2012年3月12日月曜日

核廃棄物と処分


核廃棄物と処分

#42 核廃棄物の山

原子力は大量の核廃棄物を生み出す。
約12,500 トンの高レベル放射性廃棄物である使用済み燃料が、これまでにドイツの原
子力発電所で発生した。これに毎年約500 トンが加算される。さらに数千㎥の低・中レベル
の放射性廃棄物も加わる。ここには本来、大気中と水中に放出されたすべての量も加える
べきだろう。そして、再処理工場からの廃棄物。ウラン採掘時の廃棄物。ウラン濃縮工場か
らの务化ウラン。最後に原子力発電所自体――なぜなら、これもまたいつかは「処分」しなけ
ればならないからだ。

#43 処分という嘘

これまで核廃棄物はただの1g として無害に処分されていない。
「食品の鮮度を長持ちさせる用途に」核廃棄物は利用できるようになる――このような約束
で専門家たちは、1950 年代半ばに核廃棄物処分への批判的な質問をかわした。そして核
廃棄物の処分問題を気にかけることなく、次々と原発は建てられていった。数百万トンの放
射性廃棄物は、今日に至るまで1g として無害に処分されていない。
法律上では、核廃棄物処分場が確保されない限り、ドイツではそもそも原子力発電所を
稼働してはいけないことになっている。しかし「廃棄物処理の準備がある証明」として、地下
水が浸入し、崩壊の危険にさらされた(低レベル)放射性廃棄物処分場アッセII、ゴアレー
ベン岩塩採掘跡での処分場調査作業、ヴァッカースドルフ再処理工場の建設、他国への核
廃棄物の輸送、そして使用済み燃料をキャスクで地上の格納庫に保管する「中間貯蔵施
設」などが存在するだけである。

#44 技術面の未解決問題

高レベル放射性廃棄物の最終処分は、技術面ですら解決されていない。
核分裂の発見から70 年経過した今でも、人間と環境に危害を与えないようにするために、
「どのように」高レベル放射性廃棄物を処分するべきなのかさえ明らかでない――「どこに」
などとは問いかけるべくもなく。
原子力ロビーの思惑とは違い、該当する最終処分場に関する数多くの安全性についての
疑問は、相変わらず全く明らかにされていない。それゆえアメリカでも、人間と環境に対す
る重大な脅威のために最近では、ユッカマウンテンにおける最終処分場プロジェクトを疑問
視している。スウェーデンの花崗岩層における最終処分場構想も同じように中止直前だ
(#61 を参照)。そしてゴアレーベンの岩塩採掘跡の空洞に迫っているのは――大きな範囲
の地下水による浸水である。放射性廃棄物処分場アッセII の浸水の経験によって、最終処
分場としてのゴアレーベンの「適性」について、さらに議論すること自体、そもそも不要となっ
た。

#45 百万年

核廃棄物とは百万年にわたる放射線危害である。
原子力発電所からの放射性廃棄物の放射線がある程度弱まるまで、およそ百万年かか
る。それまで核廃棄物は人間と生物圏から隔離されてなければならない。
もし仮に3 万年前のネアンデルタール人が原子力発電所を使い、その核廃棄物をどこか
に埋めたとしたら、その核廃棄物は今でも人間を死に至らしめる量の放射線を出し続けて
いる――そして私たちは、絶対に掘り起こしてはならない場所を知るすべを持っていなけれ
ばならない。

#46 放射性廃棄物処分場アッセII

放射性廃棄物の試験処分場アッセは、20 年と経たないうちに水没しようとしている。
12.6 万個の(低レベル)放射性廃棄物のドラム缶を原子力産業と原子力研究者は1967
~78 年の間にほぼ無料で「試験的な(低レベル)放射性廃棄物の最終処分場」であるアッ
セ II に廃棄した。この岩塩採掘跡地は数千年は安全であると専門家は断言し、浸水の可
能性は否定された。
その20 年後、今では毎日1.2 万リットルもの水がこの坑道に流れ込んでいる。これまで
にいくつかのドラム缶は密閉性が無くなり、この岩塩採掘跡地は崩壊の危険にさらされてい
る。
そして今、大規模な地下水汚染を避けるために、これまでに投入した全ての廃棄物を再
び取り出す事態となった。このための費用は――約40 億ユーロまでの範囲だといわれてい
るが――それを廃棄した事業者ではなく、納税者が負担することとなる。この処理のためだ
けにCDU 党(キリスト教民主同盟:保守)とSPD 党(社会民主党:中道左派)の連立政権
は、原子力法を改正した。
アッセII は公的にはゴアレーベンの岩塩採掘跡の空洞に計画されている大型の(高レベ
ル)放射性廃棄物の最終処分場のための「パイロット・プロジェクト」とされている。

#47 最終処分場はない

世界を探してもこれまでに、安全な高レベル放射性廃棄物の最終処分場は1 つと存在し
ない。
核廃棄物の最終処分場は、非常に長い年月の間、地質が安定した場所に作られなけれ
ばならない。この処分場の周辺地質は、処分された核廃棄物やその容器と科学的な反応
を生ずるものであってはならない。さらにこの場所は生物圏や天然資源の埋蔵のポテンシ
ャルがある場所、あるいは人間の影響から隔離しなければならない。そしてこの地域から
の水は、海に流れてはならない。
世界中でこれまで誰1 人としてこのような場所を発見していない。そもそもこうした場所が
あるのかどうかすら全くの疑問である。

#48 聖フロリアヌスの原理(訳注:問題を他所に押し付ける行動様式、政治的手法)

誰1 人として核廃棄物を歓迎しない。
2005 年以来、使用済み燃料は原子力発電所の敶地のキャスク倉庫に置かれている。こ
のことは北の原発ブルンスビュッテルから南の原発イザールに至るまで、原子力推進派の
多くを常に困難な説明責任の窮地に陥れている。核廃棄物は絶対に家の近所に貯蔵され
てはならないと推進派が要求するのだ。(自治体にお金を運ぶ)原子炉は絶対に運転を続
けろと言うのにもかかわらず・・・
キリスト教社会同盟(CSU 党、バイエルン州の保守大政党)も、電気なら絶対に原子力だ
と望む――しかし核廃棄物の処理は、決してバイエルン州の近くには望まない。最終処分場
の候補地に関する議論について、彼らは「我々はドイツ全土に火をつけることになる」と警
告している。

#49 キャスクの嘘

核廃棄物の容器は十分に検査されていない。
(使用済み燃料輸送用の)キャスクは安全だ、といわれている。しかしすべてのモデルが
実際には検査を受けていない。多くの場合、縮小された試験用モデルが落下試験され、燃
焼試験される。もしくはただのシミュレーション試験があるだけだ。
しかし時には、そうした試験の結果ですら改ざんする――2008 年春の新作キャスクのシリ
ーズのように。この製造者は、よりうまく試験の測定値と理論値が合致するように「任意で
選択することのできるパラメーター」を採用した。これには連邦材料研究庁も度を超えてい
ると判断。材料研究庁は差し当たり許可を拒み、それゆえ2009 年はキャスク輸送を行うこ
とができなかった。

#50 再処理工場の嘘(その1)

いわゆる使用済み燃料からの再処理は、核廃棄物からより多くの核廃棄物を作り出す。
再処理工場――これはリサイクルステーションのようにも聞こえる。しかし実際は、使用済
み燃料のうちの約1%だけが新しい燃料に取り入れられる――それはプルトニウムだ。すべ
てを考慮すると再処理後には、処理前よりも多くの核廃棄物が発生する。それゆえフランス
では再処理工場のことを率直に「usine plutonium」、プルトニウム工場と呼んでいる。
さらに再処理工場は、世界最大規模の放射性物質の拡散装置でもある。(再処理工場か
らのプルトニウムを混ぜた)いわゆるMOX 燃料は、製造、輸送、そして原発での使用時に
おいて、天然ウランからの燃料よりはるかに危険である。同時に「プルトニウム工場」は、原
子爆弾のための原料を供給している。

#51 海岸線の核廃棄物

再処理工場は、放射性物質の拡散装置である。
ラ・アーグ(フランス)とセラフィールド (イギリス)の再処理工場は、大量の放射性物質を
大気中やイギリス海峡、アイリッシュ海に放出している。施設の周辺では若者の白血病の
発症率が国の平均よりも最大で10 倍も多い。
グリーンピースは数年前に、セラフィールド再処理工場の排水管付近でいくつかの泥のサ
ンプルを採取した。帰国の際、それらはすべてドイツ当局によって即座に没収された――核
廃棄物の持ち込みという理由で。

#52 再処理工場の嘘(その2)

フランスとイギリスの再処理工場には、いまだにドイツからの膨大な量の核廃棄物が保管
されている。
原子力発電の事業者は、過去数十年にわたって数千トンもの使用済み燃料をラ・アーグ
とセラフィールドの再処理工場に運び込んだ。現在までにその核廃棄物のごく一部が、キャ
スク輸送でドイツに戻ってきている。残りの大部分は、今も外国であるかの地に山積みだ。

#53 モアスレーベンの核廃棄物の山

旧西ドイツの原子力コンツェルンは、核廃棄物を旧東ドイツのモアスレーベンの処分場に
平然と廃棄した。
80 年代後半に西ドイツの原子力発電所では核廃棄物のドラム缶が山積みになっていた。
幸運なことにドイツ統一がやって来た――そして環境大臣アンゲラ・メルケルも東から。彼女
は担当局のリーダーであるヴァルター・ホーレフェルダーとゲラルト・ヘネンヘーファーと共
同で、原子力発電企業に対して核廃棄物を格安で旧東ドイツのモアスレーベンの最終処分
施設に廃棄することを許可した。現在では、ここはすでに崩壊の危険があり、処分場の改
修工事には20 億ユーロを超える納税者の負担が必要だという。
時は過ぎ、メルケルは首相になり、ホーレフェルダーは電力コンツェルンE.ON と原子力
ロビー団体「Deutsches Atomforum」の代表になった。ヘネンへーファーは、2009 年の
終わりから再び、連邦原子力監督機関の長に任命されている。

#54 コンラート坑道の核廃棄物の山

ザルツギッター市の真下に865kg のプルトニウムが処分される予定。
ドイツ連邦放射線防護局は、865kg もの強毒性のプルトニウムを含む30 万㎥の低・中レ
ベル放射性廃棄物を旧鉱山のコンラート坑道跡に処分するつもりである――ザルツギッター
市街地の真下に。コンラート坑道を最終処分場として利用する決定は、完全に政治的な理
由による。はっきりとした基準による他の数多くの候補地との比較は、これまで1 度も行わ
れていない。「コンラート坑道」が、原子力産業の視点から魅力的だったのは、とりわけ核廃
棄物の大きな容器もそのまま通すことのできる際立った大きさの縦抗であった。
コンラート坑道の長期的な安全性予測のほとんどの根拠は、理論的な想定に基づいてい
る。古い手法によるモデル計算は、今日の学問の水準とかけ離れている。

#55 中間貯蔵施設

高レベル放射性廃棄物は、尐し設備を追加したジャガイモ貯蔵庫並みの倉庫に置かれて
いる。
キャスクの中の核廃棄物は強く放射線を放出しているため、容器の外側はかなり熱くなる。
中間貯蔵施設のゴアレーベン、アーハウス、ルブミン、そして原子力発電所敶地の中間貯
蔵施設は、それゆえ大きな通気口があり、外気がキャスクを冷やすことができるようにして
いる。もしキャスクの1 つでも密閉性が保証されない場合、放射線物質は、妨げられること
なく外に拡散する。

#56 使用済み燃料のキャスク

キャスクは放射線を遮断しない。
2008 年秋の使用済み燃料輸送の際、環境保護団体は、近くを通過する核廃棄物のキャ
スク積載列車から警報が鳴るほどの放射線値を検出した。しかし当局は容器の積み替え
の際、放射線測定という管理を放棄した――なぜなら自身で測定器を1 つも用意できなかっ
たからだ。中間貯蔵施設の運営組織GNS は「従業員を不必要に放射線にさらしたくなかっ
た」ため、測定器を用意しなかった。

#57 短時間の核廃棄物処理

核廃棄物が入ったキャスクは、公式には40 年間の耐久性があるという。
原子力発電所は法的には、害の無い核廃棄物の処理が保証されてはじめて、稼動する
ことが許可される。しかし核廃棄物は100 万年にわたって放射線を出し続ける。環境から
放射線を遮断するキャスクは、およそ40 年間耐久性があると想定されている。公式にもそ
れでよしなのだ。

#58 専門家の口封じ

ゴアレーベンを最終処分場にするためにドイツ政府は、地質学者たちの口を封じた。
かつて国を代表する最終処分場の専門家であったヘルムート・レーテマイヤー教授は
1983 年、数回にわたるボーリング調査で、氷期時代に生じた亀裂が走るゴアレーベンの岩
塩採掘跡の岩盤は「生物圏への汚染を永続して隔離する」ことはできない状態だという結
論に辿り着いた。彼と彼の同僚はそれゆえ、他の候補地のさらなる調査を推奨した。キリス
ト教民主同盟(CDU 党、保守大政党)と自由民主党(FDP 党)の連立政権政府はそれに異
議を唱え、圧力によって専門家鑑定を消し去った。今日に至るまでCDU 党とFDP 党、原
発ロビーは、ゴアレーベンの岩塩採掘跡地は最終処分場に適していると主張している。

#59 ゴアレーベンの浸水

ゴアレーベンの岩塩採掘跡地にも地下水がでる。
かつての「最終処分場の試験地」アッセII の放射性廃棄物のドラム缶だけに水が押し寄
せているのではない。ゴアレーベンの岩塩採掘跡地も乾いていないのだ。ここでの「坑道調
査」の工事の際には、何度も地下水と水酸化ナトリウム溶液の浸水が起きており、連邦地
質学・天然資源研究所は、そこに最大100 万㎥の水酸化ナトリウム溶液がある場所を特
定している。
また岩塩層の上にもそれを保護する粘土層がなく――地上300m の深さにゴアレーベン
溝という亀裂が走り――この岩塩層は直接地下水とも通ずる。
アッセII と違いゴアレーベンの地下には、幸運なことにまだ核廃棄物は存在しない――住
民たちの根強い反対運動によって。

#60 核廃棄物は最終処分場を破壊する

放射線は岩塩を脆くする。
放射線は岩塩を脆くする。このことをグロニンゲン大学のヘンリー・デン・ハルトク教授は
証明している。ゴアレーベンで計画されているような岩塩の層の中に核廃棄物の最終処分
場を建設した際の結末は、壊滅的でありうる。それに対して、該当する監督官庁はこれまで
いかなる結論も出していない。
岩塩層はもう1 つの理由からも最終処分場として不適正との議論がある――可塑性のあ
る岩塩層はいずれ貯蔵室を圧迫し、中の容器は破裂するとの指摘だ。圧力によって常に層
自体が上昇する。そして極度に水溶性でもある。加えてゴアレーベンの岩塩の中にも存在
するカーナライト(光ろ石)は早くも300℃で溶けはじめる――最終処分場では十分に到達す
る温度である。

#61 花崗岩層の亀裂

核廃棄物の処分には、花崗岩層でさえ動きすぎる。
これまで世界中で最も先駆的と見なされてきたスウェーデンの最終処分場のコンセプトで
さえ、言葉通り「脆い」ものだと証明された。160 万年前から安定していると言われてきた原
成岩においても、地質学者は地震の跡を検出した。過去1 万年間にここでは58 回の地震
があり、うち最高がマグニチュード8 に達している。幸運なことに、そのときにはまだ核廃棄
物は投棄されていなかった。

#62 放射線の料理鍋

原子力発電所から鍋ができる。
「僕は昔、原子力発電所だったんだ」――こんな台詞がいつの日か鍋やフライパンを飾る
のかもしれない。核施設の廃炉コストを抑えるため、ドイツ社会民主党と緑の党の連立政権
は放射線防護政令を緩和した。放射線を帯びた原子炉の解体瓦礫の大部分は、今では家
庭ゴミと同様に処分したり、リサイクルしてもよいことになった。イタダキマス!

#63 ロシアに押し付ける核廃棄物

グローナウ市のウラン濃縮プラントは発生する核廃棄物をロシアに押し付けている。
数千トンにもおよぶ务化ウランをグローナウ市にあるUrenco 社のウラン濃縮プラントは
ロシアで廃棄した。表向きには「核燃料」と称された放射性廃棄物は、ウラルの「立入り禁
止地区」に運ばれ、錆付いた核廃棄物のドラム缶は露天に放置されている。
ロシアの核燃料を取り扱うTenex 社は、表向きには燃料とされる廃棄物の仕入れに費用
を一切支払う必要がなかった。多大な金額をUrenco 社が厄介払いのために支払ってい
たのだ。

#64 幻想曲風に――月光ソナタ

月は遠く離れすぎている。
最初は核廃棄物は何の問題もないと言われた。なぜなら科学者たちは核廃棄物処分に
ついての素晴らしいアイディアを次から次へと生み出したからだ。――地面に染みこませる、
「核の池」に沈める、地下水に流す、川に流す、海に沈める、砂漠に放置する、穴を掘って
埋める、古い防空壕に保管、ステンレス容器に密閉、北極の氷の中に閉じ込める、宇宙や
月に打ち上げる、などなど。
最後のアイデアは月が遠すぎたことから失敗に終わった。他のいつくかのアイデアや新し
いアイディアは、今も実施されている。

#65 核の錬金術

核変換も核廃棄物問題を解決しない。
核廃棄物処理の素晴らしい方法として多くの人が賛美しているのが核変換である。中性
子を利用して長寿命核種を短寿命の核種に変換したり、ほとんど放射性を持たない物質に
変換させることができるという。この変換の前提条件は、高レベル放射性物質が混ざったカ
クテルを高精度で入念に個々の構成物質に分別することである。さらに、その上でそれぞ
れの物質を、非常に特殊で多大なエネルギーを浪費するそれぞれの処理用にそれぞれ専
用に製造された原子炉内で行う必要がある。結論を言えば、極度に手間がかかり、危険で
コストが高く、技術的な実現性にも疑問符がつく。その上、核廃棄物がそれでもなお残る。
ボーナス ♯108 冷戦
ゴアレーベンはニーダーザクセン州の旧東ドイツに対する復讐であった――漏水するモア
スレーベン最終処分場への。
1970 年代に最終処分場の候補地選択を依頼されていた地質学者ゲルト・リュッティク教
授は、定年退職後に、なぜニーダーザクセン州の当時の大統領アルブレヒト(CDU 党)が、
専門的知見からはただの「第三ランクの候補地」だったにもかかわらず、ゴアレーベンの岩
塩採掘跡地を最終処分場に選出したかのを報告している――ニーダーザクセン州を汚染
する恐れのあった東西ドイツの国境近くの、旧東独側のモアスレーベン最終処分場への
「東」に対する復讐からだという。アルブレヒトのモットーは、「今こそやつらに見せつけてや
るぞ!」というものだ。

ボーナス ♯109 地下に隠された死体

核廃棄物処分場アッセに、原子力産業は放射線で死亡した労働者の遺体の一部を処分し
た。
「試験最終処分場」としてカムフラージュされた陥没の恐れのある核のゴミ捨て場アッセII
には、原子力産業がすぐにでも投げ出したかったあらゆるものすべてが廃棄された。例え
ば、1975 年11 月19 日に原発グントレミンゲンA における原発事故で死亡した2 人の労
働者の放射線で汚染された体の一部もそこに廃棄した――遺体の一部は、カールスルー
エ原子力研究センターの核廃棄物焼却施設において灰にされ、容器に梱包されて、ここに
運び込まれている。

ボーナス ♯110 見せかけの調査

ゴアレーベン岩塩採掘跡地の「調査」は、最終処分場建設のためのカムフラージュにすぎ
ない。
非公開の会談で連邦政府は、1982 年にゴアレーベン岩塩採掘跡地を、それまで公的に
主張されていたように「調査する」だけではなく、そこに同時に最終処分場を建設することを
取り決めた。そのためゴアレーベンの縦坑と坑道は、調査で必要とするよりもおよそ2 倍に
大きくなり、追加コストはこれまでにおよそ8 億ユーロ必要となった。
このトリックにより政府は、当時すでに最終処分場建設に必要であった原子力関連法案
の手続きをすり抜けた。今の環境大臣レットゲン(CDU 党)も計画されている調査坑道のさ
らなる建設工事のために、この1983 年に活用した古びれた枠組みの運営計画をそのまま
使おうとしている――そうすることによってのみ、今後の住民参加手続きを避けることがで
きるからだ。

ボーナス ♯111 殺しのライセンス

核廃棄物の最終処分場は密閉されていなくても良い、と環境省は決定した。
核廃棄物の最終処分場は、それが生物圏から完全に隔離されない場合であっても、まだ
「安全」だとされている。これは、2009 年に連邦環境相ガブリエル(社会民主党)が公開し
た最終処分場のための安全必要条項の中に記載されている。より正確に言えば、近隣住
民の1,000 人に1 人が放射線の漏洩により癌を発症するか、その他の深刻な健康被害を
受けることをこの条項は許している。放射性物質が地下水を通じて大きな範囲に拡散する
ため、かなり多くの人びとが「近隣住民」と見なされる――これから先100 万年にかけて。
ボーナス ♯112 破裂するガラス固化体
ガラス固化された核のスープは破裂しうる。
高レベルの放射性物質で、液状、強度に自己発熱し、爆発の危険性があるのが、使用済
み燃料の再処理において生じた核廃棄物である。この「核のスープ」を尐なくともいくらか取
り扱いを容易にするためにガラスの中に溶け込ませる――化学的にはとても安定した結合
物だといわれている。
しかし化学者は、このガラス固化体も水との接触の際に、場合によっては破裂し、非常に
危険な物質が洗い出されうることを証明している。最終処分場が永続的に乾燥した状態で
ないなら、危険がある!

ボーナス ♯113 ご都合主義

ゴアレーベン岩塩採掘跡の上にはそれを守る粘土層が存在しないと分かるや、最終処分
場にはそのようなものは必要ないという。
1995 年に連邦地質学・天然資源庁は、41 の北ドイツにある岩塩採掘跡地の核廃棄物最
終処分場としての適性の可能性について調査した。この調査では「岩塩層の被覆バリア機
能」の大きな意味を明確に強調しており、これは下にある岩塩層を水から守るためのもので
ある。ゴアレーベン岩塩採掘跡は、水が通る亀裂が地中に走っており、そもそもこの調査の
対象外だった――そうでなければここはすぐに検討から外れていただろう。
2009 年の新しい最終処分場基準では、岩塩層の上で防護の役割を果たす被覆層につ
いてはもう触れられていない。このようにしてゴアレーベン最終処分場の検討は、今後も可
能であり続ける。

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