2012年3月11日日曜日

400万トンの広域処理、理解進まず苦闘


復興阻む、がれき2200万トン 400万トンの広域処理、理解進まず苦闘

 東日本大震災により発生した膨大な災害廃棄物が、被災地の復興を妨げている。環境省や被災地の自治体は、他都道府県による広域処理を呼びかけているが、理解はなかなか広がらないのが現状だ。「がれきの街」と化した被災地を歩いた。【小野博宣】

 ◇被災地「協力を」

 宮城県石巻市の市街地にほど近い河川敷の堤防。付近には、仮設住宅や一般住宅が建ち並ぶ。そして、その隣には震災で発生したがれきがうずたかく積まれていた。茶色い木材や灰色のコンクリ片に交じって、さびた金属が鈍く光る。
 ビニールシートで覆われることはなく、むき出しのまま。付近の学校の生徒が部活動で堤防を走る。がれきとの距離は数十メートルほど。散歩をしていた中年女性は「がれきを見ると、どうしても津波を思い出します。熱がたまって火事にならないか、夏には臭いがしないかと心配しています」と話してくれた。
    ◇
 同県女川町もがれきの中に埋まっていた。推計で44万4000トン、通常処理の100年以上もの量だという。同町は87%が山林で、わずかな平地ががれきの山となっている。そこはかつて住居や商店だった場所だ。
 須田善明町長は「私たちはがれきの中で毎日暮らしている状況です」と悲痛な声を上げる。「平地も地盤沈下し、復元、整地、かさ上げが必要。しかし、がれきのためにそれもままならない。復旧事業の足かせになっています」と訴えた。
 1日、女川町から東京都へ震災がれきの本格的な搬出が始まった。都は約10万トンを引き受ける予定という。作業を取材した。
 がれきといっても内容はさまざま。木材や畳、布、プラスチック製品、コンクリート、石など。積み上がった現場で大まかな選別をし、中間処理施設へ。大型の専用機械と職員の手作業で、可燃物と不燃物に厳重に選別されていた。破砕された木材などが広域処理に回される。
 空間放射線量の測定は、(1)手選別の後に1時間置き(2)コンテナ積み込み前にサンプリングで調査(3)搬送前にコンテナの両面を調査--と3回繰り返した。取材時は異常な数値の検出はなく、いずれも都が定めた基準値を下回るものだった。
 そして、コンテナ2基を載せたトラックが出発。鉄路を経て東京に向かうという。
 復興に取り組む町に匿名電話がかかってくることがあるという。「放射能汚染したものを持ってくるな」「町の職員が来て、頭を下げろ」と。
 だが、そんな言葉を気にかけている暇はない。コンテナの搬出を見守っていた職員は「受け入れていただいた都民の皆さんに感謝したい。町はがれきの山になっているが(トラックを見て)復興が始まるという思いになります」。しっかりと前を見据えていた。
毎日新聞 2012年3月10日 東京朝刊
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