2012年3月12日月曜日

安全基準と健康被害


安全基準と健康被害

#12 癌の危険性

原子力発電所は子供だけを病気にするわけではない。
子供が住んでいる距離が原子力発電所に近ければ近いほど、癌になる危険性が高まる。
ドイツでは原子力発電所の5km 圏内に住む5 歳以下の子供は癌になる確率が、ドイツ全
土の平均値より60%高い。なかでも白血病の発症率は倍以上(+120%)になる。白血病
はとりわけ放射線によって引き起こされやすい。

アメリカの調査データでは、核施設周辺の大人も癌になる確率が高いと推測されている。

#13 汚染物質の排出

原子力発電所は大気へ、水中へと放射性物質を排出している。
全ての原子力発電所は排気口と排水管を備えている――トリチウム、炭素、ストロンチウ
ム、ヨウ素、セシウム、プルトニウム、クリプトン、アルゴン、キセノンなどの放射性物質の排
出のためだ。それらは大気中に分散し、水中、地中に留まる。さらに堆積し、濃縮され、生
物に取り込まれ、一部は細胞に組込まれる。そこでそれらの放射性物質は、とりわけ癌を
誘発し、遺伝子を傷つける。
この排気と排水による放射性物質の排出は政府によって公に認められている。通常
1000 兆ベクレルの放射性の希ガスと炭素、50 兆ベクレルのトリチウム、300 億ベクレルの
放射性微粒子、約100 億ベクレルの放射性ヨウ素131 の排出が許可されている。もちろ
ん1 年間に、1 つの原子力発電所あたりの話である。

#14 欠陥ある安全基準

放射線防護の安全基準は放射線による被害を甘んじて受け入れている。
今日においてもなお核施設で容認される放射性物質の排出量は、架空の「標準値人間」
に基づいている。彼はいつまでも若く、健康で男性であるのが特徴だ。彼より歳を取ってい
る高齢者、女性、子供、幼児、胎児は、ときには明らかに放射線に敏感に反応することなど
考慮されていない。
国内外の放射線防護の安全基準は、はじめから放射線による住民への健康被害を容認
している。「原子力エネルギー拡大戦略のための理性的な余地」を確保するために。

#15 低線量の放射線

低線量の放射線被爆は、公的な想定よりも危険だ。
非常に低いレベルの低線量被爆であっても、健康被害は発生する。これは様々な国の、
様々な核施設の従業員に対する一連の調査結果がそれを示している。
これらの研究は、今なお広く信じられている低線量の被爆はごく僅かの影響、全くの無害、
あるいはそれどころかポジティブな効果すらあるという思い込みを覆している。保守的であ
ると評価されるアメリカの「National Academy of Science」でさえも近年では、低線量
被爆が有害であることを認めている。原子力発電所周辺に居住する子供の癌の発生率が
高いこともこれで説明できる。
#16 トリチウム
原子力発電所からの放射性廃棄物は、DNA にまで組み込まれる。
核施設は大量の放射性水素(トリチウム)を大気や水中に放出する。人間、動植物は呼
吸と食料、栄養を通してそれを摂取する。身体はトリチウムとトリチウムを含む水を通常の
水素や水と同様に、すべての内臓器官に取り入れ、遺伝子にまで組み入れる。そこで放た
れる放射線は、病や遺伝子障害を引き起こす可能性がある。

#17 河川の高温化

原子力発電所からの温排水は魚から酸素を奪う。
原子力発電所はエネルギーを浪費している――原発はとりわけ(発電以上に)33℃までの
温排水によって、まずは河川を温める。これは魚に2 重のダメージを与える。
まず1 つ目に、温かい河川の水は、冷たい水に比べて酸素の含有量が尐ない。2 つ目に、
温かい水ではより多くの植物や小動物、プランクトンが死滅し、この有機物の腐敗の過程で
酸素をさらに消費する。そうして魚のための酸素が不足する。


#18 放射能の汚れ仕事

原子力発電所では何千人もの非正規労働者が汚れ仕事を処理している――多くの場合、
放射線防護の安全措置が十分でないまま。
彼らは派遣会社に登録され「火急」の際に駆り出される――何千人もの非正規労働者は原
子力発電所の最も放射線が強い区域で、清掃や汚染除去、修繕作業で給与を得ている。
ドイツ連邦環境省の1999 年の統計によると、彼ら非正規の労働者は、正規の従業員より
も数倍高い放射線被曝を受けている。フランスでは彼らを「放射能の餌」と呼んでいる。
これら非正規の労働者たちは、破れていたり、埃が立つ放射性廃棄物入りの袋を担いだ
り、放射線を放つコンテナの横でコーヒー休憩を取らされたり、完全防護服を着用しないで
原子炉の中心付近での作業をさせらりたりしたことがあると報告している。中にはあらかじ
め線量計を外して作業している者もいる。なぜなら最大被曝線量に達したら、そこでの職が
終わってしまうからだ。結局のところ、誰も職を失いたくはない。

#19 自己防衛

原子力発電所を運営する電力コンツェルンの上層部のエリートは、私生活において自身は
原発から大きく離されたところで生活している。
EnBW、E.ON、RWE、そしてVattenfall の役員たちは、職務上では原子力推進のため
に激しい戦いを続けている。ただし、彼らは私生活ではできるだけ距離を取る――ハンス=
ペーター・フィリス、ユルゲン・グロースマン、トゥオモ・ハタカらは自身の住居を自社の原子
力発電所から遠く離れたところに選んでいる。

ボーナス #102 チェルノブイリ

チェルノブイリの原子炉事故は数え切れないほど多くの人びとの生活を破壊した。
チェルノブイリ原子力発電所(ウクライナ)での破局的な大災害の後、ソビエト連邦は約
80 万人の「リクビダートル」を災害警防と処理作業のために派遣した。そのうちの90%以
上が現在では傷病者である。原子炉事故から20 年経過した現在までに、「リクビダートル」
として派遣された父親が傷病で死亡したため、1 万7 千のウクライナの遺族は国からの保
護を受領している。
1990 年から2000 年の間に、白ロシアにおける癌発症率は40%上昇し、WHO はホメリ
地方だけでも5 万人の子供たちが生涯の間に甲状腺癌を患うであろうと予想している。流
産、早産、死産が事故の後、劇的に増加している。原子炉付近に住んでいた35 万人の住
民は、永久に自身の故郷から引き離された。
 1,000km 離れたバイエルン州内でさえ、放射線障害を原因とした3 千件におよぶ奇形出
産が発生してる。チェルノブイリ後、多くのヨーロッパの国々で幼児死亡率がおよそ5 千人
分ほど増加している。
遺伝子の損害などによる次世代への負担は、事故の数多くの他の影響と同じようにまっ
たく調査しきれていない。確実に分かっていることは、1986 年の大事故は、まだまだ終わっ
ていないということだけだ。



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