2012年3月12日月曜日

事故と大災害のリスク


事故と大災害のリスク

#20 安全性の欠陥

ドイツにある17 基の原子力発電所のうち1 つとして、今日では営業許可を得られない。
防護壁能力の不足、貧弱な電気回路、老朽化した鋼鉄――本来、連邦憲法裁判所が判決
で要求している安全の水準、つまり学問上、技術上においてその時代毎に妥当だと考えら
れる安全基準を満たしている原子力発電所は、今のドイツには1 つもない。数百万ユーロ
もの高額な追加安全装備も話にならない。
明白な安全性の欠陥により、ドイツの17 基の原子力発電所はすべて、再度、新設として
の許可を得ることはできない。

#21 老朽化のリスク

原子力発電所を使えば使うほど、事故の危険性は増大する。
機械や電気部品の耐久性は永遠ではない。とりわけ原子力発電所においては著しく老朽
化する。配管は脆くなり、制御装置は故障し、バルブやポンプは動作しなくなる。亀裂は広
がり、金属は腐食する。デービス・ベッセ原子力発電所(オハイオ州/USA)では、16cm の
厚さの鋼鉄で作られた原子炉圧力容器を貫いて、誰も気づかないまま穴が開いた。内側に
取り付けられた薄いステンレス層が漏水を防ぐのみであった。
原子力発電所を長く使えば使うほど、そして古くなればなるほど、事故のリスクは増大す
る。それは報告義務のある事故・故障の届け出の統計からも読み取ることができる――ドイ
ツの原発、ビブリスやブルンスビュッテルのような古い原子炉では、新しいものよりも明らか
に頻繁に事故・故障が発生している。

#22 報告義務ある事故・故障

3 日に1 度はドイツの原子力発電所のどこかで、「安全性にかかわる」事故・故障が発生し
ている。
ドイツ連邦放射線防護局にある事故・故障の報告窓口には、ドイツの原子力発電所の安
全性にかかわる重大な事故・故障の報告が、毎年100~200 件届けられている――1965
年から合計するとその数約6,000 件。毎年、これらの届出のうち、重大災害に発展する可
能性を持った事故・故障が数件含まれている。これまでドイツで破滅的な大災害が発生し
なかったのは、単に偶然と幸運が重なったからである。

#23 スペア不足

原子力発電所での修理作業においては、簡単に新たなミスが発生する。
現在稼働中のドイツの原子力発電所は1974 年から1989 年の間に営業運転をはじめて
いる。多くの修理部品は今では製造されていない。それゆえ、修理時には代替部品を作ら
なければならない。これはリスクの多大な作業であり、なぜなら、もし製造したスペア部品が
何らかの理由でオリジナルの部品と全く同様に作用しない場合は、重大な結末をもたらす
可能性があるからだ。

#24 石器時代の技術

30 年前の技術とは一言で言うと、廃棄するにふさわしい。
現在でもなお稼働しているドイツの原子力発電所は、1970 年から1982 年の間に建設工
事が開始された。
理性ある人間であれば、1970 年製造のVW-411(フォルクスワーゲン)のような車を「最
新の安全技術水準」であるとは絶対に言わない――もし、その車が今日までの間にバンパ
ーを取り替えたり、ブレーキを交換したり、シートベルトを取り付けたとしても。もし誰かが、
ホームコンピューターCommodore-C64(1982~83 年製造)を今日のスタンダードに改
造すると言ったなら、間違いなく声の限りに嘲笑われるだろう。原子力発電所においてのみ、
原発事業者の見解では、こうしたことは問題ないとされている。

#25 地震の危険性

原子力発電所は十分に地震対策がなされていない。
フライブルク市近郊の原発フェッセンハイム、カールスルーエ市近くの原発フィリップスブ
ルク、ダルムシュタット市付近の原発ビブリス――これら3 つ全ての原子力発電所は、ドイツ
で地震活動の最も活発な地域であるオーバーライン低地の上に建っている。しかし、それら
は他のドイツの原子炉と同じように、地震に対して簡単な備えしか持たない。
原子力発電所フェッセンハイムは、1356 年にバーゼル市を壊滅させた規模の地震発生
時には、震源が30km 以上離れていなければ持ちこたえることができない。地震のほうが
原発の事情にあわせてくれるのだろうか?
原子力発電所ビブリスは、1.5 m/s2 の重力加速度までしか耐えられない。ただし地震学
者は、マンハイム市ととダルムシュタット市の間のエリアで明らかにそれを上回る強い揺れ
を予測している。原子力発電所ネッカーヴェストハイムが建つ石灰層の地下では、地下水
が浸食し、最大1,000 ㎥もの新たな空洞が開けられている。

#26 航空機墜落

原子力発電所は航空機の墜落に対して守られていない。
ドイツにある原子力発電所は1 つとして、燃料満タンの旅客飛行機の墜落に耐えること
ができない。これは、原子炉安全協会が――当初は極秘資料として――連邦環境省依頼の
専門家鑑定に記されている。
それどころか7 つの原子炉はかなり薄いコンクリートの壁を持つだけで、戦闘機の墜落や
戦車装甲を貫通する兵器でさえ、破局的な大災害を引き起こすことができる。

#27 すでに倒れゆく新型原子炉

新型の原子炉でさえ、安全でない。
フランスの原子力コンツェルンAREVA が現在、フィンランドとフランスで建設中の自称、
最新型の欧州加圧水型原子炉(EPR)であっても、炉心溶融にいたるまでの重大な事故は
起きうる。その場合、大量の放射性物質が周囲に撒き散らされる。原子炉を稼動させ、非
常時には安全に停止に導くEPR の操作管理技術に対して、フィンランド、イギリス、フランス
それぞれの原子力安全監督官庁は、リスクが多大であり、それゆえ共通の声明を出すこと
でこれに反対している。
単純な航空機墜落に対してさえ、自称では格段に安全だと唱えられている新型原子炉は
防護されていない。フランス政府は、この新型の建設を中止する代わりに、危険だとする専
門家による鑑定書を軍事機密として封印した。

#28 保険

車50 台分の保険の補償額のほうが、1 基の原子力発電所の保険よりも手厚い。
ドイツの原子力発電所の破局的な大災害は、健康被害、物損、資産の損害など合計2.5
~5.5 兆ユーロ規模の被害を発生させる。これはPrognos 研究所が1992 年に当時ドイツ
自由民主党(FDP 党)が大臣を務めていた連邦経済省依頼の専門家鑑定の中で、試算し
た数字である。
ドイツで原発を稼動する全ての事業者が加入している損害賠償保険は、合計最大で25
億ユーロまでカバーされているが――これは想定される被害額の0.1%でしかない。原子力
発電所の駐車場に停めてある車50 台のほうが、原子力発電所自身よりも大きな補償額で
カバーされている。

#29 破局的な大災害

破局的な大災害は、今日にでも起こりうる。
1989 年に行われた「ドイツ・原子力発電所のB 段階のリスク調査」では、西ドイツの原子
力発電所において技術的な欠陥により起こりうる破局的な大災害のリスクを年間0.003%
としている。一見、小さなリスクに見える。しかし、EU のみにおいてでさえ、2007 年末の時
点で146 基の原子力発電所が稼働している。それぞれ40 年間の稼動期間を想定すると、
このリスクで見積もったとき、破局的な大災害の起こりうる確率は16%を超える。ここには、
さまざまな原子力発電所で発生しうる故障・事故のシナリオや原子炉の危険性を増大させ
る老朽化は全く考慮されていない――同様に、ハリスブルク(スリーマイル島)とチェルノブイ
リの原因となった人為的なミスもここには含まれてない。

#30 安全性ランキング

ドイツの原子力発電所の安全性は、あろうことか国際比較で低い。
ドイツの原子力発電所は「世界で最も安全性が高い」?
それは間違っている! 1997 年に行われたOECD 諸国の国際的な安全性の比較にお
いて、ドイツで標準的な原発であると代表された原発ビブリス B は、炉心溶融の耐性で最
悪の成績であった。
水素爆発の可能性がとりわけ高く、鋼鉄製の原子炉格納容器が極めて不安定であると、
専門家は鑑定した。ビブリスでは「炉心溶融時に放射性物質が大量に拡散する危険性が
格段に高い」とコメントされている。

#31 悪天候

単に嵐が来ただけで事故の危険性が高まる。
原子力発電所の停電、いわゆる外部電源喪失は、原子炉にとって最も危険な状態である。
非常用電源が完全でなければ、冷却装置は停まり、炉心溶融の危機が迫る。この状態を
引き起こすのは、単なる悪天候で十分だ。
1977 年から2004 年の間にこれまで8 回、西ドイツの原子力発電所の重要な装置が雷
または嵐で停止し、危惧されている外部電源喪失の緊急事態になった。そのうち1977 年
1 月13 日に原発グントレミンゲンA では、修復不能な障害が発生した。洪水によっても危
機は迫る――大西洋岸にあるフランスの原子力発電所ブライエは、頻繁に洪水で冷却装置
の一部が停止している。

#32 金の亡者

原子力発電所において迷ったときの判断基準は――安全より利益優先――それが爆発事故
の後であっても。
2002 年のはじめ、原発ブルンスビュッテルで安全検査をした一団はまさに「死人のような
真っ青な顔」で原発から出てきた。彼らは原子炉圧力容器の脇の配管調査をした――配管
というより、25 個の残骸であったが。2001 年12 月14 日、水素爆発によって、直径10cm
の配管(肉厚5~8mm)の3m 分が粉々に破裂した。
当時の原発事業者HEW(現Vattenfall)は、「経年変化で発生したパッキンの漏損」であ
ると申告し、その配管バルブを閉じたが――原子炉の稼動はそのまま続けられた。季節は
冬のことであり(電力需要が大きいことから)、電力市場における電気価格は最高値を記録
していた。州都キール市にある州の社会福祉・健康省(原発の監督官庁)が強い圧力をか
けたことではじめて、HEWは2 月中旬に原子力発電所の稼働を停止し、安全検査が実施
された。その後、この原子力発電所は、13 カ月に及んで停止された。

#33 人為的なミスのリスク

人間はミスをする――それは原子力発電所では致命的となる。
バブルの開閉を間違う、警告信号を見落とす、スイッチを入れ忘れる、命令を間違って理
解する、緊急時に誤った対応をする――技術的・施設面ではなく、人為的なミスが、原子力
発電所においてはとりわけ危険な事態を引き起こす多くの原因となる。「人為的なミスのリ
スク」は事前に計算できない。
そうした前提がありながら原発従事者という人間が、トラブル発生時には炉心溶融を回避
するために、常時作業とは全く異なる非常に重要な緊急事態の対応を行うべきだという。
原子力発電はミスしない人間を要求する。しかしそんな人間は存在しないし――とりわけ
原子力発電所の非常事態などという極度のストレス下でミスをしない人間などいない。

#34 ホウ酸

原子力発電所を稼動する複数の事業者は、長年にわたって組織的に稼動の際の法令規
定を無視している。
17 年間にわたり原発フィリップスブルクでは、十分なホウ酸濃度を緊急注水容器に準備
しないまま稼働を続けた。それは、緊急時に炉心に注入されるべきものである。緊急注入
水の中のホウ酸濃度が足りない場合、炉心への注水は「火にガソリンを注ぐ」ような効果を
招く。
原発稼動をする事業者はそんなことは気にしない。それどころか、彼らはむしろ意図的に、
稼動の際のハンドブックにある規定を無視している。数々の調査は、他の原子力発電所に
おいても長年にわたって、十分なホウ酸を準備しておらず、緊急の冷却システムが完全に
は機能しないことを報告している。

#35 スパゲッティ配線

原子力発電所における電気系統のトラブルは日常事であり、それは深刻な結末を伴う可
能性もある。
2006 年の夏、欧州は崩壊寸前の危機に瀕した。配線設計の構造的な欠陥により、スウェ
ーデンの原発フォルスマルクにおいて、ショートと停電した後に、非常用電源が始動しなか
った。炉心溶融がはじまるまで、わずか数分しか残されていなかった。これは特殊なケース
ではない――原発ブルンスビュッテルにおいては、電気系統のミスが原因で、1976 年の営
業運転開始以来、緊急冷却用装置の非常用電源が十分に機能していなかったことが判明
している。さらに原発ビブリスでも同じように間違いと手抜き工事で施工された配線接続の
数々が報告されている。

#36 チェルノブイリより悪い事態

ドイツの原子力発電所で破局的な大災害が発生すると、それはチェルノブイリ事故よりも大
きな被害が出る。
ドイツの原子力発電所は、原子炉内に黒鉛を抱えていないため、チェルノブイリのように
火を噴くことはない。それゆえ放射性雲が爆発後にそれほど高い上空まで運ばれることは
なく、放射線量は数百km の範囲内において強く増加する。ドイツの人口密度はチェルノブ
イリの地域より7 倍高く、ライン-マイン地域のそれは約30 倍だ。明らかにより多くの人び
とが、より高い放射線量に犯されることになる。
#37 数百万人もの癌発症
ドイツの原子力発電所における破局的な大災害発生の際には、数百万もの人びとが著し
い健康被害を覚悟しなければならない。
ドイツ連邦経済省が委託した調査では――チェルノブイリ事故の経験を考慮して――ドイツ
で重大な原発事故の後に想定される健康被害を試算している。例えば原発ビブリスで破局
的な大災害が発生した場合、追加で480 万人の癌発症者が見積もられている。加えて、放
射線や避難、故郷の喪失によって直接的、もしくは間接的な健康被害の数々が加わる。

#38 故郷の喪失

破局的な大災害の際には、数千km2 の区域に永続的に人が住めなくなる。
数百万もの人びとがドイツの原子力発電所において破局的な大災害が発生したとき、自
身の家、住宅、仕事場に戻れなくなる。この人びとはどこで生活し、仕事をし、睡眠を取るこ
とができるのだろうか? 誰が彼らの健康の面倒を見るのか? 誰が彼らの損害の補償を
負うのか? これは電力コンツェルンでないことは確かで――なぜなら彼らはとうに倒産して
いるからだ。

#39 避難

ある地域全域の数時間以内での避難は不可能である。
原子力発電所の災害時退避計画では、放射線雲が事故の開始から数日間は原子炉内
に押しとどめられると仮定している――住民が避難する時間として。
しかし飛行機、地震、あるいは爆発が原子力発電所を破壊したらどうなのか? もしくは
原発クリュメルのように、格納容器が数分で融解したら? そうしたケースでは、天候次第
であるが、全地域の住民が避難するために数時間しか残されていない。
新型の拡散予測システムは、25km 離れた場所でさえ、住居内に滞在していると数時間
以内に、半数の住民が死に至る高さの放射線汚染量になることを示してる。放射線雲は周
辺のみに留ることは絶対にありえない。しかし、それ以上遠く離れた地域には、避難計画す
ら存在しない。

#40 ヨウ素剤不足

ヨウ素剤を入手するために外出しなければならないのであれば、それは役に立たない。
ヨウ素剤は、原子力事故において放射性ヨウ素による放射線障害を緩和する。しかし、原
子力発電所周辺の極めて狭い範囲にしか、万一の備えとして家庭に配布されていない。他
の全ての地域ではヨウ素剤は市役所に保管されているか、もしくは事故の後で空輸しなくて
はならない。入手するのは困難だ――なぜなら災害時避難計画では外出しないように指導
している。

#41 経済の崩壊

破局的な大災害は、国民経済の崩壊を招く。
ドイツのような国における破局的な大災害は、2.5~5.5 兆ユーロの損害を引き起こす。こ
れはPrognos 研究所が、すでに20 年前にドイツ連邦経済省の委託研究で試算したもの
である。インフラを考慮すると、今日ではその総額は確実に上昇しているだろう。
比較すると――世界の先進工業国上位20 ヶ国における目下の経済危機緩和のための景
気対策プログラムは、総額で3.5 兆ユーロである。

ボーナス #103 原子炉内のフェルト

剥離した断熱材が原子炉の冷却配管を塞ぐ。
小さな亀裂が1992 年7 月28 日、スウェーデンの原発バーゼベックで破局的な大災害
を引き起こしかけた。漏水が断熱材を剥離させ、細い繊維が原子炉に冷却水を循環させる
配管内の濾過網に引っかかり、配管を塞いだ。
この「濾過網の目詰り問題」は、他の原子炉でも緊急時に原子炉の冷却装置を麻痺させ
ることが分かった。調査試験はさらに不安をあおる事実を示した――とりわけ細い繊維は
濾過網を通過して、原子炉の内部まで入り込み、そこで小さなフェルト状に形成され、小径
の冷却配管を塞ぐというのだ。
2008 年末に、原子炉安全委員会はこの問題を根本的に解決する長年の努力は失敗し
たことを認めた。原発はそれでもなおすべて稼動している。

ボーナス #104 貝と葉

ほんの尐しの植物片でさえ、原子炉のメルトダウンの原因になる。
冷却システムの「ほんの一部の詰まり」が、フランス・アルザスの原発フェッセンハイムを
2009 年末に緊急停止させた。ライン川からの多量の植物片が冷却循環の配管の奥深くに
まで進入したからだ。原子力監督官庁は緊急対策本部を設置した。その直前にはすでにロ
ーヌ川からの浮遊物が原発クリュアの冷却装置を麻痺させていたからだ。
さらにやっかいなのはタイワンシジミである。極東から持ち込まれたタイワンシジミは、今
では中央ヨーロッパの河川で非常な勢いで増殖している。その小さな稚貝はどんなフィルタ
ーも通り抜けてしまう。スイスの原子力発電所の運営企業は高圧洗浄機を使用している。
アメリカではすでに1980 年に貝類のために1 基の原子力発電所が操業停止に追い込ま
れている。

ボーナス #105 現場での手抜き工事

フィンランドの原発工事現場では、(工事中の地盤没落大事故のあった)ケルン地下鉄の
工事現場よりもひどい状態が続いている。
60 カ国から4,300 人の労働者がフィンランドのオルキルオトで「欧州加圧水型原子炉
(EPR)」の試作品をどうにか稼動させようと躍起になっている。工事現場の現状は髪の毛が
逆立つようだ――鉄筋コンクリートには一部の鉄筋が足りず、現場の親方は指揮下の労働
者たちの言葉を理解しない、溶接部分がすぐに亀裂し、現場監督は欠陥部分をコンクリート
で埋め隠してしまうことを命令する。それに加えて1 日16 時間労働、安すぎる賃金、雇入
れと解雇の繰り返し――まさに「奴隷原子炉」の有様だ。
フィンランドの原子炉監督官庁はすでに、土台に種類を誤って使用されたコンクリートに始
まり、規定違いの手法で溶接された冷却システムの配管に至るまで、実に3 千を超える建
設工事の欠陥を記録している。

ボーナス #106 非常な勢いで増加する亀裂

原子力発電所の重要な配管に、誰一人気づくことなく亀裂が走る。
原発ヴュルガッセンでのそれは廃炉を意味し、原発シュターデではそれは廃炉までの時
間を早め、原発クリュメルと原発ブルンスビュッテルでは原子炉がそのために数年間停止し
た――ここで言っているのは、配管、容器、溶接部や水栓における亀裂のことである。
これまでに専門家が過去数十年にわたって様々な鋼鉄の種類を亀裂耐久性があると証
明しているが、これらの予測は常に誤りであったことが判明している。正確に分かっている
ことは、微小な亀裂でも、突然、急速に大きくなるということだけだ。それは、配管の破断と
破壊を導き――炉心溶融への最高の条件となる。
特に不安なのは――これらの亀裂のほとんどは、偶然に発見されている事実であり――
原発クリュメルのように、原子炉が長期間停止していた時に発見されることが多い。それ以
外では、完全な検査のために時間を割くことはできない。

ボーナス #107 安全追加対策

キリスト教民主同盟(CDU 党、保守大政党)でさえ、内部では古い原発の安全追加対策は、
解決不可能であることを認めている。
2009 年のドイツ連邦議会選挙の3 日後、CDU 党の州大統領のコッホ(ヘッセン州)とエ
ッティンガー(バーデン・ヴュルテムベルグ州)は、CDU/CSU 党の上部に、長期間にわた
る原子力発電所のより長い稼動への道筋を示すべき、広範囲におよぶ「原子力戦略とロー
ドマップ」を送付した。この書類は古い原子炉の「安全性能の違い」、つまり欠陥をも指摘し
――これらの欠陥は、膨大な費用をかけても直せるものではないと明らかに記載されてい
る。加えて、「既存の原発施設のコンセプト自体の限界が、安全追加対策を限定的にする」
と述べられている。

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