核武装賛成論の主張 [編集]
主な核武装論者 [編集]
- 清水幾太郎(元学習院大学教授 社会学専攻。故人)
- 伊藤貫(国際政治・米国金融アナリスト)
- 中川八洋(筑波大学名誉教授 歴史人類学専攻)
- 副島隆彦(常葉学園大学 教育学部特任教授)
- 中西輝政(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
- 志方俊之(帝京大学教授。元陸上自衛隊北部方面隊総監、陸将)
- 福田和也(慶應義塾大学教授、文芸評論家)
- 平松茂雄(「沖縄と共に『自立国家日本』を再建する草の根ネットワーク」専任講師、国家基本問題研究所評議員)
- 西部邁(秀明大学学頭)
- 兵頭二十八(フリーランスライター、自称「軍学者」)
- 小林よしのり(漫画家)
- 勝谷誠彦(コラムニスト)
- 麻生太郎(自由民主党衆議院議員、元内閣総理大臣)
- 安倍晋三(自由民主党衆議院議員、元内閣総理大臣)
- 井上喜一(自由民主党衆議院議員、元内閣府特命担当大臣。故人)
- 小池百合子(自由民主党衆議院議員、元防衛大臣)
- 下村博文(自由民主党衆議院議員)
- 高市早苗(自由民主党衆議院議員、元内閣府特命担当大臣)
- 中川昭一(自由民主党衆議院議員、元財務大臣。故人)
- 野田毅(自由民主党衆議院議員、元自治大臣)
- 城内実(無所属衆議院議員)
- 池坊保子(公明党衆議院議員)
- 市村浩一郎(民主党衆議院議員)
- 野田佳彦(民主党衆議院議員)
- 伴野豊(民主党衆議院議員)
- 米沢隆(元民主党衆議院議員)
- 西村眞悟(元改革クラブ衆議院議員)
- 田母神俊雄(軍事評論家、元航空幕僚長)
- 石原慎太郎(作家、東京都知事)
- 橋下徹(弁護士、元大阪府知事、大阪市長)
- 櫻井よしこ(評論家、ジャーナリスト、国家基本問題研究所理事長)
- 元谷外志雄(アパグループ代表)
- 和田秀樹(精神科医)
他、国家基本問題研究所の関係者
核武装主張の理由 [編集]
核抑止力の保有 [編集]
- 核抑止力とは、敵の先制攻撃によっても生存可能な報復用の核兵器を持つことにより、敵の核攻撃を抑止する力である。日本が核武装することによって、中国、北朝鮮、ロシアに対する核抑止力が得られる。
- 日本の狭く都市部に人口が密集した地理的条件から中・露など広大な国に対する核抑止力を否定する意見もあるが、それは相互確証破壊の概念と核抑止力の概念の混同である。
- 核によって攻撃しようとする側は、核攻撃によって得られる利益が不利益を上回らなければ攻撃できないから、報復用の核を持つことによりその不利益の割合を増大させれば、核攻撃の動機を抑止出来ることになる。そして核抑止力の大きさは反撃可能な核の量に比例する。これが核抑止力の基本的な考えであり、その核抑止力が敵対しあう2国間で最大、すなわち国家の存続が不可能となった状態が、相互確証破壊である。
- 日本が核武装するとしても中国などに対し相互確証破壊に至るまでの核戦力を保有することは困難であり、日本同様狭い国土で一定の核抑止力を構築しているイギリスやフランス、またはイスラエル程度の核戦力の保有が現実的選択肢と思われる。
- 日本の狭く都市部に人口が密集した地理的条件から中・露など広大な国に対する核抑止力を否定する意見もあるが、それは相互確証破壊の概念と核抑止力の概念の混同である。
「核の傘」への疑問 [編集]
- 米国政府は公式には同盟国への核の傘を一度も否定したことは無く、今後も核の傘の提供を維持することを再三明言しているが、 それは同盟国や仮想敵国に対する外交戦略として当然の政治的アピールであり、実際に同盟国が核攻撃を受けた場合、米国が何千万もの自国民が死亡する危険を覚悟して核による報復という軍事的選択を行うかどうかは、全く次元の異なる問題である。ただし、それだけの核戦力を保有する国はソビエト(現在のロシア)しか存在しない。
- 核武装論と言っても考えは多様であるが、共通して挙げられる核武装の必要性の最大の理由は、「たとえ日本が核攻撃を受けたとしても米国自身が核攻撃に晒されるなら米国は核報復はしない」と日本に核を向けている国が判断する可能性が非常に高いという、核の傘懐疑論である。このため、日本自身がある程度以上の核戦力を保有することによって、「日本を核攻撃したら確実に日本から核反撃される」と知らしめる効果があるとするのが一般的主張である。
- 日本の政治学や安全保障などの専門家の間では、核武装を主張する者は少数であり、反対派が多数である。日本の核を向けている国が「日本を核攻撃すれば、米国が核によって反撃する可能性がある」と判断してくれなければその国に対して核の傘が機能しないのが事実であり、米国による核報復を想定していても自国民の被害を顧みないような独裁者の存在も想定しなければならない。それは核武装を議論する際に留意すべき重要な点である。
- なお、米国が同盟国に対して本当に核の傘を提供するかという議論は、米ソ冷戦時代から存在した。欧州においても大論争があり、米国が「欧州が核攻撃されたら米国本土からソ連に対し報復核による攻撃を行う」と説得したものの、欧州諸国は納得せず、米国によるより強い核のプレゼンス(核の傘)を求め、欧州を脅かしていたソ連の中距離弾道ミサイル「SS20」と対等のミサイルを配備するよう求め、結局米国は欧州諸国に中距離弾道ミサイル「パーシングII」を配備することになった[12]。
- 米国の核の傘に対する否定的考えは個人的見解ではあるが当の米国の政治家や学者からも出ている[13]。
- ヘンリー・キッシンジャーは「超大国は同盟国に対する核の傘を保証するため自殺行為をするわけはない」と語っており、CIA長官を務めたスタンスフィールド・ターナー[14]は「もしロシアが日本に核ミサイルを撃ち込んでも、アメリカがロシアに対して核攻撃をかけるはずがない」と断言し、カール・フォード元国務次官補は「自主的な核抑止力を持たない日本は、もし有事の際、米軍と共に行動していてもニュークリア・ブラックメール(核による脅迫)をかけられた途端、降伏または大幅な譲歩の末停戦に応じなければならない」と言う。
- その他、以下の米国の要人が、米国の核の傘を否定する発言をしている。
- サミュエル・P・ハンティントン(ハーバード大学比較政治学教授)
- マーク・カーク(連邦下院軍事委メンバー)
- ケネス・ウォルツ(国際政治学者、カリフォルニア大学バークレー校名誉教授)
- エニ・ファレオマバエガ(下院外交委・アジア太平洋小委員会委員)
中国脅威論 [編集]
詳細は「中国脅威論」を参照
- 核武装論のほとんどは中国脅威論と並行して主張される。また中国脅威論の多くは米国の一極支配の終焉と同時に語られることが多い。
- 米国は20世紀初頭から圧倒的な経済力と軍事力を背景に世界秩序を制御してきたが、経済においてはEUの通貨ユーロの台頭により、ドルの世界の機軸通貨としての地位低下が確実視され、軍事においては中国の経済成長に伴う軍事力の拡大によって米軍の影響力の低下が予想されている。
- 中国の軍事支出の伸びは19年連続2桁パーセント増で、2007年の時点で5兆円超と公表されているが、米国防総省は実態はその3倍になると指摘している。また中国は2015年までには晋型戦略原潜を5隻就役させ、それと並行して固体燃料移動式ICBMDF-31を配備する予定である。それらの核ミサイルは発見困難で先制攻撃で破壊できない。ゆえにMDが有効性を持ち得ないという前提において現在米が保っている核戦力による圧倒性は低下するだろう。
- かつて米国はソ連との冷戦期において同盟国を保護し、やがてソ連を崩壊に追い込んだが、中国相手に同様の構図は成り立たないと考えられる。ソ連は経済的には貧弱であったが、中国の経済力はやがて米国を上回るという予測もある[15]。そして冷戦期の米ソの経済関係は極めて希薄であったが、米中の経済関係は極めて緊密であり、米国の国別の貿易額では、中国は2004年に日本を抜いて3位になっている[16]。また米国債の保有額では2007年で日本は1兆ドル弱、中国が約7,000億ドルと推定される。
- 今後も中国の経済発展により、米中の貿易額は増加していくのは確実である。それに対して日本は人口減少により対米貿易額は減少すると考えられる。即ち米国経済にとって中国の価値が日本の価値を上回れば、米国が中国の脅威から日本を守ろうとする動機が希薄になる。
- 実際に中国が経済的、軍事的に超大国となった場合、米国は台湾や日本を守るため中国と戦争は出来ないという指摘は米国の学者からもなされており、ハーバード大学のスティーヴン・ウォルトやシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー、そしてサミュエル・P・ハンティントンなどは、米国が東アジアでの覇権を放棄して中国との力関係を保つ「オフ・ショアー・バランサー戦略」という選択肢を主張している[17]。
- リチャード・アーミテージの講演では米国一極超大国時代は2020年以降に不確実になる可能性があるという認識が示された[2]。
- その他、予測される核武装によるメリット
- 国際的影響力の大幅な増加が期待される。
- 米国の被保護国からの脱却を目指せる。核武装を行っている・または進めている周辺国(中、露、北朝鮮)への抑止力を米国に依存(核の傘)する現状が、日本の自主外交力を低下させているという考えが背景にある。
勢力均衡論 [編集]
日本が核武装することで、周辺諸国との勢力均衡維持が期待できる(勢力の均衡が平和をもたらす)という考えがあり、日本に核武装を提言するフランスの人類学者エマニュエル・トッドがここに含まれる[18]。
著書『帝国以後』でアメリカ「帝国」への一極集中の時代(パクス・アメリカーナ)が21世紀では維持できないとしたエマニュエル・トッドは、2006年10月、朝日新聞での若宮啓文とのインタビューにおいて、「インドとパキスタンは双方が核を持った時に和平のテーブルについた。中東が不安定なのはイスラエルだけに核があるからで、東アジアも中国だけでは安定しない。日本も持てばいい。」と述べ、日本の核武装を提言。さらに「核を持てば軍事同盟から解放され、戦争に巻き込まれる恐れはなくなる」と指摘する。ほか、被爆国である日本が持つ核への国民感情については、「国民感情はわかるが、世界の現実も直視すべき」とした。日本が核兵器を持った場合に派生する中国とアメリカと日本との三者関係については、「日本が紛争に巻き込まれないため、また米国の攻撃性から逃れるために核を持つのなら、中国の対応はいささか異なってくる」との見通しを出したうえで、「核攻撃を受けた国が核を保有すれば、核についての本格論議が始まり、大きな転機となる」と指摘した。これは日本が核兵器保有することで、中国を牽制し、かつ米国への隷属状況からも離脱し、米中日の三か国の勢力均衡を示唆する説である。
なお、トッドは、フランスの核武装の理由について、「何度も侵略されてきたことが最大の理由」とし[20]、「地政学的に危うい立場を一気に解決するのが核だった」と述べ、核兵器保有による周辺諸国との勢力均衡が、安全保障としては有効との見方を提出している。
核廃絶への疑念 [編集]
- 核保有国が果たして核を廃棄するのか、という疑念を日本の核武装の根拠とする者もいる。核保有国はコスト削減のために核軍縮に積極的だが、完全に廃絶すると表明した国はまだない。米国、ロシア、中国は核廃絶しないことを表明している。
核安全保障論の種類 [編集]
単独核保有論 [編集]
日本が独自に核兵器を開発し、運用すべきであるとする考えである。一般に「核武装論」とはこの単独核保有論を指す事が多い。
- 利点
- 外交において発言力の大幅な向上。特に射程内の国に対して。
- 発射に関して、米国などの干渉を受けないため、信頼性の高い核抑止力を持つことが出来る。
- 安全保障において日本の自立性が飛躍的に高まる。
- NPT改革などと違い時間のかかる多国間交渉が不要である。
- 共同核の場合は先制攻撃ができないが、単独核保有は先制核攻撃が可能であるため、他国を核抑止可能(ただし、核恫喝による日本国家意思の強要は明白に違憲である)。
- 問題点
- 非核三原則をはじめとするこれまでの政策の大幅転換が必要であり、日本が加盟している核拡散防止条約を反故にせざるをえなくなる。
- 外交的には、これ以上核保有国を増やさないとする核拡散防止条約(NPT)加盟国約190カ国、および核武装した仮想日本の核兵器射程圏内に入る国々の反発が予想される。大量破壊兵器不拡散を国家基本安全保障政策に掲げる米国にとって、NPT体制こそがパクス・アメリカーナの安定維持装置であり、それに反した政策をとる国(かつてのイラクフセイン政権・イラン・北朝鮮など)に対して制裁を行う急先鋒となっているため、同意を得るのは非常に困難。
- 米国の経済・金融制裁に対して日本は脆弱である。また、米中露による海洋封鎖・臨検や、核施設空爆の危険を乗り越える方策の案出が必要。
米国の核兵器配備要請論 [編集]
欧州では欧州を射程に収めるソ連のSS20配備に対して米国がパーシングII配備で対抗し、結局中距離核戦力全廃条約によってSS20とパーシングIIが両方撤去された歴史があるので、これと同じように米国に中距離核ミサイルの配備を求めて北朝鮮や中国に対抗しようとするもの。
- 利点
- 欧州で一度相互核ミサイル撤廃に成功した実績がある(中距離核戦力全廃条約)。
- 欧米世論に対して、説明が容易である。
- 問題点
- 抑止力としてみるならば、日本に配備されようと発射の権限がアメリカにある以上、究極的には「核の傘」の信頼性の問題でしかない。
- 冷戦期のNATO正面のような差し迫った軍事的緊張が中ロとの間に無い現状の日本において、日本向け(あるいは日本が標的と類推される)中距離弾道弾を撤去させなければならない喫緊の理由が無い。当時の欧州では軍事的緊張の緩和、軍縮、核廃絶を求めたデモがしばしば行われ、パーシングIIの配備はそれを受けての政府の公式な要請であったが、現在の日本において国民はそのような危機感を仮想敵に対して抱いていない。
- 基本的に、「相互ミサイル廃棄」に持ち込む方便であり、予算を投じて配備を推進しても相互撤廃交渉が成立すれば、配備したばかりのミサイルを廃棄する必要があり、費用の妥当性、効果、米国とのコストの分担などで解決すべき問題がある。
- 北朝鮮の瀬戸際外交における核恫喝には効力を発揮しない。
- 日本がアメリカの核の発射点として逆に攻撃対象となる。日本政府・国民をアメリカの人身御供にするものでしかない。現実に対テロ戦争当時、在日米軍基地は最重要警備対象の一つとなった。
日米共同核保有論 [編集]
詳細は「ニュークリア・シェアリング」を参照
田母神俊雄は核兵器シェアリング(Nuclear Sharing)の導入を提言している。アメリカがNATO加盟国(ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー)に提供する核武装オプションである。平時はアメリカ軍が核兵器を保持・管理しつつ相手国と核兵器の使用と管理の訓練を行なう。戦時になったとき、アメリカ軍が相手国に核兵器を提供し、相手国は核武装する。
- 利点
- 開戦後に核兵器が提供されるという点で開戦前まではNPT条約に抵触しない。
- NPT改革のような多国間交渉が必要なく、究極的にはアメリカの同意を取り付ければよい。
- 問題点
- 非核三原則を放棄するという大幅な政策の転換が必要。
- NATOの核シェアリングはあくまで戦術核兵器の運用であり、その目的は、戦時には不足こそすれ余ることなどない戦術核兵器投射手段の確保にある。日本が考える核抑止力の構築とは目的が違うし、アメリカが戦略核兵器の供与を意図したことはない。
- そのNATOの核シェアリングにおいても、核の使用はNATOの総意とされるもので、最終的な決断は核兵器国にある。
NPT改革論 [編集]
国連改革で常任理事国を増やそうという提案がなされているが、NPTを脱退して核武装するのではなく、NPT内に留まりながら、他の非核諸国と連携してNPTのルールを変革してNPT公認の核保有に至ろうとする考え方。
- 利点
- NPTを崩壊させる場合よりは、米国の賛同を得られ易く、また米中露に核施設爆撃や経済封鎖など制裁の口実を与えにくい。
- 問題点
- 現NPT体制に比べて核保有国が増えてしまうので、米国など核兵器国をはじめとする核拡散に反対する各国の賛同を取り付けることが極めて困難。
- 非核三原則を放棄するという大幅な政策の転換が必要。
- 国連改革が進まない様に、複雑な多国間交渉が必要で時間がかかる。
その他(核抑止以外の核安全保障論) [編集]
北朝鮮に核抑止の効果は無い。すでに経済的に破綻し、自助努力による国家再建が不可能な北朝鮮において、核は短期的な要求を飲ませるための安易な手段になっている。アメリカ政府が封鎖した20億円の資金の解除を要求するほどに困窮している状況で、常識的に考えて数兆円の予算を必要とする対米核戦力の構築など不可能であり、その核戦力もない北朝鮮が「核を保有する」アメリカを始め、中国、ロシアの意向を無視している以上、日本が核武装したところで拉致問題や核開発において日本の要求をどのように飲ませ、効果を挙げるのかについて、確たる分析は無い。
米ソ核抑止という有名すぎる例があるために「核には核抑止」が半ば常識になっているが、「実際には核抑止は常に成立するわけではない。(核ボタンを押せば相互に損する場合・失う物がある者にしか抑止が効かない)」。
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