2017年3月30日木曜日

基礎生物学研究所

基礎生物学研究所(きそせいぶつがくけんきゅうじょ、英:National Institute for Basic Biology)は、自然科学研究機構を構成する、愛知県岡崎市にある大学共同利用機関である。
基礎生物学分野における日本の中核的な国立研究所である。生物現象の本質を分子細胞レベルで解明することを目標に、幅広い研究活動を行っている。国家事業であるナショナルバイオリソースプロジェクトメダカ分野を担当している。

生理学研究所

生理学研究所(せいりがくけんきゅうじょ、英:National Institute for Physiological Sciences)は、自然科学研究機構を構成する、愛知県岡崎市にある大学共同利用機関。人体基礎生理学分野における日本の中核的な国立研究所である。人体の生命活動を総合的に解明することを目標に研究活動を行っている。
国家事業であるナショナルバイオリソースプロジェクトニホンザル分野を担当している。
総合研究大学院大学の大学院生に対する教育も実施している

自然科学研究機構

 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(しぜんかがくけんきゅうきこう、National Institutes of Natural Sciences、略称:NINS)は、国立大学法人法により設立された大学共同利用機関法人国立天文台核融合科学研究所分子科学研究所基礎生物学研究所生理学研究所から成る。主たる事務所を東京都港区虎ノ門に有する。総合研究大学院大学の大学院生に対する教育も実施している

研究組織

組織構成から分かるように、自然科学の幅広い領域を研究対象としているとともに、国際的な研究活動が行われている。研究活動は各研究所にて実施。各研究所における実務は、各研究所の名称が示すとおりの研究活動を実施している。

事務組織

  • 本部事務局 (東京都港区)
  • 天文台事務部 (東京都三鷹市)
  • 核研管理部 (岐阜県土岐市)
  • 岡崎統合事務センター (愛知県岡崎市)
本部事務局は、行政機関である文部科学省への報告並びに指示を受ける機関である。 三鷹、土岐、岡崎の各キャンパスにある事務所は、経理などの管理業務を行っている。

沿革

大学の研究者などが共同で研究を進めるための機関として、相次いで設立された研究所が、2004年度の国立大学法人化に合わせ、統合及び法人化されて現在の機構になった。 1988年総合研究大学院大学の設立に伴い、総合研究大学院大学の基盤機関として、大学院生に対する教育が開始された。

歴代機構長

  • 2004年 初代機構長に志村令郎京都大学名誉教授が着任。
  • 2010年 2代目機構長に佐藤勝彦東京大学名誉教授が着任。

機構の目的

天体観測や高温プラズマ物理学、生命科学、分子反応科学などの自然科学領域における基礎科学の国立研究機関を横断的に統合再編した法人が自然科学研究機構である。文部科学省の研究機関が、予算及び分野によって再編され成立した大学共同利用機関法人の1つでもある。 独立行政法人との違いとして、独立行政法人が官民共同の利用機関であるのに対して、大学共同利用機関法人は官学共同の利用法人であると説明されることがある。しかしこれは、名称からのものでしかなく、どちらの法人も産官学の連携を重視している点に変わりは無い。独立行政法人は、行政サービスの効率化を目指した運営がなされるものであり、行政の定めた研究目的を目指して研究がなされる。これに対して、大学共同利用機関法人は、学術研究の更なる発展を目指して運営が行われており、単独の大学では整備することが難しい先端研究施設を、大学の学術研究分野で研鑽を行う人々のために、国公私立を問わず提供することを目的とした国家政策に基づく法人である。現在は、産業領域においても複数の大学が連携した理論的かつ実証的研究が重視されており、大学共同利用機関法人の活用が期待されている。具体的には、医薬品や半導体デバイスのような高い水準の製品開発に繋げるために開発された化学物質等の基礎サンプルに関する検証分析や、衛星写真や顕微鏡写真などの映像を出版・放送など文化産業の分野へ提供することなどである。

アクセス

岡崎キャンパス

〒444-8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中38
生理学研究所、基礎生物学研究所、分子科学研究所などが位置する。
名古屋鉄道本線東岡崎駅が最寄り駅。東海道新幹線豊橋駅名古屋駅(あるいは金山駅までJR東海道線中央線で行っても良い)にて名鉄本線へ乗り換えで、いずれも30分程度。中部国際空港からは東岡崎駅へは名鉄が利用できる他、直行バスもある。いずれも1時間程度。
  • 明大寺地区:生理学研究所、基礎生物学研究所、分子科学研究所)駅から南口を出て徒歩5分程度
  • 三島地区:岡崎カンファレンスセンター、三島ロッジが位置する。駅から南口を出て徒歩10分程度。
  • 山手地区:統合バイオサイエンスセンターが位置する。駅から南口を出て徒歩20分程度。あるいは名鉄バス「竜美丘循環」に乗り竜美北1丁目下車(所要時間5分)、さらに徒歩で3分。

国立天文台

〒181-8588 東京都三鷹市大沢2-21-1
JR中央線武蔵境駅南口3番乗り場から小田急バス境91系統京王線調布駅行き、天文台前で降車。15分程度。
京王線調布駅から北口11番乗り場から小田急バス境91系統武蔵境駅南口行き、鷹51系統三鷹駅行き。また北口12番乗り場から京王バス武91系統武蔵小金井駅行き。いずれも天文台前で降車。15分程度。

核融合科学研究所

〒509-5292 岐阜県土岐市下石町322-6
JR東海多治見駅3番乗り場から東濃鉄道バス研究学園都市センター行きあるいは土岐プレミアム・アウトレット行き、研究学園都市センターで下車1分。

脚注

  1. ^ 自然科学研究機構 予算 2010-04-21 閲覧
  2. ^ 自然科学研究機構 外部資金 2010-04-21 閲覧
  3. ^ 自然科学研究機構 職員数 2010-04-21 閲覧
  4. ^ 自然科学研究機構 大学院教育 2010-04-21 閲覧

外部リンク

核融合炉の実用化

核融合炉

QUEST(九州大学
QUESTへの電源供給施設
核融合炉(かくゆうごうろ)は、現在開発中の原子炉の一種で、原子核融合反応を利用したもの。21世紀後半における実用化が期待される未来技術の1つである。
重い原子たるウランプルトニウム原子核分裂反応を利用する核分裂炉に対して、軽い原子である水素ヘリウムによる核融合反応を利用してエネルギーを発生させる装置が核融合炉である。現在、日本を含む各国が協力して国際熱核融合実験炉ITERフランスでの建設に向けて関連技術の開発が進められている。ITERのように、核融合技術研究の主流のトカマク型の反応炉が高温を利用したものであるので、特に熱核融合炉とも呼ばれることがある。太陽をはじめとする恒星が輝きを放っているのは、すべて核融合反応により発生する熱エネルギーによるものである。これは核融合炉が「地上の太陽」と呼ばれる由縁である。恒星の場合は自身の巨大な重力によって反応が維持されるが、地球上で核融合反応を発生させるためには、人工的に極めて高温か、あるいは極めて高圧の環境を作り出す必要がある。
核融合反応の過程で高速中性子をはじめ、さまざまな高エネルギー粒子の放射が発生するため、その影響を最小限に留める必要がある。そういった安全に反応を継続する技術、プラズマの安定的なコントロールの技術、超伝導電磁石の技術、遠隔操作保守技術、リチウム重水素三重水素を扱う技術、プラズマ加熱技術、これらを支えるコンピュータ・シミュレーション技術などが必要とされ開発が進められている。

目次

核融合反応

原子番号28ぐらいまでの軽い元素では、核子一個あたりの結合エネルギーが比較的小さいので、原子核融合によって余分なエネルギーが放出される可能性がある。しかし、原子核の電荷が互いに反発して反応を阻害するため、実際にエネルギーを取り出して利用できるような形で反応を起こすことが可能なのは、電荷がごく小さい水素リチウムなどに限られると見られている。実際に核融合反応で発電するためには、原子核が毎秒1000km以上の速度でぶつかりあう必要がある。プラズマの温度を高くするために外部から加えたエネルギーと核融合反応により発生したエネルギーが等しくなる条件を「臨界プラズマ条件」と呼び、D-T反応(重水素三重水素の反応)では「発電炉内でプラズマ温度1億℃以上、密度100兆個/cm3とし、さらに1秒間以上閉じ込めることが条件」と、いうことになる。2007年10月現在、この条件自体はJT-60及びJETで到達したとされているが、発電炉として使用出来るまでの持続時間等には壁は高く、炉として実用可能な自己点火条件と言われる条件を目指し挑戦がつづいている。

利点

  • 核分裂による原子力発電と同様、二酸化炭素の放出がない。
  • 核分裂反応のような連鎖反応がなく、暴走が原理的に生じない。
  • 水素など、普遍的に存在する資源を利用できる。
  • 原子力発電で問題となる高レベル放射性廃棄物が継続的にはあまり生じない(もっとも古くなって交換されるダイバータやブランケットといったプラズマ対向機器は高い放射能を持つことになる。ただし開発が進められている低放射化材料を炉壁に利用することにより、放射性廃棄物の浅地処分やリサイクリングが可能となる)。
  • 従来型原子炉での運転休止中の残留熱除去系のエネルギー損失や、その機能喪失時の炉心溶融リスクがない。
などが挙げられる。

欠点

  • 超高温で超高真空という物理的な条件により、実験段階から実用段階に至るすべてが巨大施設を必要とするため、莫大な予算がかかる。
  • 反応条件が緩やかなD-T反応でも1億度程度の高温でなければ十分な反応が起こらず(反応条件が厳しいD-D反応では10億度、太陽内部の陽子-陽子連鎖反応を人工的に再現するには50億度以上)、そのような高温状態では物質はプラズマ状態となる
  • 炉壁などの放射化への問題解決が求められる(後述)。

安全性・危険性

反応の停止
核融合反応は核分裂反応と違って反応を維持するのが技術的に大変困難であり、あらゆる装置の不具合や少しの調整ミスが自動的に核融合反応の停止に結びつき、簡単には反応を再開出来ない。これはむしろ安全にとっては良い特性であり、現在の核分裂を使った商業用原子炉の根本的な危険性とは無縁である。
放射性廃棄物
核融合反応で発生する中性子は、核融合炉壁及び建造物を放射化する。放射化された核融合炉周辺の機械装置や建物が安全に本来の機能を発揮出来るような設計が求められる。たとえばITERにおいては2万トンの低レベル放射性廃棄物を発生させると推測されている(東海発電所の廃止措置に伴う物と同程度の量)。今後建設されるそれらの建物はすぐに廃棄できず既存の原子炉と同様30年程度の冷却期間が必要だと予想される。地層処分などの問題は現在の原子炉と同じ様に、費用の問題や環境汚染対策が必要である。
古くなったダイバータやブランケットは定期的に放射性廃棄物として発生するのでこれらの処理も必要となる。これらの発生頻度を最小化する部材技術の開発が求められる。また、三重水素の燃料化プロセスでも放射性廃棄物への配慮が必要となる。
三重水素の放射性
三重水素は放射性物質であり正しく管理される必要がある。特に環境への漏洩阻止は重要である。三重水素は容易に通常の水素と置き換わるので、漏洩した場合には三重水素を含む水や有機物が自然界で生じ、これらは生物の体内に容易に取り込まれる。三重水素水が生物に取り込まれた場合、通常の水と化学的な相違点は僅かであるため特定の臓器などに蓄積されたり体内で濃縮されたりする事はほとんどなく、通常の水と同じように排出される。生物が三重水素水を取り込んだ場合に半分が排出されるまでの時間(生物学的半減期)は、人の場合10日から14日程度とされる。また、三重水素を含む有機物を取り込んだ場合には、その有機物に見合った蓄積性と濃縮性を示す。ただし、三重水素は拡散しやすいため一点に留まらず、また水素が地球上に遍在するために三重水素が環境に放出されても希釈が早く生物濃縮なども受けにくい。このため、特定の食品などに濃縮されることなどは考えにくい。
三重水素の核兵器への転用
三重水素は初期の核融合爆弾にも用いられたが、後に、入手性/取り扱いともにより容易な重水素化リチウムが利用されるようになったため、わざわざ三重水素が水爆に利用されることは考えにくい。また、現在の技術では核融合爆弾の起爆には原子爆弾を用いる外に手段が無いため、既存の核保有国以外が製造することは容易ではない。ただし、通常の放射性物質同様、三重水素を原料にした汚い爆弾は容易に作ることができるがエネルギーが低いため皮膚すら貫通できず、他の材料を使った汚い爆弾に比べると実害は少ないとされる。
運転中の放射線
核融合炉の運転中はプラズマから強烈な中性子線が放射されるため、さまざまな防護措置をとってもある程度漏れることが予想されている。現状、ITERで予定される運転中の放射線は、敷地境界で1年間に約0.1ミリシーベルト以下と自然放射線の10分の1に当たる量である。
超伝導電磁石
超伝導電磁石とそれを支える構造支持体は運転中に連続して大きな力を受け続け、起動や停止時にはその変化に応じた力学的ストレスを受ける。また異常に応じて磁力を突然切る場合は、瞬間的に大きな変化に耐えねばならず、中性子を浴び続ける構造支持体が脆化しても支えきれるだけの安全度を確保することが求められる。

核反応

核融合炉において,使用が検討されている反応は主に以下の3つである。なお、以下 Dは重水素、Tは三重水素(トリチウム)、pは水素原子核、nは中性子、Heはヘリウムである。

D-D反応

  • D + D \to T + p
  • D + D \to 3He + n
自然界でも原始星で起きている反応の一つである。核融合炉として使用する場合、資源の入手性が非常に良いが、反応条件が厳しく、D-T反応の10倍厳しい反応条件を達成する必要がある。D-D反応で生ずるトリチウムヘリウム3 をその場で燃焼させる触媒式D-D反応が検討されている。なお、JT-60を含む多くの核融合開発を目的とした実験装置において、重水素を使う実験が行われている結果、この反応が起きている。もちろん、投入エネルギーを回収出来る程ではない。

D-T反応

D-T反応
  • D + T \to 4He + n (14MeV)
反応条件が緩やかで、最も早く実用化が見込まれている反応である。核融合炉として使用する場合トリチウムの入手性に課題がある。トリチウムは、自然界においては、大気の上層でわずかに生成されるのみであり、半減期の短い放射性物質であるため事実上採取は不可能である。また、高速中性子が生成するため、炉の材質も検討が必要となる。現在検討されているトリチウム入手法は、核融合炉の周囲をリチウムブランケットで囲み炉から放出される高速中性子を減速させつつ核反応を起こし、
  • 6Li + n \to T + 4He + 4.8MeV
  • 7Li + n \to T + 4He + n - 2.5MeV
トリチウムを得ることである。このときブランケットは高速中性子を減速して遮蔽し、燃料を生産し、反応熱を取り出すと言う3つの役割をすることになる。欧州トーラス共同研究施設およびTFTRにおいてはこの反応を主反応とするような実験が行われた。

D-{}^{3}He反応

  • D + 3He \to 4He + p
イオン温度が10億度の条件において、反応断面積がD-D反応の5 - 6倍程度の条件とD-T反応程ではないが比較的起こりやすく、発生するエネルギーも荷電粒子である陽子が担い放射性物質も出ないので炉が扱いやすいこと(但し副反応のD-D反応で中性子が発生する)と、直接電力にエネルギーを変換することが可能なことで注目されている反応である。しかしながら、地球上にはヘリウム3がほとんど存在しないことが大きな問題である。アポロ計画の探査の結果太陽風によりには大量のヘリウム3が存在することが明らかになったが、実用化は非常に遠いと見られる。中華人民共和国月探査計画はヘリウム3採取を最終目的にしている。

核融合反応の候補

下記の核融合反応が核融合炉で利用可能と考えられている。
  • D + T \to 4He (3.52) + n (14.06)
  • D + 3He \to 4He (3.67) + p (14.67)
  • D + D \to 3He (0.82) + n (2.45)
  • D + D \to T (1.01) + p (3.03)
  • p + 6Li \to 4He (1.7) + 3He (2.3)
  • p + 6Li \to 4He + D + p - 1.5MeV
  • n + 6Li \to 4He + D + n - 1.5MeV
  • D + 6Li \to 7Li (0.6) + D + p (4.4)
  • D + 6Li \to 4He + T + p + 2.3MeV
  • D + 6Li \to 2 2He (1.12)
  • D + 6Li \to 7Be (0.43) + n (2.97)
  • D + 6Li \to 4He + 3He + n + 1.8MeV
  • D + 6Li \to 4He + 2D + n - 1.5MeV
  • 3He + 6Li \to 24He + p + 16.9MeV
  • p + T \to 3He + n - 0.8MeV
  • p + 11B \to 34He + 8.68MeV
(カッコ内は反応生成物のエネルギー MeV) [1]

現状と問題点

現在最も研究が進んでいるのは、磁気閉じ込め方式の一種であるトカマク型であり、現在計画中のITER(国際熱核融合実験炉)もこの方式を用いている。核融合の際に発生する中性子が炉壁などを傷つけるためにその構成材質の耐久力が問題となるとの指摘がある。[誰?]とりわけITERでは前述の「D-D反応」よりも反応断面積が約100倍大きい「D-T反応」を用いる計画であるが、D-T反応では高速中性子が発生する。
この高速中性子により炉の構成材内部では使用温度等にも依存するが、「照射脆化」が進行する場合がある。つまり原子が弾き飛ばされ材料内部に「原子空孔」(vacancy)や「格子間原子」が生じ(「フレンケル対」)、弾き出しが連鎖衝突した結果発生するつながった「格子欠陥」(「カスケード損傷」)により、これらの点欠陥集合体や析出物の形成等が生じることによって材料の降伏強度が高まるに伴い脆くなる。また構成材の原子が核変換を起こし発生したヘリウムガスが原子空孔と結びつくことによって材料の内部に空洞を形成し膨張する問題(スウェリング)も発生する場合がある。こういった劣化が一定以上進めば、もはや十分な耐久性を維持出来ないために交換を必要とする。また、脆化以外にも材料が放射化することから、低レベル放射性廃棄物が生成する問題も挙げられているが、低放射化フェライト鋼を用いることでITERのテストブランケットの構造材料は目処がたっている。[要出典][2]また、構成材内部とは別に炉壁表面でも問題が生じる。プラズマイオンが炉壁に衝突すると「物理スパッタリング」と呼ばれる炉壁材料原子のはじき出しが起こる。炉壁面に炭素素材を使用すると、水素同位体の入射でメタンやエチレンなどの炭化水素が発生して、炉壁が損耗する化学スパッタリングという現象も起こる。
その他、各種の閉じ込め方式があり、それぞれ各国で研究が進められている。日本では、核融合研究の中心は日本原子力研究所の「JT-60」(トカマク型)、核融合科学研究所などで進めているLHD(ヘリカル型)と、大阪大学で研究が進んでいるレーザー核融合である。
圧力の低いプラズマを保持することは比較的容易であるが、エネルギーとして利用可能な程度の圧力のプラズマを保持するのは難しく、前述のJT-60で、高圧力プラズマの保持時間は30秒程度である(この30秒という時間は加熱装置である中性粒子ビーム入射装置の稼働時間の上限で決まっている。現在ITERのために1000秒以上稼働できる装置を開発中である。)。また、保持のために投入するエネルギーに比較して反応により得られるエネルギーはまだ小さく(エネルギー増倍率(Q値) - 1.25)、世界の各種装置で核融合利得1を若干超える程度である。これらの課題については、ITERで研究が進められる予定である(ITERの目標値はQ値 - 10)。[要出典] [3]
1989年、常温核融合の発見が世間をにぎわせたが、その後の追試験で測定方法に欠陥があるとの認識が高まり現在は似非科学の一つとされ、ネイチャーをはじめとした主要な科学雑誌も常温核融合に関しては掲載拒否の方針を示している。

実用化に向けて

小型核融合炉について ロッキード・マーチン社は2014年10月16日、10年以内にトラックに積み込める大きさの100メガワット級商用小型核融合炉を開発すると発表した[4]。2013年2月7日に発表された高ベータ核融合炉の続報である。
2015年九州大学核融合科学研究所は、それまで理論的には予想されていながら実験で確認されていなかったプラズマの流れが磁場の乱れによって脆弱化する現象の観測に成功した[5]
2016年3月18日文部科学省は現在の実証炉ITER(イーター)以降の次世代炉を三菱重工東芝と共同で研究し2035年頃の建設を目指予定と日本経済新聞が報じた[6]

核融合炉の種類

脚注

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  1. ^ 核融合炉工学概論 関昌弘編 日刊工業新聞社 ISBN 4-526-04799-6
  2. ^ プロジェクトレビュー ITER 計画の機器開発・製作の進展 10.ITER テストブランケット計画 (PDF) 河村繕範ら, J. Plasma Fusion Res. 92, 444 (2016)
  3. ^ ITERの設計とは?
  4. ^ 米ロッキード、10年以内に小型核融合炉実用化へ (ロイター)”. Yahoo!ニュース BUSINESS. 2014年10月19日閲覧。
  5. ^ 「九州大学と核融合科学研究所、磁場の乱れ影響を観測」『日本経済新聞』(2015/1/19)>
  6. ^ 核融合炉、国内で研究 文科省が三菱重・東芝などと”. 日経新聞. 2016年3月18日閲覧。
  7. ^ Huge pulsed power machine enters fusion arena Z produces fusion neutrons, Sandia scientists confirm

参考資料

国際核融合材料照射施設、福島原発施設

国際核融合材料照射施設

国際核融合材料照射施設(こくさいかくゆうごうざいりょうしょうしゃしせつ、International Fusion Material Irradiation Facility、IFMIF)は核融合炉での使用に適した材料を試験するための国際科学研究プログラムである。幅広いアプローチ協定の一部として、工学実証・工学設計活動(IFMIF-EVEDA)が進められている。

目次

概要

IFMIF-EVEDAは、青森県六ヶ所村の国際核融合エネルギー研究センターにおける原型加速器の実証試験と、茨城県大洗町におけるリチウムループのスケールモデルの製作・試作運転等の要素技術開発からなる。IFMIF-EVEDA後の計画は未定であるが、将来的には、大きな中性子束を生み出す核融合中性子源として粒子加速器等からなる統合システムを運用し、核融合炉環境に近い条件における材料の照射効果について試験する。IFMIFは、核融合実験炉ITERの建設に役立つことはないが、ITERの後の商用核融合炉のための重要な情報を提供する見込みである。 IFMIF計画の中心は、長さ約50mの2本の平行する重水素原子核のビーム加速器の開発である。重水素原子核がリチウム・ターゲットと接触したときに、高エネルギー中性子に変換され、材料試料と試験部品に放射線を照射する。

核融合炉の炉壁候補となる材料

重水素-三重水素(D-T)核融合反応で生じた自由中性子を示す。
融合炉のために開発する材料は、プラズマ閉じ込め実現の困難で重要な問題として長いあいだ考えられてきたが、その割には大した注意は払われて来なかった。融合炉内の中性子束は加圧水型原子炉のおよそ100倍あると見積もられていて、融合炉のブランケット内のそれぞれの原子は、その材料が交換されるまで、中性子が叩きつけられてその位置が元あった所から移動してしまうことが100回程度は発生する。
さらに高エネルギー中性子はさまざまな核反応の過程で水素やヘリウムを作り出し、これらのガスが材料中の粒界面で泡となって現れるために、スウェリング(swelling)やブリスタリング(blistering、表面に現れるブツブツ・でこぼこ)、脆性(embrittlement、エンブリトルメント)を生じることになる。もうひとつ望むなら、一級の成分を選んで不純物が元で長命な放射性廃棄物を作らないようにしたい。とにかく、機械な力や温度が高くそれらが何度も繰り返し起こる環境である。
問題は悪化させられる、なぜなら現実に則した部材では融合炉と同じように長期間、中性子束に曝さなければならないが、そのような中性子源は融合炉と同様に複雑で高価なものである。適切な部材の試験はITERでは行なわれず、IFMIFで扱われる。
プラズマ対向機器
プラズマ対向機器(plasma facing components、PFC)の部材は特に問題である。プラズマ対向機器(以下PFCと表記)は大きな機械的な負荷には耐える必要はないので中性子による損傷は大きな問題ではない。PFCは最大10MW/m{\displaystyle {}^{2}}もの、不可能に近いがなんとか可能な、巨大な熱による負荷に耐えなければならない。いずれの部材を選択しても、熱の流れは表面から冷却材までわずか1-2cmほどの距離を、部材を溶かすことなく運ばれなければならない。第一の問題はプラズマとの相互作用にある。一つの選択は原子番号の小さな、たとえば炭素ベリリウムを選ぶかまたは、原子番号の大きな、たとえばタングステンモリブデンを選ぶかである。

炭素

炭素が使用される場合、物理・化学双方のスパッタリングに起因するエロージョンの速度は1年あたり数メートルにも達する。そのため、スパッタされた材料が再蒸着されることに頼らなくてはならない。再蒸着される場所がスパッタされた場所と対応関係にあるわけではないので、炭素の持つ、使用に供し難いほどのエロージョン速度という問題は拭い去れない。更に大きな問題として、炭素の再蒸着の際に三重水素が一緒に蒸着されることがある。炭素の再蒸着層に取り込まれた三重水素と炉内のちりはすぐに数 kg のオーダーの量に達する。これは燃料が再蒸着で失われることと、事故の際にきわめて深刻な放射性物質汚染の問題を引き起こすことを示している。核融合関係者の間では、炭素は核融合実験においては非常に魅力的な材料ではあるが、PFC 材質として第一に選択すべきものとはなり得ないだろう、ということが共通認識となっている。

タングステン

タングステンのスパッタリング速度は炭素のそれと比べて何桁ものオーダーで小さい。また、スパッタされた後再蒸着したタングステン原子と三重水素は結合し難い。このような性質から、タングステンはより望ましい選択肢であるとされる。一方、プラズマ中にタングステンが不純物として入った場合、それは炭素より損傷を与えやすく、タングステンの自己スパッタリングが進行し易いと考えられる。そのため、タングステンと接触するプラズマの温度が高くならない(数百 eV より数十 eV 程度)ようにすることが非常に重要であると考えられる。タングステンはまた、渦電流の問題や、放射化に起因する通常では起こらないような溶融などの不利な問題を有している。

関連項目

外部リンク

脚注

高ベータ核融合炉の実用化

高ベータ核融合炉

高ベータ核融合炉(こうベータかくゆうごうろ)は、アメリカのロッキード・マーチン社が開発中の核融合炉。2024年までに実用化する方針が発表されている。

目次

概要

この核融合炉の特徴は、ベータ値と呼ばれる炉内プラズマ粒子の圧力と、プラズマ閉じ込め磁場の圧力の比を比較的高めている点である。ベータ値が高ければそれだけ小さな閉じ込め磁場の圧力でプラズマを保持することができるため、炉の構造をより小さくすることができる(核融合炉の出力は炉内プラズマ粒子の圧力の2乗に比例するため、単に小さな構造にしただけでは実用的な発電出力を持つ炉とはなりえないが、プラズマ圧力が高い場合は小さな炉でも高い出力を得ることができる。)。

構造

ロッキード・マーチン社の発表したイラストには、直列に配置された超電導コイルから発生する磁場によりプラズマが保持される構造の細長い炉が描かれている。 磁場は外側ほど強くなるため、プラズマが外へ向かうと自然に押し戻されるフィードバック機構を持つとされる。

経緯

  • 2010年、プロジェクト開始
  • 2014年10月16日、ロッキード・マーチン社は10年以内にトラックに積み込める大きさの100メガワット級商用小型核融合炉を開発すると発表した[1]
  • 2015年8月10日、超伝導体テープの開発に成功したとの発表。これによりARC型小型融合炉の開発が10年以内に可能になったとされた[2]

参考文献

  1. ^ 米ロッキード、10年以内に小型核融合炉実用化へ (ロイター)”. Yahoo!ニュース BUSINESS. 2014年10月19日閲覧。
  2. ^ 安価でコンパクトな核融合反応器の開発にMITが成功し10年以内の実用化に期待(GIGAZINE)”. GIGAZINE. 2015年8月10日閲覧。

関連項目

外部リンク