関しては誤報が頻発している状況なので、随時確認・更新が必要である [9]
濃縮施設 国内での処理能力は1890トンU/年で国内需要の約三分の一である。
転換・加工施設 成形加工能力1,823トン-U/年、転換加工能力475トン-U/年
再処理施設 2002年末までに5600トンUの処理がイギリス・フランスに委託された。
  • 日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター核燃料サイクル工学研究所 (茨城県東海村) 稼働1981~2007年 累計処理量1,140トン-U。
  • 日本原燃・再処理事業所 (青森県六ケ所村) 2011年10月アクティブ試験中、2012年10月しゅん工予定であるが、使用済み核燃料の受入は2000年より始まっており当施設では3,165トンを保管している[10]
廃棄物管理施設
廃棄物埋設施設
  • 日本原燃・濃縮・埋設事業所 (青森県六ケ所村) 低レベル放射性廃棄物の埋設 1992年より稼働中。累計搬入量218,707(200リットルドラム缶換算、保管容量412,160本)
  • 日本原子力研究開発機構・廃棄物埋設施設 (茨城県東海村) 極低レベル放射性廃棄物の埋設 1995年より稼働中。1995年より稼働、1,670トンを埋設し1997年10月には埋設地の保全段階へ移行。
  • 高レベル放射性廃棄物の地層処分施設は場所を公募・検討中。2033~2037年頃に施設の建設を開始する予定である。
この他、放射性物質等を陸揚げするむつ小川原港へは、専用道路が通っている。

核燃料サイクルの系列 [編集]

  • ウラン核燃料サイクル
ウラン235(天然・核分裂性・核燃料)+中性子 → 核分裂生成物(使用済み燃料)
自発核分裂を起こす天然資源を使い捨て(一部リサイクル)する、広義での核燃料サイクル。核種変換を前提とする、狭義での核燃料サイクルとは異なる。
核分裂性の弱い核種を、核燃料として使用できる核分裂性の強い核種へと転換するサイクルとしては、次の二つの系列が考えられる:
  • ウラン-プルトニウム系列
ウラン238(天然・非核分裂性)+中性子 → ウラン239 → ネプツニウム239 → プルトニウム239(核燃料)
高速増殖炉の主要なターゲットとされ、実用化に向けた試験が行われてるが、難航している(なお、ウラン系列は自然崩壊の系列で、これとは別のもの)
  • トリウム-ウラン系列
トリウム232(天然・非核分裂性)+中性子 → トリウム233 → プロトアクチニウム233 → ウラン233(核燃料)
核兵器に必要なウラン235やプルトニウム239を主体としない、別の系列。現在、インド重水炉による実用化を進めている(トリウム燃料サイクルとも呼ばれる。なお、トリウム系列は自然崩壊の系列)。

プルトニウムの使用法 [編集]

プルトニウムの核燃料としての使用法は現在のところ2種類に大別出来る。
一つは、MOX燃料の形で軽水炉で燃やす方法であり、この方法は日本ではプルサーマルという造語で呼ばれている。
もう一つは、高速炉高速増殖炉を含む概念であるが、ウラン238をプルトニウム239に転換しながらの運転を行わない概念も存在する)を使ってプルトニウムを燃焼させる方法である。

出典 [編集]

  1. ^ エネルギー庁「ウラン資源」閲覧2011-8-22
  2. ^ 米国エネルギー庁"How much depleted uranium hexafluoride is stored in the United States?"閲覧2011-8-22
  3. ^ 日本原燃「低レベル放射性廃棄物の処分方法」閲覧2011-10-21
  4. a b 『原子力施設運転管理年報』(平成22年版(平成21年度実績))
  5. ^ 原子力政策大綱”. 内閣府原子力委員会. 2011年5月31日閲覧。
  6. ^ “45年で10兆円投入 核燃サイクル事業めどなく”東京新聞 朝刊: p. 1. (2012年1月5日2012年1月12日閲覧。
  7. ^ “中国新聞 原子力を問う”中国新聞. (2004年6月11日2011年5月31日閲覧。
  8. ^ 原子力安全基盤機構「原子力施設運転管理年報(平成21年度実績)」閲覧2011-10-30
  9. ^ 経済産業省「平成22年度原子力施設における放射性廃棄物の管理状況及び放射線業務従事者の線量管理状況等に係るデータの誤りについて」
  10. ^ 日本原燃「アクティブ試験計画書」閲覧2011-10-30
  11. ^ 日本原燃のサイトでは2,880本とある。

参考文献 [編集]

【推進側の視点から】
【反対側の視点から】

関連項目 [編集]

外部リンク [編集]