2012年3月13日火曜日

権力と利権


 権力と利権 

#72 補助金

原子力開発部門は数十億ユーロ規模の補助金を得ている。
原子力技術の研究と開発に対しては、ほとんどすべて国が支払っている。さらに国は最
初の原子力発電所の建設にも税金で力強く支援をし――そして原発の解体作業にも引き続
いて国費が投入されている。
それに加えて減税措置や数多くの助成金、核廃棄物の処理費用、国庫の優遇的な利用、
輸出の際の担保契約がある。1950~2008 年までに、直接的、あるいは間接的に国が支
払った補助金は1,650 億ユーロに達し、さらに930 億ユーロはすでに支払う予定がある。
欧州原子力共同体(EURATOM)は、これまでおよそ4,000 億ユーロを原子力産業にばら
撒いてきた。そして今でも毎年2 億ユーロほどの税金が、新しい原子力プロジェクトと原子
力の研究に流れている。

#73 非課税の燃料

ウラン消費は非課税である。
非課税の唯一の燃料として、ウランはこれまでに課税されたことがない――毎年数十億ユ
ーロの原子力コンツェルンへの贈り物だ。さらに核燃料製造の際に生じるCO2 排出に対
しても、原子力コンツェルンはCO2 排出権を購入する義務がない。
#74 非課税の内部留保
原子力コンツェルンは、数十億の収入に対して税金を払う必要がない。
数十年にわたって原子力発電所を運営する企業は、原子力発電所の解体や核廃棄物の
貯蔵のためと称する内部留保に対して、非常に寛大な免税措置を享受している。この内部
留保が生み出す利子ですら免税なのだ。これまでに蓄えてきたおよそ280 億ユーロのそ
のお金を、原子力コンツェルンは他の企業を買収したり、新規事業へ投資する軍資金とし
て活用している。
連邦財務省はこの免税措置によってこれまでに最大82 億ユーロの収入を逃してきた。

#75 ドイツの研究分野の阻害

核関連施設の廃墟のために数十億の研究費を費やしている。
研究炉、実験炉、試験発電所、パイロットプロジェクトとしての発電施設、高速増殖炉、ホ
ットラボ、試験再処理工場――数十億ユーロものコストを50 年代からこれまでにドイツは原
子力研究や原子力技術につぎ込んできた。これらはとうの昔に廃止されており、放射線を
撒き散らすこれら廃墟のために現在も膨大な研究予算をかけ続けている。
連邦研究省はこれまでに30 億ユーロもの税金を解体、浄化、核廃棄物の処理などに投
じてきたが、さらに同額が今後の数年間で必要になるという――これは他の分野の学問や
研究のために不足している私たちにとって大切な財源のはずだ。
#76 脱原発先送りの利益
脱原発の期限延長で利益を得るのは電力コンツェルンのみである。
ドイツのすべての原子力発電所はかなり前に減価償却されている。それによって今では、
とりわけ賠償保険の欠如、燃料税の非課税、さらに内部留保の免税措置もあって、かなり
安価に電気が生み出されている。しかし、私たち消費者は、その恩恵には全く預かっていな
い。
なぜなら電力価格は電力市場で決まり、その取引価格は需要のピーク時の価格に依存
するからだ。原子力発電所はこうしたピーク電力は、出力調整が効かないため全く発電でき
ない。その結果――古い原子力発電所からの電力による利益は、電力コンツェルンのみが
得ている――原発を長く稼働させればさせるほど、さらに多くの利益が。2002~07 年までの
間にEnBW、E.ON、 RWE、Vattenfall という4 大電力コンツェルンはそれぞれの利益を3
倍にした。
電気料金が下がったところはどこにあったか?

#77 電気料金

原子力発電による電力が、電気料金を高騰させている。
電気料金はここ数年高騰している――原子力発電をしているにもかかわらず。その決定的
な原因の1 つは、ライプツィヒ電力取引市場の電力供給量を圧倒的に支配している4 大電
力コンツェルンの独占権力である。2002~08 年にかけてEnBW、E.ON、RWE、
Vattenfall の4 社は、およそ1,000 億ユーロの利益を計上した。同じ期間中に彼らは電
気料金を50%以上値上げしている。
原子力発電所はコンツェルンの市場での独占権力を強固にし、数十億もの利益を確保す
る。それに対して再生可能エネルギーは、すでに今日の時点でも電気料金を緩和する効果
がある。風力発電の恩恵で、消費者は毎年数十億ユーロも節約しているのだ(Merit-
Order 効果)。
もし現在の原子力への過大な助成措置がなくなれば――例えば、原子力発電所に現実的
な賠償保険額をカバーすることを義務付けたり、内部留保の非課税を取り消したり、ウラン
燃料税を導入すれば――たちまち原子力発電からの電力は誰もが購入できないほど高騰
する。スイス・バーゼルのPrognos 研究所は、1992 年に現実的な原発電力の値段をおよ
そ2 ユーロ/kWh と算出している。

#78 市場で生き残れない

新規の原子力発電所は採算が取れない。
市場経済が支配的なここ20 年間においては、原子力発電所はほとんど建設されていな
い――同じ期間中に世界全体の発電所出力は数十万MW増加しているにもかかわらず。
これは、新規の原子力発電所は採算が取れないことを意味している。
この点においては、フィンランドとフランスの両国で建設中の最新の原子炉についても全く
同じだ。フィンランドの原子炉はダンピング価格の入札で、補助金を与えられた上で決まっ
た(とりわけバイエルン州立銀行の好条件の低利子融資=バイエルン州の補助、訳注:シ
ーメンス社はバイエルン州を代表する企業)。建設コストはとうの昔に高騰している。またフ
ランスでは、原子力産業AREVA 社と電力独占企業EdF 社がしっかりと国の手中にあり
――そこでは市場経済原理などほとんど考慮されない。
E.ON 社の経営者も率直に「国の金なくして、原子力なし」と認めている。
#79 コンツェルンの権力
原子力は、エネルギー供給の中央集権構造と巨大電力コンツェルンの権力を強固にする。
ドイツでは、4大電力コンツェルンが電力市場を支配している。電力コンツェルンは電力系
統を独占し、大型発電所を稼動させ、電気料金を決定し、信じられないほど深くエネルギー
政策に食い込んでいる。原子力は電力コンツェルンの影響力を強化する。市民出資、また
は地方自治体の管理による分散型で効率が高く、環境に配慮された発電所は、電力コンツ
ェルンの影響力を弱める。それゆえ、原子力発電所を運営する電力コンツェルンは、そのよ
うな発電所を全力で阻止しようとする。


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